藤原有家 むら雲の【前編】 | わたる風よりにほふマルボロ

わたる風よりにほふマルボロ

美しい和歌に触れていただきたく。

*:..。o○ ○o。..:*

梶間和歌プロフィール小説

 

歌集『生殖の海』


歌をやり取りする

facebookグループ

 

和歌を学ぶ「歌塾」

個別動画視聴ページ

new基礎講座new

new初級講座new

*:..。o○ ○o。..:*

現代短歌新聞2021年4月号

作品掲載

 

new「源氏で紡ぐ和歌便り」

2021年10月分掲載new

*:..。o○ ○o。..:*

 

 

千五百番歌合に
 
むら雲のすぎのいほりのあれまより時雨にかはる夜はの月かげ
 
藤原有家
玉葉和歌集冬856(857)
 
 
 
【現代語訳】
 
一群のまとまった雲の過ぎ行く
杉の庵の荒れた隙間より
洩れ入る時雨の音に変わった、
先ごろまで洩れ入っていた
夜半の月光。
もう洩れてこない夜半の月光。
 
(訳:梶間和歌)

 

 

【本歌、参考歌、本説、語釈】

 

むら雲:群雲、または叢雲。

 集まりまとまっている雲のこと。

 

すぎのいほり:「杉の庵」に

 「むら雲の過ぎ」を掛けるか。

 

時雨にかはる夜はの月かげ:

 先ごろまでは夜半の月光が

 杉の庵の荒れ間より

 洩れ入っていたが、

 洩れ入るのが

 月光から時雨の音に

 変わった、ということを表す。

 
 
 

建仁元年(1201年)詠進、
建仁三年(1203年)成立の

「千五百番歌合」での詠。

 

 

「千五百番歌合」
九百二十六番左、
 
そちらでは
結句「よはの月かな」、
歌番号1850です。
 
番えられたのは家隆の
ひさぎおふるさほのかはらにたつ千鳥そらさへきよき月になくなり
千五百歌合冬二、1851
 
判者は藤原季経、
左歌、むら雲のすぎのいほりのあれまより時雨にかはるらん月、おもかげはべり
右歌、うたがらはいひなれて侍れども、さしたるふし侍らぬにや、左つよきにこそ
 
 
こういう事が
すぐに調べられるので、本当に、
『新編国歌大観』全10巻20冊の
物理的でないほうの重みに
しみじみします。
 
物理的にも重いですけれどね。
 

 

 

シェアハウス生活していた

2週間は

最低限の図書以外すべて

段ボールの彼方だったので、

 

第5巻歌合編なんて

開くこともできませんでした。

 

そのころ使えたのは

最も使用頻度の高い

第1巻勅撰集編のみ。

 

 

新居に入りようやく購入できた

ニトリの本棚を早く組み立て、

資料を使いやすい形に整えねば。

 

引っ越しとは……お金だけでなく

本当に労力が要りますね。

 

 

「資料」と打とうとして

「死霊」と予測変換されたなんて、

もちろんないしょです。

 

 
 
さて。
 
 
私の訳のポリシーについて、
以前どこかで述べましたが、
 
理解しやすさより
もとの歌の語順や文法に
なるべく忠実に訳すこと
 
を重視しています。
 
 
この歌の三句以降も、
理解しやすい形を取るならば
例えば
 
荒れた隙間より夜半の月光が洩れ入っていたのだが、
それがいつの間にか時雨の音に変わっていた。
荒れた隙間より夜半の月光が洩れ入っていたのだが、
いつの間にか時雨の音が洩れ入るほどに時間が経っていた。
 
などとしたでしょう。
 
 
だが、私はそれは
訳としての節度を
超えるか超えないか
ぎりぎりのところだ、と感じます。
 
 
 
長くなりますので、
続きはまた明日。
 
 
むら雲のすぎのいほりのあれまより時雨にかはる夜はの月かげ

 

 

この記事の

【前編】

【中編】

【後編】
 
 

*:..。o○ ○o。..:*

 

引っ越し祝いと生活費のご寄付を

募っております。

 

12月分のお家賃もおかげさまで

無事払い終えられました。

 

あなたの応援が

私の和歌仕事の質を

担保し、向上させます。

 

あくまでご無理のない範囲で、

ご検討よろしくお願いいたします。

*:..。o○ ○o。..:*

 

音符講座動画を個別購入する

 

和歌を読むための【基礎】クラス

 

和歌を詠むための【初級】クラス

 

 

音符梶間和歌歌集『生殖の海』 

 

 

 

音符『源氏物語』も梶間の和歌も

 楽しむ

 

 

音符和歌みくじで遊ぶ

友だち追加

 

 

音符梶間和歌の作品の掲載された

「現代短歌新聞」2021年4月号