~化物の正体~
~化物の正体~
カシャ・・・カシャ・・・
ゲートから非常通路に、どんどん流れ込んでくるスパイダーの群れは
例え様のない不気味さで、トーマスの足元を凍らせていた。
「この!蜘蛛野郎!」
バイカイが、漸く立ち上がろうとするベントンの足元のスパイダーの細い足を手で掴んだ!
ビリビリビリ!
物凄い電流がバイカイを襲うが、バイカイはびくともしない。
ブルンブルンと一本の足を軸に仁王のようにスパイダーを振り回すと、天井に這い、ゴルドンを狙う数匹のスパイダー目掛けて投げつけた!
ガシャ!
ビリビリビリビリ!
数匹のスパイダーがその衝撃を受けてつぶれると同時に、ショートして、ドドドっと落ちてくる!その瞬間、奥にいたスパイダーが、背中の羽を一斉に広げる!
「飛んでくるぞ!」
バイカイがベントンの襟首を捕まえてしっかりと立たせると、再び電子フェンシングを引き抜き、その群れに構える!
「バイカイ、ここは、突っ切れ!俺が会議場に奴らを導く!頼むからジルを連れて、早く船に乗ってくれ!先生は俺が見つけ出す!」
「しかし・・・!」
ブウウウウーーーン
スパイダーの大きな羽が広がり、大きな塊となって襲ってくる!
「早くするんだ!迷っているときじゃない!船の準備をしろ!」
バイカイは迷いながら頷くと、端っこに横になっているジルを片手でヒョイと肩に担ぎ、ベントンとトーマスに合図した。
「トーマス、メーギルを頼んだぞ。」
ゴルドンの言葉にトーマスが頷く。
「さあ!突っ走るぞ!追いかけられても構うな!トーマス、電子弾だけ、浴びるなよ!」
バイカイ達がゲートに向かって走り出す!
スパイダーは一斉に180度方向転換をし、彼らを追い詰めようとするがその背後にゴルドンが、ジルから奪った電子フェンシングで電子弾を投げかける!
ボン!ボン!
スパイダーの半分がゴルドンを振り向き、一斉に飛び掛かってくる!
「さあ、こっちにこい!」
ゴルドンは今来た道を戻り、会議場にダッシュする!
ウォーーーーーーーン ボン!ボン!
電子弾がゴルドンの背中に容赦なく当たる。
「いい加減、限界だな!頭がクラクラしてきた・・」
流石のゴルドンも、数えきれない電子砲を浴びて、体力の限界を感じ始める。そして、再び会議場に足を踏み入れるとそこには予想に反する光景が待ち受けていた。
ジーゼルマッフルをしっかと抱え込み、シバーを牽制しているのは、未だ嘗て見たこともない、異様な生き物である。顔が蒼く、真っ赤な眼球、鶏の様なグロテスクな顔が、こちらを不思議そうに伺っている
「やあ、ゴルドン、生きてたのかい。スパイダーまで沢山連れてきて、賑やかな歓迎だね。」
会議場に出たスパイダーは、新たな敵を認識しようと静かに天井に広がり始めた。
「なんだ、てめえ・・・?!」
「さっきまで一緒にいたのにもう忘れたのかい?」
青い顔の化物は頬まで裂ける大きな赤い口で愉快に笑う。
「まさか・・!」
「そうだよ、ゴルドン。わたしだよ。これが本当の私だ。」
「ロームキン?!」
シバーが愕然とする。
「君の気持ちもわからないでもないよ。」
ジーゼルを締め上げ、彼女を引きずりながら、ロームキンと名乗る不気味な生物がゴルドンに近づいてくる。
「私は、暗黒惑星群の、ラムドスという惑星のジェンカ諸島の生まれだ。その島は独特の文化で、資源に恵まれ、爬虫類系の部族としては珍しく、奇跡の繁栄を見てきた。」
「王国イージズ!」
首を締め上げられながら、ジーゼルマッフルが叫ぶ。
「そうだよ、さすが、ラスポタニテが生んだ才女、ジーゼル=マッフル。」
ロームキンがジーゼルの耳を再びねっとりと舐める。
「私はその第二王子として生まれた。だが・・知っているね。我々は惑星レイの、遺伝子取締法によってポマノフ国王に身に覚えのない罪を着せられ、国王は処刑、一族は、官位を剥奪された。第一王子は未だ行方が分からない。おそらく殺されたのだろう。」
