スティーヴ・ハウ(Steve Howe)といえばイエス(YES)、エイジア(ASIA)、GTR等で残した名演で知られる「マエストロ」(ジョン・アンダーソン談)ですが、今回は彼のキャリアの中から個人的に印象に残っている2曲、正確にはその中でとったギターソロをご紹介します。
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では、まずはこちらを。
オリジナルメンバーの再集結が実現したエイジアの2006年のツアーではメンバーがかつて在籍したグループの曲をカバーするという趣向があり、元バグルスのジェフ・ダウンズ(キーボード)の持ちネタ(笑)として披露されたのが”Video Kills The Radio Star”でした。
この曲をご存じの方も多いと思いますが、ギターのパートはほとんどといっていいほど無い曲です。このカバーにあたってもハウは原曲における女性コーラスのパートをなぞるようなプレイに終始します。
ところが、ご紹介した動画では3:00あたり、つまりアウトロ(後奏)でギターソロに突入します。
これがもう、顔がにやけてしまうほどの「ノリ」っぷり。まるで自作曲のように勢いよく弾きまくる彼の雄姿に、さすが歴戦の猛者と感心しきり…
普段は穏やかで人当たりの良いことで知られる彼ですが、自身のギターのパートには人一倍執着(~_~;)するのもまた事実だそうで、かつて90年代末期のイエスで同じギターのパートを分け合ったビリー・シャーウッドはさぞ神経をつかったことでしょう。
もっとも、ジョン・ウェットンが世を去った後のエイジアや、クリス・スクワイアが天に召された後のイエスでベースを担当したのが実はシャーウッドだったりします。ギター以外のパートに対しては、ハウは優しいのかも(^_^;)
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もう一曲はこちら。
クイーン(QUEEN)におけるフレディ・マーキュリーの遺作となった1991年のアルバム”INNUENDO”のタイトルトラックは7分近い長尺なのですが、その中間、この動画では3:35あたりからのスパニッシュギターのソロをとっているのがスティーヴ・ハウなのです。
この頃たまたまスイスのモントルーに滞在していたハウがランチの際に出くわしたブライアン・メイに、レコーディングしてるんだけどスタジオに来る?と誘われて
うん行く!
そこでたまたま制作中だった楽曲の、中間部でソロ弾いてくんない?と請われて
うん弾く!
その日のレコーディングが終わった後、ハウはクイーンのメンバーと仲良くディナーに出かけたのだとか。
こうして、おそらく本人は自覚などあまり無いのかもしれませんが、
クイーンの公式音源にプレイを残したギタリスト
という、おそらく唯一の名誉ある称号をスティーヴ・ハウは手にしたのでした。
”Under Pressure”におけるデイヴィッド・ボウイのような例外はあるものの、ゲストミュージシャンを参加させることの少ないクイーンがなぜハウのプレイを収録したのか不思議な気もしますが、結果としてクイーンの持ち味であるドラマティックな、仰々しく芝居がかった世界観を補強することに成功しています。ハウ自身もこのソロの出来にはとても満足し、また誇りにしていると語っています。