2007年10月14日。
この日、五週にわたって戦われた我々の本年度リーグ戦が、ついに幕を閉じた。
今、私は例年の如く、ある種の虚脱感に襲われているのである。
リーグ戦は、我々弓道部員にとって、一年の総決算である。
リーグ戦に優勝して、その先にある王座決定戦の出場権を獲得し、そして、王座を奪還することが、我等弓道部の悲願であり、目標なのである。
我々が、遊ぶ間もなく一年間ひたすら稽古をしているのは、一重にこのリーグ戦に勝つためなのである。我々が、授業が終わったら喫茶店なんぞには脇目もふらず道場に直行早歩きなのは、そのためなのである。我々がリーグ戦期間中、本キャンで浮きまくるのもいとわず学ランで生活しているのも、そのためなのである。下級生諸君が、毎晩親指をヒリヒリさせながら的張りをするのもそのためだし、気合いを入れすぎて失神するほどの天晴れな心意気で鳴き看をするのもそのためである。日大の部員達がボコボコにされながらそれでも弓を引くのもそのためだし、法政の部員達が丸坊主になりながら弓を引くのもそのため、また慶應の部員達がジャングルを踊りながらそれでも弓のことを忘れないのもそのためである。
リーグ戦というものは、我等学生弓道人が青春の血肉を捧げて戦う、中りか外れか、英雄か戦犯か、勝つか負けるかを懸けた、本気と本気の大勝負、意気地と意気地のぶつかりあい、全身全霊を以てぶちあたるに足る、正真正銘の大舞台なのである。
一人ニ十射計八名、合計百六十射の総的中を競い合うリーグ戦は、百六十射という矢数の多い勝負でありながら、しかし、白熱の大接戦をしばしば演出する。一本差で勝負がつく試合、二本差、三本差の試合、あるいは、同中で一手競射にもつれこむ試合さえ、実力拮抗のリーグにおいては珍しいものではないのだ。
的中の度に、絶叫に近い大音声を上げて応援をする男たちを、皆さんは見たことがあるだろうか。手が真っ赤に腫れるほど拍手をする大学生達を、皆さんは見たことがあるだろうか。接戦に敗北し、号泣する大の男達を、見たことがあるだろうか。
選手は、心臓がギュッと握られるような緊迫感の中、ただただ今まで己が磨いてきた技術を出しきることに全精力を傾注する。手伝いは、チームを勝ちに導くために全速力で走り回り、気力をサポートに集中する。
リーグ戦を戦う者達の顔は、敵も味方も、選手も応援も、先輩も、同期も、後輩も皆、血走るほどに真剣である。
正選手のほとんどが的中率九割超の射手ばかりである都学一部リーグにおいて、学生時代の全てを弓に捧げている者達が、勝敗を分ける一矢を必ずや的に叩き込むと決意して弓を引くとき、その射が如何に凄絶なものとなるか、それは、我々のリーグ戦を実際に目のあたりにした者以外には、判るべくもないことであろう。
…とまあ、そんぐらいすげぇリーグ戦を一ヶ月以上戦って、我が部は二勝二敗で都学一部リーグ第三位、ニ部リーグに落ちる心配はもちろんないが、しかし王座に出場することもできない、という順位で本年度のリーグ戦を終えるに至ったのである。
そんなわけで、心身共に、特に心の方を擦り減らしながら戦ってきたリーグ戦が終わったと思ったら、私は突然それまで張り詰めていたものが急激に弛緩し、先に述べたような虚脱状態に陥ってしまったわけなのである。
お陰で、昨日は華やかな本キャンで授業だというのに、ヒゲは一週間生やしっぱなしのボーボー状態、寝癖も天を衝くが如くにぼっさぼさ、しかももう制服で登校する必要はないというのに、私服を選ぶのがめんどいので結局制服で登校するという一人羞恥プレイを展開したのであった。
本キャンの奴らのあのいぶかしげな目。教室に入った時に私に向けられる好奇の視線。
「…え?なにアレ。高校生?え?でもなんかすごいヒゲなんだけど。ていうかあれ学生なの?変な人じゃないの?まじひくんですけどぉー」
という声が聴こえてくるようです。
…けっ!ざけんな!!このチャラ学生共が!!!チャラ男チャラ子めじろおしの淫乱軍団が!!!
てめぇらにはわかるめぇ!!この無精ヒゲの陰にどんなドラマが隠されているのか!この制服と、どんな熱戦を共にしてきたか!!
てめぇらみてぇな奴らにわかってほしいとも思わねぇけどな!!ばーかばーか、でーぶ、ぶーす、うーんこうーんこ。
でも、わかってくれる女の子募集中です!!
いや、というかわかってくれなくてもいいから僕の彼女になってくれる女の子、募集中です!!!
