栄養学の話⑨です。
五大栄養素の話、最後は「ミネラル」についてです。
食品表示をよく見ると、
ミネラルが含まれるものは数多くあります。
では、ミネラルを摂るメリットは何でしょうか?
細かく見ていくと、皆さんが思っている以上に
ミネラルの働きを知ることができると思います。
ミネラルの働きと代謝
私たちのカラダの96%は酸素・炭素・窒素・水素の4つで
構成されており、残りの4%に相当する元素を
「ミネラル(無機質)」と呼んでいます。
三大栄養素(糖質・脂質・たんぱく質)と比べると、
カラダに必要なミネラルは微量ですが、
カラダ作りや体調を維持するためには必要な栄養素です。
また、ミネラルは各組織で利用され、
尿中に排出されたり再利用されたりします。
そのため、毎日摂取する量はそれほど多く必要ありません。
代謝回転の時間や体内での利用量は、
ミネラルの種類によっても異なります。
ミネラルの種類
人間のカラダに必要とされるミネラルは16種類で、
これらを「必須ミネラル」と呼びます。
必須ミネラルは更に、
「主要ミネラル」と「微量ミネラル」に分けられます。
必須ミネラル |
カルシウム・リン・カリウム・硫黄 塩素・ナトリウム・マグネシウム |
微量ミネラル |
鉄・亜鉛・銅・マンガン・クロム ヨウ素・セレン・モリブデン・コバルト |
これら必須ミネラルのうち、塩素・硫黄・コバルト以外の
13種類については、厚生労働省「日本人の食事摂取基準」で摂取量の指標が定められています。
酸素を助ける「補酵素」=ビタミン・ミネラル
ミネラルとビタミンを合わせて「補酵素」といい、
カラダのアシスト役を担っています。
ミネラルが不足すると代謝が滞り、
体内の機能を十分に発揮できない状態になります。
★代謝を高める方法
・体温を上げるような運動
→気持ちよく汗をかく程度
・入浴や岩盤浴
これらのような行為は代謝を高めますが、
それと同時に発汗による
水分とミネラルの喪失が起こっています。
そのため、
こまめに水分とミネラルを補給することが大切です。
代謝力が上がるほど、補酵素の必要量は上がるので、
補給量を増やさなければなりません。
基本は毎日の食事バランスですが、
ミネラル不足になりがちな現代では、
安全で良質なサプリメントで補う工夫が必要です。
ミネラルの消化と吸収
体内に入った栄養素は互いに助け合っています。
ナトリウム 塩素 |
多くは食塩として摂取され ほぼ全量が吸収される |
カルシウム |
小腸で吸収される →ビタミンDが吸収を促進する リンの過剰摂取が吸収を抑制する |
鉄 |
肉や魚に多く含まれるヘム鉄が吸収されやすい ビタミンC→鉄の吸収を促進する |
サプリメントなどで1種類のミネラルだけを
過剰摂取すると、体内でのバランスを保てなくなります。
すると、
影響を受けたミネラルも欠乏状態になることがあります。
適切な量を摂取することが大切です!!
ミネラルが不足すると
ランナーは鉄やカルシウムがやや不足傾向にあります。
ミネラル |
役 割 |
鉄 |
・血液中に酸素を運ぶ ヘモグロビンを構成している成分 ・激しい運動による呼吸量の増加 →全身への酸素運搬量の増加 →鉄の必要量が増加 ・大量の発汗によって鉄が失われる→貧血 |
カルシウム |
・骨の形成が行われない →骨折・骨粗しょう症など |
マグネ シウム |
・筋肉を弛緩させる |
ナトリウム カリウム |
・お互いにバランスを取っている →体内の水分量を調節 血圧をコントロールする |
★運動中に足が攣りやすい人
カリウム・ナトリウム・マグネシウムのバランスが
崩れていると、足が攣りやすくなります。
同じミネラルですが、それぞれのバランスが崩れないよう、様々な食品をバランス良く摂取することが重要です。
特に重視したいミネラル
16種類ある必須ミネラルのうち、
ランナーにとって特に重要なのは、カルシウムと鉄です。
この2種類は、
普段の食事から摂取するのが難しいミネラルです。
また、不足が起こりやすいだけでなく、
体内での吸収率が悪く、
汗と一緒に失われやすい特徴があります。
カルシウムの必要性
体内のカルシウムの99%が、
骨や歯の形成に用いられています。
丈夫な骨を維持し、
疲労骨折・骨折などのケガを予防するためにも
カルシウムは必要です。
発汗量の多いランナーは特に、
汗によるカルシウムの損失量も含めて、
日頃からカルシウムを摂取しましょう。
ランナー以外にも、
成長期の子どもや女性はカルシウム不足の
影響が出やすいため、注意が必要です。
また、
残りの1%は筋肉の収縮や神経伝達の調整をしています。
カルシウムの摂取が足りずに、体内の濃度が低下すると、
痙攣・足の攣りなどを起こしやすくなります。
カルシウムと一緒に摂りたい栄養素&摂り方
キレート作用でカルシウムの吸収アップ |
★カルシウム+クエン酸 クエン酸と吸収率が低い栄養素と一緒に摂ると、 吸収しやすい状態に変化させる 「キレート作用」があります。 カルシウムを含む野菜や小魚などは、 レモン汁や酢などを活用した調理をしてみましょう。 【豊富な食品】レモン・グレープフルーツ・梅干し・酢など |
