AKB48と乃木坂46のオーディション戦略:AKB17期生と乃木坂5期生の比較 | 平山朝治のブログ

平山朝治のブログ

ブログの説明を入力します。

 

柏木由紀が卒業発表した直後、2023年10月22日に、AKB48(以下、AKBとする)は19期生オーディション開催決定を公にした。新型コロナ蔓延後、最初に行われたメジャーな女性アイドルのオーディションは乃木坂46(以下、乃木坂とする)の5期生オーディションで11人が合格し、それに続いてAKBは17期生オーディションを行って同じく11人が合格した。乃木坂6期生のオーディションが告知される前にAKBはさらに18期生オーディションを実施したにとどまらず、19期生オーディションまで開催を決定した背景には、どのような事情があるのだろうか?

 

AKBは都道府県ごとに1人、合計47人を定員とするチーム8の活動休止をきっかけとしてA, K, B, 4, 8の5チーム制そのものを休止したのであるから、多すぎるメンバーを減らそうとしていることは間違いなく*、そのことと、乃木坂のオーディションがない間に3回もオーディションを行うこととは、一見した限り矛盾する。このことをどのように理解したらよいのだろうか?

*柏木由紀が今年35人めの卒業発表だった(https://mdpr.jp/news/4009337)。

 

 

直近のオーディション事情にとらわれずに考えるため、AKBと乃木坂の過去のオーディションを全て列挙してみよう。

 

AKBオーディション            

1期生 2005.10 最終審査

2期生 2006.2 同 

3期生 2006.12 同

4期生 2007.5 同

5期生 2007.10 同

6期生 2008.3 発表

7期生 2008.12 最終審査

8期生 2009.5 発表

9期生 2009.9 最終審査

10期生 2010.3 最終審査

11期生 2010.7 最終審査

12期生 2011.4 合格発表

13期生 2011.12 お披露目

14期生 2012.7 お披露目

15期生 2013.1 最終審査

ドラフト1期生 2013.11 開催

チーム8全国一斉 2014.4お披露目

ドラフト2期生 2015.5 開催

16期生 2016.10 仮研究生発表

ドラフト3期生 2018.1 開催

17期生 2022.5 お披露目

18期生 2023.4 お披露目

チーム8欠員補充 随時

https://48pedia.org/AKB48のオーディション

https://48pedia.org/AKB48_Team8_全国一斉オーディション

 

乃木坂オーディション

1期生 2011.8 お披露目

2期生 2013.3 合格発表

3期生 2018.9 お披露目

4期生 2019.11 配属、2020.2 追加配属(坂道合同オーディション)

5期生 2022.2 合格発表

https://48pedia.org/乃木坂46のオーディション

 

これをみてわかるように、AKBは1期からチーム8全国一斉まで、半年に1度程度オーディションを行なっていたが、その後、1年、約1年半、1年3ヶ月、4年余と間隔がしだいに長くなってきた。もともとAKBは48にちなんで48人程度のグループでやっていくと秋元康は考えていたが、トヨタのサポートで定員47人のチーム8ができたため、新規オーディションを抑制してきた。チーム8休止とともにメンバーも全員卒業するわけではなく、旧チーム8のメンバーは卒業しても単に欠員補充されない*だけで、旧チーム8のメンバーは他の旧チームのメンバーと同じような頻度で劇場公演にでるのであるから、むしろメンバーが多すぎる状態がしばらくの間続く**ことになり、当面のあいだオーディションをさらに抑制しなければならないはずなのではないのか?

*2020年以降、欠員補充はなかった。

**チーム制休止が発表された2023年4月29日のコンサートに参加したメンバーは84人だった。

 

トヨタのサポート終了は2021年3月であり、17期生応募期間は2021年12月15日 から2022年2月7日だったので、チーム8が財政的基盤を失って欠員補充をやめ、独自の活動もできないため廃止せざるを得なかったことを織り込み済みで17期生11人の合格が決まっていたはずであるから、1年も間隔を開けずに18期生募集に踏み切ったのは、乃木坂5期生と同じ人数の17期生の質が運営の期待を裏切ったためとしか考えようがない。歯に絹を着せずに言えば、個別ミーグリ全完売が11人中9人という超売れっ子集団である乃木坂5期生と雲泥の差があった。2023年9月27日に発売されたAKB62ndシングル『アイドルなんかじゃなかったら』OficialShop盤第6販売1次受付前におけるの完売状況は下表【( )は残りわずかの枠数】のようになり、

 

