9月末、勤務先の移転に伴い、埼玉に来て最初の引っ越しを経験しました。
新居に着いて2日目、オーディオ機器をつないで鳴らそうとしたところ
デノンのSC-T555SAの片側が鳴らなくなっていることに気づいたのです。
ボクなりに内部配線をチェックしてみましたが原因となる箇所の特定には至らず、修理に出すか買い替えるかの選択を迫られることになりました。
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以前に投稿したように、ボク自身初となるトールボーイ/3ウェイスピーカーとしてこのSCはよく頑張ってくれました。
ところが、これも以前の投稿でご紹介したプリメインアンプ、オンキョーA-9150を導入したあたりから、もう少しセンシティヴで解像度の高いスピーカーに替えたほうがいいかもしれん、という気になってきたのです。
A-9150とSCはともに2系統出力に対応しており、そのおかげで全音域にわたって明瞭な音像を実現してくれました。
ところが、A-9150の出力のせいか、低音の出方が大人しすぎて物足りなくなってきたのです。
SCはもともと5.1chサラウンドシステムを構成する一員であり、重低音の再生は同システムのサブウーファーにまかせるよう設計されているのだと思います。なのでそのSCに低音が細いだのブーブー言うのは、もう、まごうことなき無いものねだりでございます
それと、SCの名誉のために付け加えておきたいのですが、ボクが中古で入手したこの個体は(おそらく)2001年製。よくここまでがんばってくれたものです。家庭用5.1chサラウンドが最先端だった頃の、デノンの技術が活かされた力作に改めて感謝です。
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スピーカーの買い替えを検討しはじめ、数か月前から自分なりにリサーチして絞り込んだのが
JBL 4307 でした。
SCとは異なり2系統接続は出来ませんが、JBLでそれが可能なモデルとなると一気に価格が跳ね上がってですね
3ウェイでサイズも許容範囲内、なによりも予算に、ギリギリですがなんとか収まってくれます。
とはいえ、SCががんばってくれているあいだは、まぁ無理して買い替える必要もあるまいて、とのんきに構えていたのですが、そのSCが不調となったことで購入を決意したというわけです。
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JBL 4307の購入を決意して数日後、以前住んでいた街の病院で診察を受けた帰り道、ふたつある家電量販店に立ち寄りました。
最初に訪ねたY電機では取扱店舗でないと販売していないとのことでしたが、その店舗というのが都内と群馬県の中央あたり。ともに片道50キロ以上の遠出です
次に向かったKデンキでは快く取寄せ販売に応じてくれ、送料無料で自宅までの配達まで手配してくれました。
その心意気に打たれ(笑)その場で支払いを済ませました。はい、現ナマ現金一括で
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それが10月の初旬でした。この時点でお店からは納期が未定であり、在庫が確保できた場合として11月中旬に配達日を指定しておきました。
Kデンキさんの奮闘も空しく在庫切れは長引き、11月の入荷は叶いませんでした。
※もちろんKデンキさんからはその連絡もちゃんと入りました
11月の下旬ごろになると、さすがに入荷時期や流通状況が気になりだし、価〇.comや色々なショッピングサイトでヒマを見つけては検索するようになりました。
果たして、あちこちのお店の在庫がつぎつぎと「問合わせ」表記―つまり品切れ―に切り替わっていきます。
その後、明確な納期を表示するお店がついぞ表れなくなりましたので、こりゃホントの、真正の品切れやで、という実感がわきました。
それと、11月初旬ごろに近所の、オーディオ機器を専門に扱うリサイクルショップに立ち寄った際、JBL 4307の中古品が販売されているのを見かけたのですが、その価格がなんと、新品の最安値とほぼ同額市場の需要と供給のバランスの実例をまざまざと見せつけられたのでした。
考えてみれば新型コロナウイルスが世界的に猛威を振るう現在、オーディオ機器はどちらかといえば後回しになっても仕方ないような贅沢品です。まして大量生産・大量流通を志向するモデルでもないJBLのモニタースピーカー、品薄は避けられないのでしょう。
さらに半月が経ち、あぁこれじゃあ年を越しそうだな、とあきらめかけた今月初頭、商品が入荷したとの連絡が届いたのです。
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そしてついにその日が来ました。
外箱を開けると
内箱があり、その中に
ついに対面を果たしました、4307でございます。
グリル(サランネット)を外すと伝統の青、そしてツマミふたつのコントロールパネル。