カルシウムの吸収を促し骨に沈着させる |
★カルシウム+ビタミンD 体内に入ったカルシウムはビタミンDの作用で吸収され、 骨に沈着します。 更にビタミンDは、 血液中のカルシウム濃度を調節するため、 筋肉の収縮を促します。 【豊富な食品】サケ・サンマ・しらす干し・干し椎茸など |
適度に摂ることでカルシウムの吸収率を高める |
★カルシウム+たんぱく質 たんぱく質は骨やコラーゲンの材料となるため、 カルシウムの骨沈着を助けます。 ただし、たんぱく質を大量に摂取すると、 カルシウム排泄量が増えるため注意が必要です。 【豊富な食品】鶏の手羽先・カレイなど |
★リンの過剰摂取には注意
リンはカルシウムと結び着くと、
リン酸カルシウムとして排泄されるため、
カルシウムが不足しやすくなります。
強い骨づくりやケガ予防のためには、
リンの摂取に注意が必要です。
【含まれている食品】
インスタントラーメン・ハム・ソーセージ
スナック菓子など
鉄の重要性
鉄は体内では肝臓や血液中に多く存在し、
持久力を支える栄養素として重要な働きをしています。
鉄はたんぱく質と結合して、
酸素を運ぶ役割を担うヘモグロビンの材料となります。
★鉄欠乏性貧血
鉄の不足により酸素の運搬がスムーズにできなくなるため、体力が低下します。
長距離の走り込む時期は特に、
汗から鉄が失われることが多くなります。
一般成人で必要な鉄の量が「7〜10.5mg」ですので、
その倍は摂取するようにしましょう。
また、女性は月経により鉄が不足しやすいので、
積極的に鉄の補給を行うことが大切です。
鉄と一緒に摂りたい栄養素&摂り方
鉄と結びついて腸からの吸収を促す |
★鉄+たんぱく質 たんぱく質は鉄とともに赤血球の材料となり、 血液を作ったり、 鉄と結びついて腸からの吸収を促進します。 特に、動物性食品(肉や魚)に含まれる 良質なたんぱく質は、たんぱく質を構成する 必須アミノ酸のバランスが整っていて、 栄養価が高いのが特徴です。 |
鉄の吸収を助け、貧血を防ぐ |
★鉄+ビタミンC 鉄には、赤身肉や魚に含まれ吸収されやすい「ヘム鉄」と、野菜や大豆製品などの植物性食品に含まれ、 吸収されにくい「非ヘム鉄」があります。 ビタミンCは非ヘム鉄の吸収を高めるため、 デザートにビタミンCの豊富な果物などを 摂ると良いでしょう。 |
調理や食事の一工夫
①.加熱調理する場合は、煮汁やゆで汁も活用する
鉄は水溶性なので、
調理法に寄っては栄養素が溶け出してしまいます。
アサリやシジミは味噌汁にしたり、
肉や魚は煮込みにしたりと、煮汁まで活用しましょう。
納豆などのそのまま食べられるものは、
損失なく摂取できるのでオススメです。
②.コーヒーや紅茶との食べ合わせはNG
コーヒーや紅茶、ブドウなどに含まれるタンニンという
苦み成分は、鉄の吸収を妨げる作用があります。
それ以外にも、食物繊維や豆類の皮に含まれる
フィチン酸なども、鉄の吸収を妨げるため、
組み合わせに注意が必要です。
カルシウムと鉄の摂取量の目安
健康維持・増進を目的として
1日に摂取したいカルシウム・鉄の量
|
鉄 |
カルシウム |
成人男性 |
7〜7.5mg |
650〜800mg |
成人女性 |
10.5mg |
650mg |
普通に生活している分には上記の摂取量で十分ですが、
ランナーは更に多くの量が必要です。
発汗によって損失量が増え、
骨・血液の代謝もランニング時には活発になるためです。
日頃からハードな練習をして、
長距離を走り込むランナーは、
上記の数字の2倍程度を目安にしましょう。
★現代人はミネラルバランスを崩しがち
ミネラルは他のミネラルとのバランスが大切で、
特定のミネラルが多くなるとカラダに害を及ぼします。
現代の食生活では、
ミネラルバランスが崩れがちと言われています。
例えば、どんな食品でも精製度の高い食品ほど、
ミネラルの含有量は減少します。
素は同じでも、玄米と白米、全粒粉と小麦粉では、
精製度の高い後者の方がミネラル分は少なくなります。
現代人は精製度の高い食品を多く摂っており、
ミネラル不足の原因となっています。
また、加工食品が普及しているのも原因の一つです。
加工食品は味が濃く、食塩(ナトリウム)が
多く使われています。
そのため、カルシウムやリンなど、
他のミネラルとのバランスが崩れてしまいます。
塩を選ぶ際は、
精製されたナトリウムが高い精製塩ではなく、
カルシウムやカリウム、その他微量ミネラルが
含有されている自然塩を選ぶようにしましょう。
ミネラルのイメージとして、
ナトリウムやマグネシウムは想像が付くと思いますが、
鉄やカルシウムまで含まれることは
あまり知られていないと思います。
他の栄養素も同様ですが、ミネラルは種類が多いため、
よりバランス良く食事に組み入れる必要があります。
これで五大栄養素の話は全て終わりになります。
次回以降、実際の食事や補食の摂り方に触れていきます。
次回:機能性成分の基礎知識
ホームページ
ホームページ
〒416-0902
静岡県富士市長通9-1 201号
ご予約・お問い合わせ
公式LINE