花園院 ゆふだちの | わたる風よりにほふマルボロ

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百首御歌の中に

ゆふだちの雲とびわくるしらさぎのつばさにかけてはるる日のかげ

花園院
風雅和歌集夏413(403)
 

 


【現代語訳】

夕立の雲を飛び、分けてゆく

白鷺。まるで

鷺の翼が夕立の雲を切り裂き

空を晴らしてゆくようだ。

その鷺の翼に降り注ぐ

太陽の光に

夕立明けの晴天が広がってゆく。

(訳:梶間和歌)
 
 

【本歌、参考歌、本説、語釈】

 

夕立の雲まの日かげ晴れそめて山のこなたをわたるしらさぎ
藤原定家 玉葉和歌集夏416


白雲をつばさにかけて行くかりの門田のおもの友したふなり

西行 新古今和歌集秋下502

 

秋風の袖に吹きまく峰の雲をつばさにかけてかりも鳴くなり

藤原家隆 新古今和歌集秋下506

 

とびわくるしらさぎ:

 分けて飛ぶ白鷺、

 分けて飛び進む白鷺、

 飛ぶことで(雲を)分けてゆく白鷺

 

はるる日のかげ:晴れる日の光

 

 

 

貞和2年(1346年)ごろ、

『風雅集』編纂のために

詠進された「貞和百首」の

花園院詠。

 

 

手元の『新編国歌大観』や

ウェブ上で検索したのですが、

「貞和百首」のまとまったものは

出てこず。

 

あまり研究の

進んでいない分野なのかしら。

ご存じの方がおられましたら

ぜひ教えてくださいね。

 

 

 

後期京極派の指導者である

花園院のさわやかな詠です。

 

名詞がやや多めということで

視点が散漫になるきらいも

あるにはありますが、

 

きちんとした観察と

安定的な韻律に助けられ、

アイテムの多さが

そこまで大きな傷にならず

まとまっている印象です。

 

 

ということは、ひるがえって

 

初心者は

一首中にあまりにも多くの名詞を

詰め込まないようにしましょう、

 

ということでもあります。

 

 

……「歌塾」の癖でしょうか、

ついこうして

初心者に避けてほしい歌の

詠み方の特徴に言及してしまう。

 

 

 

花園院詠に戻りましょう。

 

 

京極派の歌には

時間の経過をさりげなく的確に

詠み込んだものが多く、

 

それらの歌は結果的に

対比構造になりやすいです。

 

ビフォア・アフターの

特徴のひとつは

対比構造ですからね。

 

 

この歌の場合、

少し前の夕立雲の曇天と

現在広がり始めた晴天

の対比。

 

時間の経過の描写を伴う

対比です。

 

 

『古今集』のように

わかりやすく因果関係や

それを前提とした逆接を

示すようなことをしなくとも、

 

こうして確実に、淡々と

景を描写してゆけば

時間の流れてというものは

表せるのです。

 

それも、

因果関係を前面に出さないぶん

上品に

それが可能となるのですね。

 

しっかり見習いましょう。

 

 

ゆふだちの雲とびわくるしらさぎのつばさにかけてはるる日のかげ

 

 

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