以前に自宅のオーディオ環境について触れたことがあるのですが、今回はその実質的な続編ともいうべきお話です。
この記事を投稿した時点ではオンキヨーのプリメインアンプ、A-933は現役を続行中でした。
ところがある日、正確には関東への引っ越しがあと半月に迫った6月中旬、電源が入らなくなり使えなくなるという事態に見舞われたのです。
実を言うとこのA-933、数年前からかなり不調でして、突然ブーンというノイズが入っては消えたり、片側のスピーカーから音が出なくなったりといった病状が日増しにひどくなっていました。
そこへきてこの末期症状です。何らかの保護回路が働いたのでしょうが、これを修理して使い続けるか新機種に買いかえるかを散々悩んだ結果、引っ越しの前に廃棄処分することにしました。
涙ながらにA-933を見送ってちょうどひと月経った今週、時は来た!とばかりに意気込んで電車に乗り、向かったのは新宿。ヨ〇バシ〇メラの店員さんになかば泣きつくようにして値段交渉を試みた結果…
ああ疲れた。駅から自宅までの20分がとてつもなく長く感じられました。重いねんって(^_^;)
あらためまして、オンキヨーのA-9510でございます。
買い替えにあたってあげた条件のうち、
アナログレコードを聴くためのフォノイコライザーが内蔵された端子が装備されていること
2系統のパワーアンプを内蔵していること
のふたつをクリアしているのがこのA-9150だったこと、オンキヨーはかれこれ25年以上つきあって慣れていることもあり、A-933の後継にあたるこのモデルに決めました。
夕闇迫る埼玉の自宅でいそいそとスピーカーをつないで用意し、最初に鳴らしたのが
ラッシュ(RUSH)の”MOVING PICTURES”でした。冒頭はもちろん”Tom Sawyer”。
♪ミョ~ン(イントロのシンセ)
…
……なんかビミョー(;´Д`)
今までA-933で聴いてきた音に比べ、どうも低音が大人しいのです。音量を上げても高音域ばかりが耳についてしまい、ゲディ・リーの、あのヘヴィにドライヴしたベースが胸元に迫ってくるような激しさが感じられません。
A面を通して聴いた後、次に取り出したのが、
マイルズ・デイヴィスの”KIND OF BLUE”。
今度は管楽器のソロの、音の伸びがイマイチな感じです。ピアノやドラムの繊細なタッチはちゃんと聴きとれるのですが、マイルズやキャノンボール、コルトレーンの突き刺すようなブロウが響いてきません。
う~ん、こんなもんなんかなぁ、と首をかしげながら説明書を見ると、
10~30分ほど稼働させているうちに回路内の温度が安定して音が柔らかくなります
との記述が。
そんな、焼き芋でもあるまいし(;^ω^)などとぼやきながらなおもページを繰ると、インピーダンスの設定の方法についての記述を見つけました。
…そういえば、スピーカーのインピーダンスって何オームだっけ?
そうなんです。アンプ回路、スピーカーユニット両方のインピーダンスを合わせる調整をしておかないと、特に回路側に余計な負荷がかかり、場合によっては破損することもあるのです。
あわててスピーカー側のインピーダンスを調べ、アンプ側の設定をそれに合わせて変更します。
その直後、
音が落ち着いて伸びやかになったんちゃうか
インピーダンスの調整が済んだことで回路やスピーカーの負荷が取り除かれて音質が向上したのかも、などと勘繰りながら、再び”MOVING PICTURES”を鳴らしてみます。
(ノ゚ο゚)ノ
音がホンマに柔らかくなっているやん!さっきよりずっと迫力あるやんけ!
これは本当に驚きました。以前の投稿でご紹介した2系統接続もここにきて本領を発揮し始め、強拍のダイナミズムとデリケートなタッチのメリハリもさらに明確になっていきます。
こうして、ファーストインプレッションこそあまり冴えなかったものの、A-9150は1時間足らずの間にその真の実力を発揮し始めたのです。
*
あまり難解な話になるのも良くありませんが、ここでA-933とA-9150のカタログスペックについてご紹介しておくと;
実用最大出力
A-933:200W+200W(4Ω、JEITA)
A-9150:90W+90W(4Ω、1kHz、2ch駆動時、JEITA)
周波数特性
A-933:10Hz~60kHz(CD、+1dB/-3dB)
A-9150:10Hz~100kHz/+1dB、-3dB (LINE1、DIRECT)
A-933は片側で最大200ワットという高出力にものを言わせ、低音の重さや迫力を演出することに長けていたといえます。
対してA-9150はその半分ほどの出力ながら再生音域をさらに広げることで高精細でメリハリのある響きを狙っているものと思われます。
A-933の発売は2005年。A-9150はその12年後に世に出ています。
考えてみれば、アナログレコードの信号の増幅と再生についての技術はすでに開発しつくされているのかもしれません。
一方でネット配信に代表されるデジタルストリーミングは音楽の、リスナーへの届き方、音楽の聴こえ方も変えてしまっているのでしょう。A-9150はデジタル信号の信号処理に力を入れているようで、さらに上の音域まで拡充された周波数特性もあいまって、非常に硬質でクリアな響きを獲得しているようです。
なので当然といえば当然なことなのですが;
クリス・ボッティのライヴアルバム”IN BOSTON”の響きはもう、圧倒を超えて感涙モノでした。会場の音響をそのままオンキヨーだけに再現してみせるA-9150のCDの再生能力はボクの予想をはるかに超えた驚異的なものでした。
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こうしてオーディオの泥沼魅惑の世界にまた一歩足を踏み込んでしまったことに今さらながら恐怖と後悔を禁じえないわけでございますが、そうはいってもやはり良い音というのはいいもんです。
このところまるひと月レコードを聴けない日々が続いていたことで一種の飢餓状態だったことを加味しても、A-9150は優秀な製品である、と申し上げておきます。
今回の記事が現在のメーカーが精魂込めて造る新製品のオーディオ機器の、少しでも認められるきっかけになれば、いちレコード好き、オーディオの半可通としては嬉しいかぎりです。皆さまも心に余裕が、お財布に厚みがあるときにいちど目を向けてみてはいかがでしょうか。