
写真は、ニュージャージーの住宅街でもアイオワでもない。
マンハッタンのマディソン・アベニュー、12月21日午後3時。
シャネルにブルガリ、バーニーズNY…etc.と、
クリスマスの買い物狂想曲に巻き込まれているはずが、
一般車両通行禁止。
NYは、25年ぶりの地下鉄・バスの全面ストライキ
3日目に突入しようとしている。
レジデンスのお掃除おばさんは、
「クイーンズから近所の人の車で2時間かけて来たわ」と
ぼやいているし、
ハーレムからミッドタウンまで1時間かけて徒歩出勤した
という人も。
こーゆー時こそ、ノラの醍醐味を味わうべく、
自室で隠れワインでも楽しんでいればよさそうなものである。
しかし街へ出るノラ編集者。
無理やりタクシーを拾う。
何故かと言えば、美容院に行くため。
渡米してから3ヶ月も放置していた髪を、なんでまた身動き取れない日に、
30ブロックも離れたアップタウンの美容院まで切りに行くのか?
予約したのは先週だが、キャンセルの電話一本ですむことなのに。
答えは一つ、酔狂だからである。
タクシーは急遽メーターを廃止し、★1人10ドルで同じ方向の人を
拾っていく相乗りシステムになっていた。
当然ながら渋滞しまくりで、クラクションが耳をつんざく。
自転車、徒歩、ローラースケートまで登場し、
観光客用のヴェトナムのシクロみたいな乗り物がサラリーマンを乗せている。
「わざわざこんな日に!って、美容院も大サービス?
すくなくとも、ガラガラでゆったりできるだろう・・・」
ところが、キャサリン・ゼタ・ジョーンズ御用達という
アッパーイーストの美容院John Friea Salonは、フツーに混んでいる。
巨大エルメスをドカッと置いたニセ金髪マダムが、
「あら~♪ストなんて知らなかったわ。ウチはここから徒歩5分だし~。
遠くに行くときはいつもリムジンだから。ほほほ」
なんて高笑いしながら、カットしてもらっている。
・・・すみません、高級美容院に公共交通機関を使って来ようなんて庶民は
わたしだけでした・・・。
気を取り直し、まずは更衣室で上だけ、ぺらぺらガウンに着替える。
カラーの担当者、カットの担当者それぞれが、
施術前に要望を聞いたりアドバイスしたりしてくれる。
サービスの飲み物はカプチーノ、コーヒー、アイスティ、ペリエなど。
日本みたいなマッサージ・サービスはない(残念)。
キムというカラー担当者(ブルックリン橋を歩いて3時間かけて出勤)が、
「目の色に対して髪が赤すぎます。ダーク・チョコレートにしなさい」
と言う。
へいへい、ぷりーず、と従う。
「普段はどういうスタイリングをしてますか?ご自分でブローを?」
スティーブンでなくステファンだと名乗るカット担当が聞く。
「えあー」
即答するノラ編集者。
「はっ?スミマセン、おっしゃる意味がわかりかねますが・・・」
「エアーです、エアー。空気が乾燥しているし、ドライヤー使うのが
面倒くさいんで、れっといっとびー」
「・・・・・・」
有名美容院好きの割に、髪型に興味がないノラ編集者。
美容師がショートにしろと言えばするし、伸ばせと言えば伸ばす。
小学生のとき読んだ『山椒太夫』に
「指さえ切らなければ、髪くらい切ってもOK」
というくだりがあったため?
ちなみに、東京でも女優御用達美容院のいくつかに行っていたが、
顔を合わせたのは泉ピン子だけだった・・・。
結局、ちょっと洒落たゲゲゲの奇太郎みたいな髪型が完成。
★約240ドル。(シャンプー、ブロー、カラー、カット)
金持ちおばさんは50ドルもチップを渡していたが、
自分でブローして安くあげてる若い娘もいる。
ノラだし外人だし、10ドルぽっち、受付にあるお年玉袋みたいな
チップ入れに入れて店を出た。
さくっとバーニーズを眺め、乗り合いタクシーで帰途につく。
先客の女性が「さっきブルームバーグ市長、見ちゃった」と言う。
「スト、終わらせるって?俺はこのままでいいっすけど」
運転手が聞く。
「市長、違法でセルフィッシュな振る舞いだとコメントしたそーです」
美容院で聞いたテレビ情報を伝えるノラ編集者。
「終わらせないんじゃないの~?ブルームバーグ、金持ちだし」
あっさり言う女性。
一同、うなずく・・・ごもっとも。
森 鴎外
阿部一族・山椒太夫他8編