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和歌を学ぶ「歌塾」
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作品掲載
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百首御歌の中に
神無月しぐれとびわけ行くかりのつばさふきほす峰のこがらし
後鳥羽院
玉葉和歌集冬844(845)
【現代語訳】
はや神無月、
時雨を分けるように
飛び行く雁の翼に吹き付け、
時雨に濡れそぼったその翼を
乾かしてしまう、
山の峰よりの木枯らしよ。
(訳:梶間和歌)
【本歌、参考歌、本説、語釈】
神無月:旧暦十月。
この月から冬という扱いになる。
しぐれ:晩秋から初冬にかけて
降ったり止んだりする冷たい雨
ふきほす:吹き干す。
吹いて乾かす。
こがらし:晩秋から冬にかけて
吹く強い風
『玉葉集』冬部11首目。
『新編国歌大観』の
『後鳥羽院御集』には
入っていない歌のようです。
愛読している
丸谷才一『後鳥羽院 第二版』や
このたび引っ越し祝いに
頂いた
寺島恒世『後鳥羽院和歌論』
にも見えません。
なので、初出などは
調べられていませんが、
『玉葉集』入集歌らしい
おおらかさを伴った端正な歌
という印象です。
これは
うまく言語化できる自信が
ありませんが……。
例えば、同じ
雨に濡れる雁の翼を詠んだ
歌として
後鳥羽院と同時代の定家にも
春の歌があります。
しもまよふ空にしをれしかりがねのかへるつばさに春雨ぞふる
藤原定家 新古今和歌集春上63
この定家詠のほうは、
さすがに新古今時代、
後鳥羽院詠と同じく
端正ではありますが
“おおらかさ”というより
“厳しさの奥にある優しさ”
のようなものを伴った
端正さかな、
という印象です。
歌に限らず、何かの印象を
正確に言語化するのは
とても難しい。
その困難で果てしない事を
それでもできるかぎり高い精度で
おこなおう、と努めるのが
私なりの言語芸術であり
言語芸術理解であり
人生なのですが、
まあ、本当に、
果てしないです……ね。
神無月しぐれとびわけ行くかりのつばさふきほす峰のこがらし