AKB最後の大物にして生き字引・柏木由紀 | 平山朝治のブログ

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私はかつて、AKB(AKB48、SKE48、NMB48、HKT48、NGT48、STU48からなる国内AKBグループ)の時代区分を

(1)草創期(2005〜2007年)

(2)大島優子・前田敦子・高橋みなみ時代(総選挙興隆期 2008〜2012年)

(3)高橋みなみ・指原莉乃・渡辺麻友時代(総選挙全盛期 2013〜2014年)

(4)山本彩・横山由依時代(総選挙低迷期 2015年~2018年)

とした(「AKBレインボー経済」)が、2019年以降総選挙は行われていない。したがって、(5)2019年以降の時期はポスト総選挙期ということになるが、その時期のAKBを代表するメンバーは、2023年10月20日に卒業を発表した柏木由紀であり、

(5)柏木由紀時代(ポスト総選挙期 2019〜2023年)

ということになるだろう。

 

AKBで(4)期に人気トップを争ってきたメンバーが次々と卒業や活動休止をしたのは、2018年秋から2019年春だった。まず、最後となった第10回選抜総選挙では3位だったが参加者のなかでは実人気は1位だろうとされていた宮脇咲良が、2018年10月からHKT48の活動を休止してIZ*ONEに参加した。同年11月には実人気1位だった山本彩がNMB48を卒業した。そして、第5回と第7〜9回総選挙1位だった指原莉乃が2019年4月に卒業した。その結果残ったメンバーのうち、実人気よりも総選挙得票順位が大きく上回る傾向のあるSKE48の松井珠理奈や須田亜香里らを除けば、AKB48の岡田奈々と横山由依やNMB48の吉田朱里と並んで最も人気があったと思われるのが柏木であり*、AKBの顔はそのなかで最年長かつ在籍期間も最長の柏木ということになる。

*選抜総選挙と違って1人1票制で実人気を強く反映しているNHKの夢の紅白選抜(2016年12月31日放映)では、9位の柏木より順位が高く、2019年に在籍していたメンバーは横山と吉田のみであり、紅白選抜で32位だった岡田の人気はその後急上昇したらしく、2018年の選抜総選挙では5位岡田、6位横山、14位吉田だった。

 

柏木の人気の特徴は、指原と比較することによって解明することができるだろう。総選挙直後、文春砲に被弾するという共通点がふたりにはみられるからである。

 

       柏木由紀   /指原莉乃

①2009 9位   1,920票/27位   1,170票

②2010 8位  15,466票/19位   6,704票

③2011 3位  74,252票/9位  45,227票 

④2012 3位  71,076 票/4位  67,339票 

⑤2013 4位  96,905票/1位 150,570票 

⑥2014 3位 104,364票/2位 141,954票 

⑦2015 2位 167,183票 /1位 194,049票 

⑧2016 5位   92,110票/1位 243,011票 

N2016 9位     9,220票/2位   34,247票 

⑨2017 不参加     /1位 246,376票 

 

①〜⑨は選抜総選挙

NはAKB48夢の紅白選抜 

 

指原は、2012年の第4回総選挙で4位になった直後、文春砲に被弾し、若い男性ファンの多くが離れたと思われれるが、異性スキャンダルに寛容で資金力のある中高年男性ファンを新たに獲得して、翌2013年第5回で1位を勝ち取った。第6回こそ中国から大量の組織票が投ぜられた渡辺麻友に1位を明け渡したが、2015〜7年第7〜9回では、自宅を売ったり保険を解約するなどして大量票を投じた指原会の中高年男性の力で3連覇を果たした。

 

他方、柏木は2015年第7回総選挙で2位になった直後にジャニーズの手越祐也との文春砲を喰らい、翌2016年第8回総選挙では5位になった。得票数は第7回167,183、第8回92,110と大きく落としている。指原の得票は第4回67,339から第5回150,570へと文春砲の結果倍増以上の伸びを示したのに対し、柏木の第7回から第8回への推移は半減に近い(約55パーセント)というように、異性スキャンダルと得票変化との関係が正反対である。

 

指原のスキャダルは無名時代のもので、相手も一般人であったのに対し、柏木のスキャンダルはすでに人気知名度ともにAKBのなかで五本の指に入るようになっていたころの、ジャニーズの人気メンバーとのものであり、ファンの間でのショックが指原と比べて途方もなく大きかったものと思われる。峯岸みなみの丸坊主会見以降AKBには恋愛禁止ルールがなくなり、柏木は何の処分も受けていなかった(指原のスキャンダルはそれ以前であり、HKT48への「左遷」を多くのファンは処分だとみていた)にもかかわらず、多くのファンは柏木から離れた。

 

ファンの減少を埋め合わせるには指原のように中高年男性を新たにファンにする必要があるのだが、多くの中高年男性が指原ファンとなった直後に二匹目のドジョウを狙うことになってしまったため、スキャンダルによるファン減少をほとんど埋め合わせられず、大きく順位を下げたものと思われる。柏木は指原やSKEメンバーと同様、総選挙順位が実人気順位よりも高くなる傾向があるので、1人1票のNHK夢の紅白選抜の順位が第8回総選挙の5位よりも低い9位となっているのであって、⑧とNとの間に人気が急落したわけではない。

 

柏木は第9回以降総選挙には参加しなくなったが、手越(文春砲)を越えて第8回総選挙でも柏木を支持したコアなファンがその後の彼女を支え続けたものと思われる。2019年以降が柏木時代となったのは、絶頂期と比べて人気が半減したにもかかわらず、柏木を明らかに超える人気や知名度を備えたメンバーがAKBにはあらわれず、それに対して公式ライバルの乃木坂46においては同時期の柏木よりも人気のある白石麻衣や西野七瀬がツートップとして君臨し、齋藤飛鳥が続いた。かくして、柏木時代のAKBは乃木坂に追いつかれ、追い越され、差が広がる一方のまま、柏木の卒業に至った。

 

そうなった責任は柏木にはなく、彼女を超える若手トップアイドルが乃木坂に現れたがAKBには現れなかったということを意味しているにすぎない。

 

柏木は2005年10月のAKB48創設時、最初のオーデイションで最終審査まで残ったが、最終面接の日に父親が反対したため上京できなくなって辞退し(『duet』2009年6月号「4年前のチームAのオーディションにも応募したんです」)、翌年暮れに合格して3期生(チームB候補生)となり、最初のオーディション以降のAKB48を知っている(父親の反対がなければ前田敦子らと一緒に創設メンバーとなっていただろう)のみならず、AKB48のブレイクも、人気絶頂期も、その主要メンバーとして貢献し、文春砲対応こそ指原の二匹目のドジョウ狙いになってしまったためプラスの成果を得られなかったものの、コアなファンを得てその後も人気を保ち続け、NGT48にも創設時からかかわり、兼任メンバーとなって、AKBの退潮を決定づけた山口真帆暴行事件をめぐる混乱の渦中に身を置き、最後の大物メンバーとして30歳を超えてもAKB48に在籍し続けた。

 

柏木由紀はAKBの生き字引と呼ぶに相応しい。彼女がいなくなった後のAKBはどうなるのだろうか?