17期生(=研究生、長谷川は2022年8月に活動辞退)で最も売れ行きがよい橋本恵里子が第5販売終了時点で19/66なのに対し、同年8月23日に発売された乃木坂33rdシングル『おひとりさま天国』の個別ミーグリを3次抽選までに全完売(30/30)した5期生は10人(岡本姫奈は休業のため33rdミーグリ不参加、2023年10月11日に復帰)中8人、6次抽選までに全完売したのは9人である(下表)。

 

出所:

 

上表右枠外の、n(m)は、その行のメンバーがn次抽選で完売し、直前のn-1次抽選でm枠売れ残っていた、という意味であり、nが小さいほど、nが同じならmが小さいほど売れ行きがよい。その右の丸数字はn(m)による順位である。

 

このように、乃木坂5期生と比較すると、同じ11人合格の17期生は明らかに見劣りがする。AKBのなかでメンバーを完売枠数(i/jのi)によって順位付けすると、橋本は11位で10位以内に17期生はいないが、乃木坂5期生のn(m)による順位では2位、3位、4位、4位、7位、8位、9位と、ベストテンに7人入っている。

 

それだけでなく、AKB全体で第5販売までに全完売できたのは、卒業する岡田梨奈、山邊歩夢、湯本亜美(いずれも*1/*1)を除くと、村山彩希、小栗有以、本田仁美(いずれも66/66)、柏木由紀(60/60)の4人だけであり、そのうち卒業発表済みの本田柏木を除いた村山、小栗と、64/66の倉野尾成美の3人しか、かつて公式ライバルとされた乃木坂の5期生全完売9人に遜色ないメンバーはいない。したがって、AKB全体を視野に入れても乃木坂5期生ほど売れていないことになる。

 

AKB18期生オーディション4次審査合否発表のあと、応募しなかった人と3次審査で落ちた人が応募できる18期生オーディション ”THE LAST CHALLENGE”が募集され、ショールーム配信審査合格の19人が4次審査に進み、18期の最終合格者は8人だった。

 

このことから、18期生に当初応募した人たちのレベルが運営の予想外に低かったらしいことが読み取れるが、最終合格者のレベルもそれほど高くなかったため、さらに19期生を募集することになったというのが真相ではなかろうか。

 

18期と19期の間に、乃木坂の公式ライバル、僕が見たかった青空(僕青とする)のオーディションがあり、2023年6月に合格した1期生23人がお披露目された。しかし、デビュー曲の売り上げは芳しくなく、乃木坂、櫻坂、日向坂の足元にも及ばなかっただけでなく、初週売り上げはAKBグループのなかで最下位のNGTの半分以下だった(『48グループ・坂道シリーズ・僕青 シングル初動売上枚数推移」』)。

 

乃木坂5期生オーディションのあと、秋元康がかかわっている、東京が本拠地のものだけで、日向坂4期生(2022年9月合格発表)櫻坂3期生(2023年1月合格発表)、僕青(2023年6月合格発表)、WHITE SCORPION(2013年10月合格発表)が有望なアイドル志願者を多く拾っていることや、乃木坂日向坂櫻坂に入れなければアイドルにならないという人も少なくないだろうし、遠からず乃木坂の6期生募集があると期待されていることから、AKB19期生オーディション応募者の質もあまり高くないだろうことはほぼ確実ではなかろうか?

 

19期生オーディションの結果がこのような予想の通りになるとすれば、AKBはメンバーの質の低下と人数の過剰とをかかえて苦しむことになりそうだ。首都圏には乃木坂、日向坂、櫻坂、ハロプロなどがあるので、中京圏や関西圏の女性アイドルグループとしてダントツのSKEやNMB*と比べてAKBは人材を集めにくいとも思われ、地の利を生かしたSKEやNMBにも及ばないということになるかもしれない。

*NMBよりもSKEのほうがシングルの売り上げが多い傾向がみられる(『48グループ・坂道シリーズ・僕青 シングル初動売上枚数推移」』)。それは、他の48グループのメンバーと比べてSKEのメンバーは総選挙の順位が実人気よりも高くなり、NMBのメンバーは低くなる傾向がみられた(『“選挙に強いSKE”はホント!? ~ビッグデータで読む「AKB総選挙」~』)のと同様、実人気が同じ程度のメンバーについてみると、個別ミーグリつきCDの売り上げがSKEメンバーのほうがNMBメンバーよりも多くなる傾向があるためだろう。名古屋は見栄を張りがちなので財布の紐が緩く、商都大阪は財布の紐が堅いという地域文化の違いがSKEとNMBの総選挙順位や個別ミーグリつきCDの売り上げにも反映しているらしい。