NHKや日テレによると、
アメリカは、4日、トランプ大統領が表明した、ペルシャ湾内の船舶を誘導しホルムズ海峡を通過させるための取り組み「プロジェクト・フリーダム」を開始しました。
アメリカ中央軍はこの日、その第1弾として、「アメリカ船籍の商船2隻が通過に成功し、安全に航行を続けている」と発表しました。
これに対しイランの革命防衛隊とつながりのある「タスニム通信」は4日、革命防衛隊の声明としてアメリカ側が発表した商船の通過を否定したほか、国営メディアはイラン軍がホルムズ海峡付近を航行するアメリカ軍の駆逐艦に対し、巡航ミサイルや無人機などによる威嚇射撃を行ったと伝えました[i]。
イランのファルス通信は4日、イラン軍がホルムズ海峡近くで警告を無視したアメリカ海軍の艦船を攻撃し、「ミサイル2発を命中させた」と伝えました。艦船はその後、引き返したとしています。またロイター通信によりますと、イラン高官は、「ホルムズ海峡への侵入を阻止するため、警告射撃を行った」と述べています。
一方、アメリカ中央軍は、「攻撃を受けた事実はない」と全面的に否定しました。その上で4日から始まった、海峡に足止めされている船舶を、アメリカ軍が退避させる計画「プロジェクト・フリーダム」が進行中であると述べていて、双方の主張が食い違っています[ii]。
これらを合わせると、プロジェクト・フリーダムの第一弾として米船籍商船2隻がホルムズ海峡を通過する際、革命防衛隊は護衛の米艦艇にミサイル2発を命中させて退けたとタスニム通信は伝えたが、米中央軍はそれを全面的に否定し、イラン高官は攻撃ではなく警告射撃だったとしたらしい。
このことから、革命防衛隊は米艦艇にミサイルを命中させることはできず、攻撃は政府の預かり知らぬものだったためイラン高官は警告射撃だったと弁解し、米商船2隻は無事ホルムズ海峡を通過したと推測できる。
さらに、NHKによると、
船舶に対する攻撃の情報も相次ぎ、UAEの外務省は4日、ホルムズ海峡を航行していた石油会社のタンカーが無人機2機による攻撃を受けたと発表しました。
また韓国外務省は、日本時間の4日午後8時半すぎ、韓国の企業が運航する船舶がホルムズ海峡のUAE沖で停泊していた際に、爆発と火災が発生したと明らかにしました。
これについてトランプ大統領はSNSに「イランが、関係のない国々に対して攻撃を行った。韓国の貨物船も含まれている」と投稿し、「韓国は今こそこの任務に参加する時だ」と主張しました。
同じ投稿で、トランプ大統領は、イランの小型船7隻を撃沈したことを明らかにしています。
攻撃は湾岸諸国にも及び、UAEの首長国のひとつ、フジャイラの当局は4日、イランからの無人機攻撃によって石油施設で大規模な火災が発生し、3人がけがをしたと発表しました。
先月上旬にアメリカとイランが停戦合意に至って以降、イランからの攻撃でこうした被害が出るのは初めてとみられます。
一方、イランの国営メディアは4日、「イランとしてUAEを標的にするつもりはない」とする軍高官の話を伝えました。
このほかオマーンの国営通信もこの日、ホルムズ海峡に面しUAEに隣接するオマーンの飛び地で住宅が攻撃を受け、2人がけがをしたほか、付近の車や住宅にも被害が出ていると伝えました[iii]。
タンカー、韓国の貨物船、UAEフジャイラの石油施設やオーマンの飛び地の住宅に対する攻撃もイラン政府の方針に反して革命防衛隊が行ったものであろう。
イラン政府が米国主導のプロジェクト・フリーダムに対する革命防衛隊の武力攻撃や中東諸国への攻撃に距離をとっているらしいのは、トランプ大統領訪中が迫るなか、米国が中国にプロジェクト・フリーダムへの協力を働きかけているためと思われる。
アメリカのベッセント財務長官は4日、FOXニュースの番組に出演し、今月中旬に予定されている米中首脳会談についてイラン情勢が議題の1つになるとしたうえで、「トランプ大統領はこれまでにも習近平国家主席と、電話などを通じてイランについてやり取りしてきた。中国がイランに対し、外交的な働きかけを強め、海峡を開放させられるかみてみよう」と述べました。
