レコード番号:LAX 500( LONDON) 1976年(国内盤)
ある時、たしか友人と飲んでバカ話をしているときだったように記憶していますが、トム・ジョーンズ(Tom Jones)のことを―もちろんその時は冗談で
叔父貴
と表現したところ、一同大爆笑、大ウケ。
以来、血縁関係など全く無いイングランドの名シンガーのことを、もちろん敬意をもってですが叔父貴と呼ばせていただいております。
…ほら、今から30年前の地方都市や、そこからさらに離れた田舎町のサテン(註:喫茶店)に
こんなファッションに身を包んだ、何が本業か分からない、それでいて妙に気前のいいオジサンって居たじゃないですか(;^ω^)
そのヒトがカラオケ喫茶や、夏祭りの素人カラオケ大会のステージで
とんでもないポテンシャル(笑)を発揮してやんやの喝采を浴びる姿とか、皆さんのご記憶にはありませんか?
そんな、今のちょいワルおやじとも若干路線の違うナイスなミドルが生息していた昭和末期の記憶が、ボクの中ではトム・ジョーンズの太くワイルドな歌声と結びついているというわけです。若い世代には分りづらいところでしょうね(^_^;)
以前からLPのベスト盤には手を出さないようにしていると書いておきながら、またもやベスト盤です。
といってもボクにとってはなじみ深いアルバムです。というのも、まだローティーンだった頃に母から買い与えられたCDのなかにこのベスト盤があったのです。
それから30年以上経ったある日、埼玉の郊外のリサイクルショップで見つけたのがそのLP盤でした。
収録曲と解説の内容に若干の違いはありましたが、あの頃聴いたのと同じアルバムであることに違いは無く、300円(税抜)と安かったので迷うことなく購入を決めました。
ジャケット裏に日本語解説。CDの解説ではデッカとパイの両レーベルに在籍時の音源を集めた旨あったように記憶していますが、ここには記されていません。
原詞はこのライナーに。和訳は無く裏は白紙。
帯も付いています。色褪せ方が時間の流れを感じさせます…
そこまで必死にアピらんでも売れるでしょうに(・_・;)
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みなさんの記憶の中にあるトム・ジョーンズの最新の情報といえば「恋はメキ・メキ」なんちゅう邦題や(;´Д`)こと”If Only I Knew”のリリースかもしれませんが、それも1995年のことですから25年も前のことです。
それと、その翌年に公開された映画”MARS ATTACK!”に本人役で登場したのを見て驚いた方もいらっしゃるかもしれません。いわば自身のセルフパロディのような役をこなしてみせる度量の大きさはまさに叔父貴の面目躍如ですが、70年代初期の絶頂期を越えた、やや落ち目なシンガーという世間からの評価があったからこそあれだけ笑い、もとい話題となったわけであり、別な意味でもハマり役だったといえます。
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叔父貴もといトム・ジョーンズの最大の武器は歌唱力であることは疑いようのないところですが、改めて彼のヒットしたレパートリーを聴きなおしてみると、情感たっぷりな、むしろ過多といえるぐらいの歌いまわしが目立ちます。
しかしよくよく聴いてみると、これは曲でいえば「思い出のグリーングラス」こと”Green Green Grass Of Home”がもっとも分かりやすいのですが、声量だけの力押しではなく、曲を解釈したうえで歌声で表現していることに気づきます。
もっとも、そのことはGreen~が、死刑の執行を待つ囚人の見た夢を題材にしていることが分かっていなければならず、英語詞がなかなか理解されない日本ではいまだに叔父貴の懐メロ扱いヾ(--;)コラだったりします。
もちろん、叔父貴いやトム・ジョーンズの本領たる常人離れした声量をフル活用した曲もあります。その最高傑作が、この盤のラストを飾る”Thunderball”、映画『007 サンダーボール作戦』の主題歌です。
♪So he strikes like
サーン
ダー
ボォ~~~~~~~~~
クラッ(((。o゜)))
おおお叔父貴ー!(゜д゜;)
この曲のキーは彼にとって高く決して楽に歌えるものではなかったこともあり、ラストのロングトーンを歌いきった直後に酸欠で倒れてしまったとか。
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最後に、このアルバムとは関係なくて恐縮ですがこんなエピソードを;
2003年に公開されたドキュメンタリー映画”RED, WHITE AND BLUES”への出演をオファーされたアーティストの中にジェフ・ベックもいました。
ところが撮影の直前になって、聞いていたハナシと違うと言い出しいや、いつものことですその場から立ち去ろうとします。
それを引き留めたのが、そう、われらが叔父貴トム・ジョーンズ。
ダメだよジェフ 僕らはプロなんだから
と諭し、ベックを撮影に参加させたのだとか。
後日のインタビューでその話が出た際のベックは
トムは本物のプロフェッショナルだよ
と素直に認めていました。
ベックに面と向かってお説教できるヒトがこの世界にどれだけいるかを想像できる方であれば、かの叔父貴の偉大さがお分かりいただけると思います。