この日、五週にわたって戦われた我々の本年度リーグ戦が、ついに幕を閉じた。
今、私は例年の如く、ある種の虚脱感に襲われているのである。
リーグ戦は、我々弓道部員にとって、一年の総決算である。
リーグ戦に優勝して、その先にある王座決定戦の出場権を獲得し、そして、王座を奪還することが、我等弓道部の悲願であり、目標なのである。
我々が、遊ぶ間もなく一年間ひたすら稽古をしているのは、一重にこのリーグ戦に勝つためなのである。我々が、授業が終わったら喫茶店なんぞには脇目もふらず道場に直行早歩きなのは、そのためなのである。我々がリーグ戦期間中、本キャンで浮きまくるのもいとわず学ランで生活しているのも、そのためなのである。下級生諸君が、毎晩親指をヒリヒリさせながら的張りをするのもそのためだし、気合いを入れすぎて失神するほどの天晴れな心意気で鳴き看をするのもそのためである。日大の部員達がボコボコにされながらそれでも弓を引くのもそのためだし、法政の部員達が丸坊主になりながら弓を引くのもそのため、また慶應の部員達がジャングルを踊りながらそれでも弓のことを忘れないのもそのためである。
リーグ戦というものは、我等学生弓道人が青春の血肉を捧げて戦う、中りか外れか、英雄か戦犯か、勝つか負けるかを懸けた、本気と本気の大勝負、意気地と意気地のぶつかりあい、全身全霊を以てぶちあたるに足る、正真正銘の大舞台なのである。
一人ニ十射計八名、合計百六十射の総的中を競い合うリーグ戦は、百六十射という矢数の多い勝負でありながら、しかし、白熱の大接戦をしばしば演出する。一本差で勝負がつく試合、二本差、三本差の試合、あるいは、同中で一手競射にもつれこむ試合さえ、実力拮抗のリーグにおいては珍しいものではないのだ。
的中の度に、絶叫に近い大音声を上げて応援をする男たちを、皆さんは見たことがあるだろうか。手が真っ赤に腫れるほど拍手をする大学生達を、皆さんは見たことがあるだろうか。接戦に敗北し、号泣する大の男達を、見たことがあるだろうか。
選手は、心臓がギュッと握られるような緊迫感の中、ただただ今まで己が磨いてきた技術を出しきることに全精力を傾注する。手伝いは、チームを勝ちに導くために全速力で走り回り、気力をサポートに集中する。
リーグ戦を戦う者達の顔は、敵も味方も、選手も応援も、先輩も、同期も、後輩も皆、血走るほどに真剣である。
正選手のほとんどが的中率九割超の射手ばかりである都学一部リーグにおいて、学生時代の全てを弓に捧げている者達が、勝敗を分ける一矢を必ずや的に叩き込むと決意して弓を引くとき、その射が如何に凄絶なものとなるか、それは、我々のリーグ戦を実際に目のあたりにした者以外には、判るべくもないことであろう。
…とまあ、そんぐらいすげぇリーグ戦を一ヶ月以上戦って、我が部は二勝二敗で都学一部リーグ第三位、ニ部リーグに落ちる心配はもちろんないが、しかし王座に出場することもできない、という順位で本年度のリーグ戦を終えるに至ったのである。
そんなわけで、心身共に、特に心の方を擦り減らしながら戦ってきたリーグ戦が終わったと思ったら、私は突然それまで張り詰めていたものが急激に弛緩し、先に述べたような虚脱状態に陥ってしまったわけなのである。
お陰で、昨日は華やかな本キャンで授業だというのに、ヒゲは一週間生やしっぱなしのボーボー状態、寝癖も天を衝くが如くにぼっさぼさ、しかももう制服で登校する必要はないというのに、私服を選ぶのがめんどいので結局制服で登校するという一人羞恥プレイを展開したのであった。
本キャンの奴らのあのいぶかしげな目。教室に入った時に私に向けられる好奇の視線。
「…え?なにアレ。高校生?え?でもなんかすごいヒゲなんだけど。ていうかあれ学生なの?変な人じゃないの?まじひくんですけどぉー」
という声が聴こえてくるようです。
…けっ!ざけんな!!このチャラ学生共が!!!チャラ男チャラ子めじろおしの淫乱軍団が!!!
てめぇらにはわかるめぇ!!この無精ヒゲの陰にどんなドラマが隠されているのか!この制服と、どんな熱戦を共にしてきたか!!
てめぇらみてぇな奴らにわかってほしいとも思わねぇけどな!!ばーかばーか、でーぶ、ぶーす、うーんこうーんこ。
でも、わかってくれる女の子募集中です!!
いや、というかわかってくれなくてもいいから僕の彼女になってくれる女の子、募集中です!!!