また、「中国はイランという最大のテロ支援国家を資金面で支えている」と述べたうえで、ペルシャ湾内に足止めされている船舶を誘導し、ホルムズ海峡を通過させるための取り組みについて、「中国にこの国際的な作戦を支持するよう強く求めたい」と述べました[iv]。
フランスのジャンノエル・バロ外相も4月27日、「『イランの政権が大幅な譲歩とその立場の根本的な転換に同意しない限り、この危機に持続的な解決策はない』と述べ、またイランが『地域内での平和共存の道を示し、国民が自由に自分たちの未来を築けるようにする』必要があると述べた。[v]」このように、4月末ころから米軍のホルムズ海峡逆封鎖がしだいに功を奏し始め、フランスや中国の影響によって、イラン政府と革命防衛軍の間に亀裂が生じはじめており、プロジェクト・フリーダムはそれを顕在化させたように思われる。
5月1日には、
イランのペゼシキアン大統領とガリバフ国会議長は、アラグチ外相の外交の進め方、特に核交渉の進行方法に不満を表明し、彼の解任を要求したと、イラン海外メディアのイランインターナショナル(Iran International)が2人の情報筋を引用して報じた[vi]。
外相解任要求をとりあげた日本の大手メディアとしては5月2日に報道した読売[vii]があり、駐日イラン大使館は「読売のこのレポートのすべては根拠のないものであり、それは、明らかに馴染みのない、深刻な欠陥を抱えた情報源に読売が依存していることに由来しています。」[viii]とコメントした。大使館は外相の管轄下にあり、アラグチ外相は革命防衛隊の支持のもとで活動しており、最高権力者であるモジタバ師は革命防衛隊の庇護下にあって意識不明とも重症で意思決定困難とも言われているので、大統領や国会議長が解任を要求したのが事実だとしてもアラグチ外相と革命防衛隊が握りつぶし、フェイクニュースだと主張できると思われる。読売記事は末尾で「イラン当局は反応していない。」と記し、イラン政府内部には外相解任を要求する勢力があることを否定できない事情があることを示唆したが、日本の大手マスコミが報じたため、外相が大使館にxポストさせたと思われる。
核交渉はホルムズ海峡開放後とする革命防衛隊やアラグチ外相はプロジェクト・フリーダムによって土壇場に追い詰められたと言えるだろう。
4月8日の停戦後、とりわけホルムズ海峡逆封鎖以降、米国の対イラン戦略は合理的かつ効果的なものになってきたのではあるまいか?
[i] 「米船籍の商船“ホルムズ通過”イラン反発 情勢は急速に緊迫化」『NHKニュース』2026年5月5日5:45(2026年5月5日7:39更新)、https://news.web.nhk/newsweb/na/na-k10015114601000。
[ii] 「イラン軍が米軍艦に「ミサイル2発を命中」ファルス通信報じる 米中央軍は否定」『日テレNEWS』2026年5月4日 21:46、https://news.ntv.co.jp/category/international/3831bd01a1d546568f9ec694ef21ae14。
[iii] 注[i] と同じ。
[iv] 注[i] と同じ。
[v] 「仏外相、中東危機終結にはイランの『大幅な譲歩』必要」『 AFP⚫️BBNews』2026年4月28日14:47 発信地:国際連合/米国 [ 米国 北米 ]、https://www.afpbb.com/articles/-/3633264。
[vi]「イラン大統領と国会議長、外相の解任を要求 核交渉の進め方に不満」『CoinNess』2026.05.01 03:22、https://coinness.com/ja/stock-news/29405。
[vii]「米国を『大悪魔』・核は『国家の資産』、イラン国内で主戦論が台頭し要人の発言が過激化…アラグチ外相解任の動きも」『読売新聞オンライン』2026/05/02 10:35、
https://www.yomiuri.co.jp/world/20260502-GYT1T00032/。
[viii] https://x.com/sirenamel/status/2050527262194479347?s=20 。
主な更新 5月5-6日 外相解任要求に関する読売報道をめぐって加筆
