~再会~
~再会~
ジルが最初に目を開けた。
「頭がいてえ!」
「大丈夫?!」
スーザがゆっくりとジルを起こす。それに次いで、シュムタ、ジュイフが目をさまし、例の運転手だけがまだ気絶している。ジルの下敷きになっていたのだ。
「梯子がある。塔から誰かが助けようとしてくれているようだ。一人ずつ、オートラダーに乗ろう。」
トーマスがまず、ジルに乗るよう、催促した。オートラダーの足踏み台にジルがそっと足をかけると、地上30mの空中で、スリリングに梯子は揺れる。
「おい!タクシーがこんなところに突き刺さってるぞ!」
オートラダーに乗って初めて現状を理解したジルが目を丸くして黄金の塔の全貌を上から下まで眺めている。
「おい!ラダーを引き上げてくれ!」
トーマスが、黄金の塔の窓際の人間に叫ぶ。ガルバンゾーがラダーのスイッチを入れると、ジルが徐々に上に自動的に上っていく。このラダーの限界が体重100kgまでなので人間は一人ずつしか載せることができない。
タクシーの中から、徐々に上っていくジルを確認し、次はシュムタに乗るよう、奨める。
「スーザを載せてやれよ。」
「いや、スーザは、体重が軽いから俺と一緒に最後に乗る。」
「成程。了解だ。」
窓際まで登りつめたジルの体をガルバンゾーが怪力で引き上げ、ジルが黄金の塔の部屋に到達した。
「あ?!ジュニアじゃないか!?」
「まあ、ジル!」
「ジ…ジル!どうしたんだ!!」
ガルバンゾーと、夫人とメーギルが三人同時に声を上げる。
「おーい、早くラダーを上げてくれ!」
階下からの声に気づいてガルバンゾーがスイッチを押す。
ジュイフ、シュムタ、が救出され、最後にトーマスがスーザを脇に抱えてラダーに乗る。
「メーギル、元気だったか?!」
ジルとジュイフとシュムタが、メーギルの肩を順番に抱く。
「みんな・・・ようこそと言いたいところだけど、か・・変わった訪問だね?」
「お前に秘密のプレゼントを届けに来たんだ。」
ジルが、爽やかにに笑い、ジュイフ、シュムタが窓際にメーギルを連れていく。
「ほら、見てみろよ。」
メーギルが覗き込むとそこには信じられない光景があった。
「スーザ!」
懐かしく愛しい声にスーザが瞬時に反応し、上を見上げる。トーマスがメーギルを見て微笑んでいる。
「どういうことだい?!どうして?スーザが?!」
「おばさん、メーギルと、スーザを結婚させてやってくれ。お願いだ。」
ジルが、ポマノフ第三夫人に頭を下げた。夫人は何のことかわからず目を大きく開いている。
「ジル・・・私は事情がよく呑み込めてなくて・・・ごめんなさい。」
夫人がオロオロと若者たちの顔を見回す。
メーギルが窓際から可憐な少女を抱きとめ、しっかりとトーマスと握手を交わす。
「メーギル!」
「スーザ・・・」
二人の熱い涙の抱擁を、ジル、トーマス、シュムタ、ジュイフ、夫人、そしてガルバンゾーが見守る。メーギルの目から大粒の涙が溢れ、スーザへの謝罪の言葉がポツリポツリと毀れる。スーザは優しくそれに応え、メーギルの無事な姿を上から下まで何度も確認し、少し細くなった手のひらを撫で、痩せた頬を両手で優しく包み込んでいた。
「ごめんなさい、わたしは知らなかったから・・・スーザと、メーギルが・・。その、ホールズからは少し聞いていたのだけど・・そうだったのね。」
夫人はスーザににっこりと優しく微笑みかける。
「突然こんなふうに訪れた上に、慌ただしくて申し訳ないが、今、王宮クインデタリアンから大勢の軍隊がこちらに向かっている。メーギルを拘束するために!」
「なんですって?!」
「それは事実か?」
ガルバンゾーがジルに確認する。
「クインデタリアンの秘密電波を盗聴した。」
「いずれにしても、この塔はお前たちのおかげでもうすぐ倒れるかもしれん。ここは脱出しないといけないな。夫人、ジェットタクシーを呼んでくれ!大型のを。大至急だ!」
「わかりました。」
夫人がビジョンに触れ、タッチパネルを操作する。しかし反応がない。
「ガルバンゾー!回線が途絶えているみたい。どこにも繋がらないわ。」
「くそ!おい、ジル、コンビエンスを貸せ!」
ガルバンゾーがコンビエンスでジェットタクシーを呼ぼうとする。しかし、妨害電波が走ってノイズが送り込まれてくるだけである。
「まずいな、どうにか脱出しないと・・・一体どうなってるんだ?」
その時!黄金の塔の階下から、物々しい足音が響き始めた!
「来たみたいだぜ!どうする!」
ジルが窓をのぞくと、蟻の行列のように連なった黒い軍隊が、塔の周りをぐるりと囲んでいる。
「もう取り囲まれているよ!」
シュムタが叫ぶ。
若者達がその異様な光景を窓から覗き込み、生唾をごくりと飲み込む。四面楚歌とはこういうことを言うのだ。
トーマスが電子フェンシングに手をかけるが、ガルバンゾーがそれを制す。
ドアが乱暴に開き、そこに現れたのは黒ずくめの男、ロームキンだった。
「おやおや、多くの来客がおいでのようですな。」
黒いマントを後ろにさっと払うと、足音もなく静かに若者たちに歩み寄った。
「お客さん達は、メーギル王子のお友達ですかな?せっかくのご訪問申し訳ないが速やかに退去願いたいのですが」
「例の小汚いペテン師だな、お前。何しにきた?!」
ジルが堂々と歩み出た。
「先刻、何者かにニコル=ポマノフ大王が暗殺されましたことを、まずご報告に上がりました。」
「え?!何ですって?!」
夫人がヨロヨロと歩み出て、その言葉を再び確認した。
「あ・・・・あなたが殺したのね・・」
夫人がロームキンのマントを掴みにかかったが、容赦なく払いのけた力の反動で、夫人は絨毯によろめいて両手をついた。
「あなたが・・あの女と・・」
「物騒なことを申されますな。さて、調査して容疑者として浮かび上がったのは、あなたと、ご子息、メーギル王子です。これから取り調べを行いたいと思いますので、速やかに連行願います。」
ロームキンが不敵な笑みを溢し、ガルバンゾーを睨み付けた。
「そして、悪徳医者ガルバンゾー。数々の違法行為により、お前も医師裁判にかけられることとなった。一緒に連行してもらう。」
★お知らせ
冬に、短編小説の応募に出したいと思い原稿を執筆中です。初めて応募しますので緊張しています。主人公はガルバンゾーに設定し、宇宙惑星物語の外伝になっています。みなさんの感想、意見を応募したいので原稿を公開いたしますが、アメンバー限定記事としたいので、読んでくださる方は、アメンバ申請お願いいたします。
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