「惑星レイは、自分たちが行った遺伝子濫用の不始末を拭い去ろうと、必死になっていたわ。」
ジーゼルマッフルはその腕を解こうとするが、そのロームキンの驚異的な力に驚かされる。
「母は身の危険を感じ、王家の残りの財産を私に与え、私を逃亡させた。当時の最高の医者の所に行き、私は頼んだ。『ヒューマノイドに生まれ変わりたい』と。」
ゴルドンは、ロームキンの赤くて大きな眼球をじっと見据える。半分が飛び出したその眼球は、その治療の副作用であることは疑いのないことだ。猫の目のように眼球の中で黒いものが広がったり、縮んだりしている。
「ガルバンゾーののような名医が当時いなかったため、私の改造は、このようなお粗末な結果に終わった。注入された細胞は私の内部で暴れ、結局、私の、この爬虫類の顔をもゆがめ、その上に、ヒューマノイドの皮膚が被るという形で、治療は断念せざるを得なかった。」
「なんてこと。・・」
ジーゼルマッフルが、そのおぞましい青い顔を悲痛な表情で見つめる。
「時々襲う、激痛。それが始まる度に皮膚が裂け、そこから私の本質が顔を出す。毎日が苦痛で、地獄だった」
彼自身の偽物の人間の手が、その鱗に覆われた頬をそっと撫でる。
「さあ、ゴルドン、私がゲートまで行く道を君が誘導しろ。でなければ、この女は絞め殺す。」
「勝手にしろよ。」
「何?!」
「俺はその女のことは知らねえ。会ったこともねえし、どこのだれか知らねえよ。勝手に二人でやってろ。」
「アッハハハハ!」
ジーゼルマッフルが高笑いをする。
「お・・・おのれ・・・・!」
その瞬間、ジーゼルは思い切りブーツの踵で、ロームキンのひざを蹴り上げる!
「ウガ!」
ロームキンは苦痛に耐えかねてその手を解き、後ろによろめくが、その瞬間、ジーゼルマッフルが長い足を思い切り翻して、ロームキンの顔を蹴り上げた!
「うわ!」
ガウ!
シバーがロームキンの片足に再び噛み付こうとするのを必死にロームキンが払いのける!
シュー!ボンボン!
天井からスパイダー達の襲撃が始まった!彼らはこの会議場の人間をすべて敵とみなした様だ。
ザザザーー!
壁から無数のムカデカメラたちが降りてきて、会議場の出口に向かって流れ出す!
「おい!女!ホールズ先生は知らないか!」
ゴルドンが電子砲の飛び交う中、ジーゼルマッフルに叫ぶ!
「先生は、非常出口とは反対の、あの、ムカデたちが向かった正規の通路に敵と出て行ったわ!あの通路はゲートや、他の会議場や、制御等ともつながっているからどこに行ったのかは皆目見当もつかない・・・あ!そうだわ!」
ジーゼルマッフルが、自らのコンビエンスを外し、ゴルドンの耳にそっとつけてやる。
「これで先生と、交信するのよ。あなたなら・・・できるでしょう?先生の、教え子でしょう?」
「お前はこれを使わなくていいのか?」
「わたしはあの非常出口から船に乗って先生と交信を試みるわ。頼んだわよ。」
ジーゼルは電子フェンシングを振りかざし、凄まじいスピードで電子弾を躱すと、シバーに合図を送る。
「シバー?!一緒にいらっしゃい!」
シバーは動く気配はない。
「わたしは、皇子と行動を共に致します。」
ジーゼル=マッフルは少しシバーと見つめあっていたがシバーの決意が固いと察すると、優しく微笑み、非常出口へ向かって駆けて行った。
「ロームキンに止めを刺さなくてもよいのですか?」
シバーの言葉に残りのスパイダーを片付けようと、ホイップを振り上げるゴルドンにが、その手を収める。
「そうか。こいつらの相手をしてくれる奴がいたんだよな。ロームキン、蜘蛛の相手を頼んだぜ。」
ゴルドンは、片足を引きずりながら、床を這い、赤い眼球でこちらを睨み付ける生物を一瞥すると、ホールズを探しに、出口へ飛び込んでいった!
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