~緊急停止~
~緊急停止~
「おい、トーマス!250kmで走ってるんだぞ!そろそろ止まらないとやばいんじゃないか?!急停止したらみんな即死するぞ!」
「そうだった!よし、停止態勢に入るぞ!」
ジュイフの忠告にトーマスは慌てて停止パネルをタッチする。
「目標物マデ、停止距離ガタリマセン」
「なんだって?じゃあ多少の事はいい、無理をしてでも止まれ!」
「無理ハデキマセン」
「くそ!融通、利かないんだな?」
「おい、はやく、トーマス、何処でもいいから近くに下りればいいじゃないか?」
ジルがトーマスに叫んだ声が、コンピューターに届く。
「目標物ハ停止モードに入ッテシマイマシタノデ変更デキマセン」
「ええ?!」
目前に黄金の塔が大きく迫ってきている!
「運転手!どうしたらいい?!」
ジルが運転手の襟首を掴んで叫ぶ。
「もう駄目だよ・・・ぶつかって粉々、みんなさよならだ」
「トーマス、セーフティーモードを元に戻せよ!」
ジュイフが叫んで手を伸ばし、セーフティーモードのレバーを力いっぱい引き上げる。
ビービービー!
再び真っ赤なランプが点灯して車内に凄まじいサイレンが鳴り響く!
「キャー!もう駄目だわ!助けて!」
スーザが耳を塞いでそれをジュイフが抱え込んで目を瞑る。
ギギギギギー!
突然ジェットタクシーが凄まじい唸り声を上げるとガクンガクン!と上下に揺れる!
トーマスが目前に迫った、黄金の塔の古めかしいレンガの壁を見て息を飲む。
「終わりだ・・・」
ドーン!
振動が鳴り響き、そのあとで ガツン!大きい衝撃があった。
ズズズズズズーン・・・
黄金の塔が地響きを鳴らす。
「きゃ!何事でしょう!」
第三夫人が持っていたティポットを落とした。
ガシャーン
伝統彩色法による清楚なスズランの図柄のティポットは粉々に砕け散る。
「なんだ?一体!何かぶつかったのか?」
ガルバンゾーが慌てて葉巻の火を消して、黄金の塔の古い格子窓を押し開く。錆びついて全開できない鉛のような雨戸だが、ガルバンゾーの怪力で、容赦なくこじ開けられた。
「なんだ?!おい!凄いことになってるぜ!見てみろ!」
ポマノフ第三夫人に続き、メーギルがよろよろと窓に近づく。
「きゃあ!!・・・ジェットカーが・・!ジェットカーが!」
夫人はめまいを感じたようによろめき、メーギルが慌ててそれを支える。
「凄いな、ジェットタクシーが、塔に突き刺さってるぜ。」
ガルバンゾーが上半身を乗り出して、その中を確認しようと必死に目を凝らす。
「おい!無事か?運転手は生きているか?!まずいな、塔が倒れるかもしれん・・・!」
窓から5Mほど下に、何と、あのジェットタクシーの先端が、塔の古いレンガに1mほど潜り込んで静止している!
ジェットカーの中で、ガルバンゾーの響く声に反応して、一番最初に意識を取り戻したのはスーザだった。落下や衝撃事故などでは女性の方が生存確率が高いといわれているのはまんざら嘘でもないようだ。
「イタタタア・・・ああ・・生きてるのね。」
スーザの座席の横は、お互いに凭れ掛かって入り乱れている青年達の姿がある。どれがだれの足がわからないほどもつれ合っている。
「ジュイフ!ジュイフ!大丈夫?シュムタも・・・!あなた、運転手さん、大丈夫?」
「ジルったら・・・!あ!トーマス?トーマス?」
恐る恐る運転席をのぞくと、セーフティバルーンに包み込まれているトーマスの姿がある。トーマスがその透明の大きな子宮のような風船の中で大きな振り子のように、ゆらゆらと揺れている。慌ててスーザが窒息しないように、そのバルーンを引きちぎると、その素材は瞬時に縮んで、トーマスの方にぺったりと貼りついた。
「ふー!どうにか生きてるみたいだな?スーザ、無事か?」
「ええ!ええ!よかった。みんなはまだ気絶してるわ。」
「一体どうなったんだ?」
トーマスが辺りを見回して、ドアを開ける。
「うわあ!」
再び慌ててドアを閉めるトーマスにスーザが驚く。
「どうしたの?」
「宙に浮いて止まっている!」
「だったらよかったじゃない?」
「いや、塔に突き刺さっているみたいだ・・・」
「ええ?!」
なんと、ジェットタクシーは地上から約30mほどの場所に鼻先1mほど潜り込んでそのまま止まっているのである。
「おい!運転手!今助けてやるぞ、これに捕まって登ってくるんだ!」
上の方から何者かの声が響いてくる
頭上の窓から何者かが叫んでいる。ジェットタクシーのドアの横に、ガランガランと降りてきたのは金属製のオートラダー(自動梯子)だった。
「ジル!ジュイフ!シュムタ!目を覚ませ!起きるんだ!」
トーマスが懸命に二人に呼びかける!
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