SF小説「宇宙惑星物語」 -36ページ目

~ジェットカーチェイス~

~ジェットカーチェイス~


「あのう・・・バッテリーがそろそろ切れるんですが。」


運転手がオレンジの鶏冠を撫でながら恐る恐るジルの顔色をうかがう。


「なんだって?!ジェットカーだろ?どうしてバッテリが切れる?」


「それが・・・こんな高速で長距離を走ったことがなかったから初めて知ったんですが、循環バッテリシステムが追いつかないみたいなんです、ですからどこかで充電しないと・・・」


 荒野を、海を、森を超えて、ジェットタクシーは今、星都レイングシュタットに近づきつつあった。通常の旅行客は極点付近のフィールドゲートから、ジェットバスに乗り、それぞれの地方に向かうシャトルに乗り込む。

 シャトルというのは、現在のスペースシャトルにも似た形で、一度大気圏を出て、超高速で移動した後再び大気圏に突入する。シャトルを利用した場合、それぞれの極点に移動するのに1時間しかかからない。惑星一周は2時間。夢の乗り物であり、地球でも未来の乗り物として期待されている。


SF小説「宇宙惑星物語」


 ただし、星都レイングシュタットは、フィールドゲートになるべく近い、冷涼地帯にあるため、乗継などの時間を考慮しても、ジェットカーで行く方が速いとジルは判断した。


「あとどれだけ走れるんだ?!」


「ええっと、わかりません。バッテリメーターが壊れてしまって」


「そんなジェットタクシー、違法だろ?!ちゃんと直しておけ!」


ジルが苛々して運転手の頭をバチンと引っぱたいた。


「可愛そうよ!頑張ってるじゃない。」


スーザが運転手を健気にかばう。


「いいわ。行けるところまで行きましょう。メーギルの所に向かっている兵隊は?私達、間に合わない?」


「よし、運転手、俺に代われ。セーフティモードのマニュアルに切り替えるぞ」


トーマスが運転席に怯えて座る運転手を避けて、そこに着席した。セーフティモードとは、事前にぶつかりそうな対象物、建物、ジェットカー、ホバー、人間などを察知し、避けるよう補助してくれるシステムである。ホバーボールの選手で運動神経抜群のトーマスが、深呼吸して運転席のスイッチを切り替えた。


「トーマス、250kmだと絶対、警備隊がおっかけてくるぞ。」


ジュイフが身を乗り出してトーマスに忠告した。


「まけばいいんだろ?まあ、見てろって。ホバーフォレストでも、結構上位なんだ。」



ホバーフォレストは、スキーのクロスカントリーのように、森林の中を滑っていくわけだが、もう少し野蛮な競技である。目的は、スピードを競い合うのではではなく、一人だけ勝者が生き残るゲームである。森林の中を高速のホバーで駆け抜けながら、相手の競技者とぶつかったりして妨害し、蹴落としながら、一人が生き残るまで行われる競技で、事故も多いが、大変人気の高いスポーツとして知られている。


「森林とは、違うぜ・・・」


最年長のジュイフは溜息をつくと、青年たちの無茶にあきれ果て、隣に座る愛らしいスーザに微笑みかけた。


「安心しろ。必ずメーギルに会えるさ。」


「ありがとう。」


「さあ、レイングシュタット、キャッチしたぜ!突撃だ!」


海の上を荒波を立てながらジェットタクシーが傾き、グルリと旋回してビルの谷間に突入していった。


ビーッビーッ!


海上警備隊から既に速度違反をキャッチされたようで、数機のジェットパトロールが空母艦からこちらに向かって飛んでくる!


「もう来た!」


ジルが背後を振り返り、追いかけてくる3機の黄色いジェットパトロールを監視する。


「電子銃撃たれて終わりだよ。ショートして、終わり。」


震えながらスーザの隣の運転手が泣きべそをかく。


「かっこ悪いジェットパトロールだな!あれで追っかけてるつもりかよ?色のセンスも絶妙だけど、デザインも酷い。だからレイのジェットカーなんて誰も買わないんだよ。」


「ジル、そんなこと言ってないでベルトをきちんとして、バーに捕まれ。旋回するぞ!」


トーマスがいきなりタワーの狭い隙間に入り込んだ。ベイサイドのツインタワー。隙間は5Mほどしかない。ビルとビルがエスカレーターで繋がっており、その梯子のような隙間に器用にトーマスが潜り込んだ!隙間は数十センチほどしかない!セーフティーモードが働き、真っ赤なランプが点灯して、ジェットカー内は凄い警報音が鳴り響く!


「キャー!」


スーザが思わずぶつかりそうになる視界とその音に耳をふさいだ。突然思いついた様にトーマスがセーフティーモードレバーを下ろす。


「おい!トーマス、やばいよ、それは。」


「この音うるさいから余計気が散るんだ。大丈夫だ、掴めてきたからぜったいぶつからない。怖いなら目を閉じててくれ!」


ジュイフが乗り出してレバーを上げようとするがジルがそれを制した。


「任せようぜ!トーマスが今まで粗相したことなんて一度もないんだ。俺が知る限りではな!」


トーマスの見事な運転で黄色いジェットパトロールは、ビルとビルの谷間の前で立ち往生している。ビルの下を歩く人々が、頭上で繰り広げられる激しいカーチェイスを目撃して立ち止まっている。


「トーマス、黄金の塔ってあとどれくらいいあるんだ?」


ジルがマップをのぞきこむ。


「ここから50kmのとこだって表示になってる。」


「そんな遠いのか?!」


「隔離するための塔だからね。また追手が来たよ!」


シュムタが背後から走ってくるホバー5機を発見する。


「ホバーか。ホバーは大丈夫だ。奴等に250は出せない。」



トーマスがホバーが立ち止まって諦めるのを確認すると、更に上に急上昇した。



「やばいぜ、トーマス。ビルの上に出たら目立つ。パトロール船に見つかったらあっという間に撃ち落されるぞ。」



ジルが制したのも束の間、雲の上から現れ出たパトロール宇宙船達がずらりとトーマスをジェットタクシーを取り巻いている。



「もう終わりだよ。撃たれて終わり。木端微塵だ。」



「こんな場所で警察が撃ち落すわけないだろ?」



運転手の嘆きにジュイフが慰めを言う。



「急降下するぞ!捕まれ!」



トーマスが叫ぶと、ジェットコースターのようにジェットカーがまっさかさまに落ちていく。



「そうか!山に入るんだな!」



ジルが生い茂った緑の山を目前に確認して叫んだ。



「森に入ればこっちのものだ!」



トーマスが生い茂る木々をバキバキと降り倒しながら、直滑降で山の中に突入していく。その様を信じられないという様子でパトロール宇宙船が呆然と眺めている。


バキ!バキバキバキ!


枝の折れる凄まじい衝撃を受けながらもトーマスは無視して黄金の塔へと向かう。大きな幹以外は目に入らないという様子で、できる限りの隙間を選びながらトーマスは車体をぐるぐると傾ける。



「目が回るよ!ジェットカーが壊れるよ!」



運転手が両手で顔を覆い、泣いているが誰も気には留めない。



「やった!追手がついてこないようだ!」



ジルが握り拳を上げた。



「当たり前だ、こんなのに付いてきたら自殺行為だろう?大丈夫かスーザ。」



ジュイフが、スーザの様子を心配して背中を撫でた。



「ありがとう、平気よ。もうすぐメーギルに会えるのね?」



「ここを抜けたら黄金の塔だ。お蔭で凄い近道ができた。」



トーマスの目前に、飄々と聳える黄金の塔が現れる。



「さあ、次はメーギル、救出だ!」




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