小侍従 待つ宵に | わたる風よりにほふマルボロ

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題しらず

待つ宵(よひ)に更けゆく鐘の声聞けばあかぬわかれの鳥はものかは

小侍従
新古今和歌集恋三、1191

 


 
 
【口語訳】

これから逢う恋人を待つ宵と

恋人と別れねばならない朝と
どちらがあわれ深いものか、

と人は問う。
来るのか来ないのか

何も確かでないなかで
愛しい人をただ待つ宵の身に
響く鐘の音を聞けば、
いえ、場合によっては

もう二度と来ない

とわかっている人がそれでも

どうにも待たれてしまう夕暮れに
響く鐘の音を聞けば……、

そのせつなさを思えば、

やはり、明け方の鶏の声など

ものの数でもないでしょう。
それがたとえ飽かぬ別れ、

睦み合っても睦み足りない別れを
促すものだとしても、その鶏の声は
愛する人と確かに逢い、

愛し合った夜の終わりを

告げるものなのだから。

確かに、逢ったのだから。


(訳:梶間和歌)

 

 

【本歌、参考歌、本説、語釈】

 

うとまるる心しなくは時鳥あかぬ別れに今朝はなかまし

詠み人知らず 後撰和歌集夏174

 
待つ宵:恋人を待つ宵

 

鐘の声:鐘の響き

 

聞けば:聞くと

 

あかぬわかれ:

 どんなに愛し合っても

 満足できない別れ、

 後朝(きぬぎぬ)の別れ

 

ものかは:ものの数だろうか、

 言うほどのこともない。

 

 

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小侍従はこの歌により以後
「待宵の小侍従」と
呼ばれるようになった、と。

この時代の歌人にとり、
代表歌の語を冠して

呼ばれることは、何よりの名誉。
 
 
『平家物語』には、この歌に関して

こののちのやり取りがあります。

清盛主導の福原遷都ののち、

藤原実定が
旧都となった京の街で

中秋の名月を鑑賞。


小侍従は、実定の姉の屋敷に

仕えていたそうです。

 

実定がそこを去る際、
供をしていた藤原経尹に
小侍従に歌を詠んでやるよう

言ったと。

 

ものかはと君がいひけん鳥の音の今朝しもなどか悲しかるらん
経尹

返し

またばこそ深けゆく鐘もつらからめあかぬ別れの鳥の音ぞうき
小侍従

 

『平家物語』「月見」


【口語訳】

ものの数でもないと

あなたはかつて鶏の声を

言いましたね。その鳴き声が
どうして今朝はこんなにも

悲しく響くのでしょうね。

宵の鐘がつらく響くのは

人を待つからこそ。

それと比べたからこそ

鶏の声をものの数でもないと

言ったのですわ。
行く末の何ひとつわからぬ

今日の別れは
後朝の別れにも何にも勝る

「飽かぬ別れ」、
今朝の鶏の音ほど憂いものは

ありませんね。

 

 

待つ宵に更けゆく鐘の声聞けばあかぬわかれの鳥はものかは

 

 

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