困った。
憂鬱な要因はもうひとつ。自分は恐ろしく「
身重」だった。あとは日本に帰るだけと思っていたので、土産物満載のビニールバッグに、弦楽器まで運んでいた。
見るからに「出稼ぎアジア人の帰国風景」。ちなみに写真は、その時自分が途方に暮れながら抱え込んでいた
弦楽器だ。
試しに聞いてみた。
「アレッポに行くバスは通る?」
「インシャーアッラー」
「来なかったらどうすればいい?」
「誰かの車に乗せてもらう」
「・・・(できるかよ!!)」
治安のよいシリアとは言え、女の子(※当時20代前半)一人がヒッチハイクできるほどではない。ましてや国境、砂漠ロードだ。
「据え膳」以外の何者でもない。とりあえずトルコからの国際長距離バス、もしくは恰幅いいおばちゃんがいるファミリーカーを狙おうと決めた。
余談だが、女性一人旅で現地語ができる最大のメリットは、何かあった時に「おばちゃん」を頼れることだ。アラブの「おばちゃん」は強い。そして面倒見がいい。片言でいいので「おばちゃん」と自己紹介程度のアラビア語会話ができるようにしておくと、英語ぺらぺらの観光ゴロ男にひっかかるリスクが減るはず。
とはいうものの、適当な車はなかなか来なかった。
このまま日没になったら、それこそ神に祈るしかなくなるぞ。
・・・と焦る気持ちがピークに達した頃、
一台のバスが検問ゲートに近づいてきた。
ハムドリッラー!(神に感謝!)
トルコのアンタキアからやってきたバスでアレッポに向かうと言う。車掌さんに事情を説明すると、あっさり「空いている席があるからいいよ」。しかも「金はいらない」「アレッポについたらバス会社のオフィスに行ってみろ。チケットを再発行してくれるかもしれない」と親切なアドバイスまでくれた。
砂漠の真ん中の入管ゲートで突如乗り込んできたアジア人の女の子に乗客は不思議そうだったが、事情を話すと、役所の場所など、いろいろ教えてくれた。
+ + +
いい事と悪い事は、いつも同じだけやってくる 。
幸運が続けば、トラブルに襲われる。でも悪いことばかり続くということもない。
最後はちゃんとバランスがとれているはずだから、安心していい。
・・・そんな風に考えられるようになったのは、思えばあの頃だったのかもしれない。
>>続く