Green, Green Grass Of Home | walkin' on

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アナログレコードのレビューを中心に音楽に関するトピックスを綴っていきます
 歌詞の和訳や、時にはギターの機材についても投稿します

 少し前にトム・ジョーンズのベスト盤について投稿した際に、彼のレパートリーとして知られる”Green, Green Grass Of Home”(思い出のグリーングラス)のことをちょこっと書きましたが、今回はその歌詞をご紹介します。

 

(トム・ジョーンズ 1966年頃)

 

 

 

 

The old home town looks the same
As I step down from the train

列車から降りて分かるが

故郷は昔のままみたいだ
And there to meet me is my Mama and Papa

母さんと父さんに会いに行くんだ
Down the road I look and there runs Mary

道のむこうからメアリーが駆け寄ってくるのが見える
Hair of gold and lips like cherries

金色の髪にサクランボのような唇
It's good to touch the green, green grass of home

故郷の緑のなかにいるのはいいものだ


Yes, they'll all come to meet me

皆 私に会いに来てくれる
Arms reaching, smiling sweetly

手をさしのべ 優しく笑いかけてくれる
It's good to touch the green, green, grass of home

故郷の緑のなかにいるのはいいものだ


The old house is still standing
Tho' the paint is cracked and dry

ペンキがひび割れてしまっているが

家はまだそのままだ
And there's that old oak tree that I used to play on

幼い頃に登って遊んだオークの木も

Down the lane I walk with my sweet Mary

メアリーと寄り添って歩く
Hair of gold and lips like cherries

金色の髪にサクランボのような唇
It's good to touch the green, green grass of home
故郷の緑のなかにいるのはいいものだ

Yes, they'll all come to meet me
皆 私に会いに来てくれる
Arms reaching, smiling sweetly
手をさしのべ 優しく笑いかけてくれる
It's good to touch the green, green, grass of home
故郷の緑のなかにいるのはいいものだ

Then I awake and look around me
At the four grey walls that surround me

目が覚めて

四方を囲む灰色の壁を眺める
And I realize, yes, I was only dreaming

それで気づくんだ そう 夢を見ていただけだと
For there's a guard and there's a sad old padre -

向こうには守衛と 年老いてみすぼらしい牧師
Arm in arm we'll walk at daybreak

夜明けには腕を引かれて連れていかれるのだろう
Again I touch the green, green grass of home

もう一度 夢の中で故郷の緑に戻ろうか

 

Yes, they'll all come to see me 

皆 私に会いに来てくれる

in the shade Of that old oak tree

あのオークの木の陰に
As they lay me neath the green, green grass of home

故郷の緑の近くに葬ってくれるのだから

 

(以上私訳)

 

 

 

 

 この曲の歌詞を、ローティーンだったボクはショボい英和辞典を片手に懸命に訳した思い出があります。今のネット時代では想像もつかない難行でした(;^ω^)

 

 

 すでに多くのブログで採りあげられていることなので、屋上屋を架すようで気がひけますが、この曲は最後の2連でお分かりいただけるように、刑の執行を待つ死刑囚が見た夢が主題となっています。

 

 

 調べてみて知りましたが、もともとは1965年にナッシュヴィルを拠点に活動していたクラウド・”カーリー”・プットマンがジョニー・ダニエルのために書いた曲なのだそうです。

  

 それが1年足らずのうちに多くのカバーを生んだのですが、その中のひとりにジェリー・リー・ルイスもいました。 

 するとそのルイスの影響を受けてシンガーを目指したというトム・ジョーンズもこの曲を採りあげ、結果としてカバーの中の最大のヒットとなりました。

 

 

 

 

 以来、ホントに星の数ほどのカバーを生んだこのGreen~ですが、中には死刑囚の見た夢という設定が重すぎて(~_~;)歌詞の最後を改変したものも多いとききます。

 ハッピーエンドを願うのは人の性なのかもしれませんが、この、明日には消されることになる命という重さがあってこそ望郷の心の純粋さが際立っているようにボクは思います。

 

 

 なので、かのジョニー・キャッシュが1968年に行ったフォルサム刑務所でのコンサートでこの曲を、当たり前ですがホンモノの囚人の前で歌ったという事実にはもう、完全に圧倒されます…

 

 

 

 この曲についてはもうひとつ、開高健『夜と陽炎 耳の物語**の中のくだりが強烈に印象に残っています。

 

 開高健は1964年から3回にわたって戦時下のヴェトナムに赴くのですが、1968年にアメリカ軍の基地に滞在して兵士と生活を共にしていたとき、若いアメリカ兵が日光浴のあいまにうたっている歌が耳に入ります。

 その兵士に紙とペンを渡して、歌詞を教えてくれるよう頼んだところ、しばらくしてその兵士が渡してくれた紙に書かれていたのがGreen~の歌詞でした。

 

 ところどころに”わが家の、緑の、緑の草よ”というリフレインがつく。さんざん苦労して乱字を読みたどった結果、午後の若いアメリカ兵は死刑囚の歌をうたっていたらしいとわかった。自身を死刑囚になぞらえてトイレの裏でうたっていたのだ。名状しようのないひどい音痴だったが、この三角陣地での暮らしを独房の死刑囚のそれと感じているらしいのだった。とわかった瞬間、一閃するものがあった。あらくれ男の手でいきなりはらわたをにぎりしめられたようなショックを下腹におぼえた。同時にその若者のはにかみぶりもわかり、瞬間、日夜つきまとってはなれない悲惨と愚劣が一歩しりぞくのを感じさせられた。とぎれとぎれのその若者の音痴の声を思い出すと、微笑がこみあげずにはいられないが、声にはならなかった。

 

 歌詞の内容をどれだけ感じ取っていたかは不明にせよ、従軍中の兵士でさえもこの曲を口ずさんでいたこと、それが望郷の歌であり、さらには死刑囚の見た夢であるという筋書きがあるからこそ強いリアリティを獲得したという、やや極端かもしれませんがひとつの例ではないでしょうか。

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