SF小説「宇宙惑星物語」 -25ページ目

第八章 旅立ち ~幕開け~

~幕開け~


TDSA(トールドーン宇宙協議連盟)に集結した各国の主要メンバーがホールに集まり、今回初めて遭遇する、未知の異邦人との接触を待っている。TDSAにおいては、重要会議の召集がかかると完全に外部との通信が遮断され、フィールドゲートにおいて、すべての部外者はシャットアウトされる。この人口惑星は会議が終わり、主要メンバーが解散するまでの限られた間、完全な孤島となるのだ。


SF小説「宇宙惑星物語」

TDSAに、惑星ラスポタニテの代表としてきたのは、マーク=ギンガメルスガンデとジンリカー将軍。そしてホールズ、そしてホールズの付添としてバイカイが同席している。


「先生、惑星レイの連中がまだ見えませんな。」


「大王の代理が、ロームキン。民会の代表ホップロイは投獄されたようだ。ホールズ、レイは、どうなっていくのかね?」


ホールの中央に映し出された唯一の通信画像を眺めながら、ジルの父親であり、ラスポタニテの大統領、マーク=ギンガメルスガンデが珍しく溜息をつく。ギンガメルスガンデが今回の当選で、連続なんと、5回目となり、任期は驚異的な25年を数える。これからも続投を願う国民の意見もある一方で、多くの若手の可能性も啄んでいるという声も上がっている。そろそろ、次期大統領選挙においては、ジーゼル=マッフルあたりに席を譲り、静かにホールズのように隠居生活に入りたいと願っていた。


「あの国は、完全な専制政治に戻ったのだよ、マーク。ロマノフ一世がそう願ったようにね。あの国のシステムは、そのように最初から仕組まれてしまっている。それがなくなるには、ロマノフ王家がすべて終わらなければならない。ハハハ、ちょっと過激なことを言い過ぎたかな?」


ホールズが足を組みながら、ライブラリから特別に拝借してきた古書の複写画像を、小さなスクリーンで確認している。


「スーザが、メーギルの脱走に巻き込まれてねえといいんだけどな、あいつらはどうせフィールドゲートの封鎖で立ち往生を食らってるだろう。それでよかったんだ、きっと。」


バイカイが独り言を呟く。


「夫人もメーギルも逃げ切れることを祈るしかないな。」


ギンガメルスガンデは、哀れなあの二人の身柄の確保をジーゼルに打診したかったが、完全な外部との情報の遮断により諦めざるを得なかった。


「メーギルたちが脱走した以上、次のあととりは、あのなんとかっていう、ドラ息子だろ?ロームキンが摂政について、完全に奴の一人舞台だ。」


バイカイが大ビジョンに映る、例の、黒い怪人を眺めながら呟く。


「そうかな?」


ホールズが笑う。


「違うのかい、先生。」


「フフフ。どうやら張本人の登場だよ。」


ホールズは小さなスクリーンをたたんでポケットにしまうと、円形の大会場の奥から颯爽と入場するあの黒い怪人を見つめた。ロームキン脇目も振らず設けられた席に向かい、静かに着席した。


「ロームキン殿!現在の貴国の内情をちょっとここで報告してはもらえぬか?!」


大きい声で叫んでいるのは、暗黒惑星群内にある、小惑星ビヤードの首相、ネッケである。


ロームキンは静かに立ち上がると、中央の丸いステージ台に足を進める。見た目とは反するその素早い動きに、油断ならないとバイカイは鋭い目で睨み付けた。


「ビジョンでご覧になって、ご存じとは思うが。」


「フードを外すのが礼儀だろう!」


ロームキンの演説にいきなりどこかの首相が割り込んだが、ロームキンは、黒いフードで顔を覆ったまま無視をして続ける。


「此の度、我が国の大王、ニコル=ポマノフが暗殺される事件が起きた。よって、現在、新しい大王の任命まで、この、ロームキンが代行を務めさせていただく。」


会場が騒然となった。


「民会のホップロイが投獄されて欠席なら、民会の代行も呼ぶべきではないのか?」


鋭い指摘は続く。


「民会は王族派に対する違法のデモ行為を続けたため、このTDSAへの参加資格を現在失っている。」


「それを決めるのは、TDSAじゃないのか?!」


再び大きな野次が飛び交う。


「しかし、宇宙協議連盟平和維持規約第34条によれば、国内で違法行為をした人間については裁判の終るまで参加資格は剥奪され、その後の処遇については、TDSAが決定するとある。」


会場は動揺し、野次は止みそうな気配はない。それでもロームキンは構わずに続ける。


「今回、皆にもう一つ報告を加えたい。実は我々は、今回出席するという、異星人との接触に成功している。」


「何だって?!」


ギンガメルスガンデが驚きの声を上げたが、ホールズは静かに目を閉じる。騒がしい会場の中ロームキンの驚くべき告白は止まない。


「事前に彼らの要求を知り、冷静な話し合いを進める上で重要なことと考えたからだ。よって、極秘で我が国がトールドーンを代表して、彼らと会うことを決めた。」


「先方から要求してきたのか?!」


「そうだ。」


ロームキンが深々と被ったフードの中で頷く。


「すべて茶番だ!」


バイカイが舌打ちする。いずれにしても、各国の首脳はロームキンを見つめながら、トールドーン星系の今後は、この訳のわからない黒い怪人が鍵を握ってしまったのではないかと沸々と湧き上がる不安を抑えきれないでいるようだ。


「先方の要求は何だ?!」


「ご当人に説明願おう。どうやらお越しのようだ。」


会場は一気に身を乗り出した。異星人との遭遇の瞬間である。


入口から堂々と入場してくるのは、体格のいい、色白な美しい男である。配下を10人程従えて大胆に設けられた正面の席に立つ。その長身の男はぐるりと周囲を眺め渡し、最後にロームキンを見ると、席についてもらうように手で合図を送った。


「でかい男だ!」


バイカイが自分と同じほどの身の丈の男を見て驚きの声を上げる。


「人間とそう変わらないな。ヒューマノイドか?」


ギンガメルスガンデが、ホールズに尋ねる。


「外見はそのようだね。」


背の高い男は、ゆっくりと中央の壇上に上がり、礼儀正しく少しお辞儀をする。


「私は、遥か銀河の彼方、三万年の歴史を持つカピタ帝国から参りました、ピーンハリ=ルーゼンと申します。此の度は総帥が不在の為、私が代理として参りました。お見知りおきを。」


美しく形の言い唇から毀れる静かな言葉を全員が聞き入っている。


「現在、衛星ラスにおいて突然に起きた惨事についてご報告が遅れましたことを深くお詫び申し上げる。」


先刻まで騒然としていた会場は、針一本落とせぬほど、静まり返っている。ピーンハリの言葉を一言も漏らすまいと、各首脳は、未知のヒューマノイドを睨み付けていた。




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