事前にリサーチしたところ、このグリルがとても外しにくいという声が多くあがっていたのですが、たしかに外しにくいです。プラスティックの薄いヘラのようなものでないかぎり、傷をつけずに外すのは難しいと思います。
スピーカーケーブルをつなぎ、アンプ側のインピーダンス調整を済ませ、取り出しましたるは
○○のひとつ覚えと笑われても仕方ありませんが、ラッシュ(RUSH)の”MOVING PICTURES”。オープニングトラックはおなじみ”Tom Sawyer”。
♪ミョ~ン(イントロのシンセ)
…
……
………
こ、これは難しい
思わずうなってしまいました。
何が難しいって、セッティングの詰め方、自分の聴きたい音を鳴らすように持っていくためのあれこれを、相当積み重ねないとアカンのだろうな、と予想がついてしまったのです。
もちろん、4307の、箱から出したてのまっさらな新品から流れ出る音が、全く聴くに値しない、聴くに堪えない音だという意味ではありません。
難しい、と感じたのは音の出方がとても分厚く、何の工夫も無く聴いていると、高音域の出方が弱く感じられます。一般にいうところのこもった音というヤツです。
こんなにこもったモコモコの音なんかなぁ、と首を傾げながら、試しに4307のコントロールパネルのHFのツマミを右に回してみます。たちまちのうちに高音域がしゃっきりと立ち、むしろチリチリ、キリキリというタッチが耳につくぐらいです。
今度はこのツマミをもとの位置に戻し、アンプ側の高音域のイコライザーのツマミで高音を強調してみます。するとスピーカーの、高音域を鳴らすツイーターはそれほど反応しないのですが、中音域を担当するスピーカーが高音域を無理して鳴らそうとするような、やや割れ気味の高音が加わります。ではそのスピーカーを、コントロールパネルのMFのツマミで抑えると音像の厚みが目に見えて、いや、耳にハッキリ分かるぐらい減ってしまいます。
そんなわけで、この4307の良い音を聴くには
普段鳴らす音量で
いろいろなレコードやCDを鳴らし
アンプ側とスピーカー側両方のツマミを調整して
好みの、というよりこの場合は自分の納得いく音が聴こえるように調整を重ねて詰めていく必要がある、ようなのです。
現在のボクはCDとLPしか聴かなくなっていますし、その比率も1:4ぐらい、LPをメインで聴いています。
しかし、ボクの節操の無いレコードコレクションの中には、CDに移行する直前、80年代中盤ぐらいの非常にメリハリの効いた音像のものもあれば、50年代のモダンジャズの、あまり出来がいいともいえない70年代の再発盤もあります。消耗して音が割れ気味なものもあれば、ほぼ新品の2000年代の重量盤もあり、もはや何を基準にしていいものやら…
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CDで思い出したのが、
同じくラッシュの”ROLL THE BONES”、24K GOLD CDの限定盤を鳴らしてみます。
たしかに高音域の伸びがより自然になり、ギターのディストーションとクリーンの差も聴きとれるのですが、ドラムがどうにも大人しく躍動感に欠けます。ま、これはデジタルリマスターされる前の90年代のCDも同様だったのですが…
オーディオって、スピーカーって難しいんやなぁ、と、やや気落ちしていると、ふと目に入ったのが
マイルズ・デイヴィスの不朽の名作”KIND OF BLUE”でした。
JBLのモニタースピーカーはモダンジャズのリスナーからも高く評価されているそうなので、ものは試しと再生してみると…
いやぁ、もう、天からの啓示を受けた気になってしまいました
トランペット、ピアノ、ベース、ドラム、サックス(2本)、どれもはっきりと、力強く鳴り響きます。音が鳴っていない静寂を再現、とは高級オーディオの世界でよく耳にする表現ですが、たしかに無音の「間」もしっかりと感じ取れるのはただただ感動です…
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そんなわけで、まだまだ研究、というより調整が必要ではありますが、JBL 4307は良いスピーカーだと思います。
出力100ワット前後のアンプで、そこそこの音量を鳴らし、リビングでくつろぎながら、それでも聴きたい音を聴き逃さず、明瞭さと力強さを感じられる音で聴きたい、という方には最適なスピーカーだといえます。
逆に、CDもレコードもデジタルプレイヤーもDVDもまとめて一緒くたに鳴らしたい、レンタルDVDの映画を迫力ある音で観たい、というような万能性は、ちょっと、4307には望めないような気がします。
そのようなホームオーディオ的な器用さ(笑)はどちらかといえば他社の、ボ〇ズやソ〇ーあたりの出来の良い製品を選べばいいように思いますし、実際に電器店に行けば最新モデルがこれでもかとばかりに並んでいるのですから。
しばらくオーディオが鳴らせなかったことからくる飢餓感(笑)を、今は片っ端からレコードやCDを聴いて解消し、このスピーカー、JBL 4307については期を見てまた書きたいと思います。