浪漫と幻想の世界〜泉鏡花 「高野聖」と、雑司ヶ谷霊園。 | 女優・朗読家 長浜奈津子*朗読空間

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*劇団俳優座女優・朗読家 長浜奈津子の朗読配信*

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こんにちは、長浜奈津子です🌸

<7度目の飛騨山越え>
泉鏡花の「高野聖」はそのまま朗読すると3時間にはなるお話ですが、今回12月18日(土)の公演では、印象的な場面を中心に1時間ほどで読ませて頂きます。これまで、私のひとり語りでは初演で2時間14分、2016年、再演は3時間程ノーカットで読みましたが、その時はマリー・ジョセ・メドゥヴィエルさんの美しい色で染められた布の作品とコラボレーションさせて頂きました。部屋いっぱいに吊るされた布は、岩肌と水飛沫のみえる渓谷と、そこに枝垂れる紅葉のような色合いでしたで、有名な谷川の場面が思い出されます。私にとって今回は、7度目の飛騨山越えとなります。
 


初演の時、毎日稽古をしていたところ途中で酸欠になったこともありました。長時間稽古しすぎたのです。ある日などは、読みながら居眠りをしたり(!)…あれは不思議な体験です。座って気が遠くなっているのに、目が文章を追って、口が動いている、声も出ている。…もちろんそれ以来お稽古の仕方を変えました笑。


<「高野聖」の醍醐味>
「高野聖」の醍醐味は、聞き手も『旅僧』と一緒に旅をして、その不思議な体験話を夜伽に聞き、それ相当の時間をかけて苦難を乗り越えて、山奥の不思議な孤家 (ひとつや)にやれやれとたどり着く方が、そこからの場面が十分に楽しめるお話だと思っています。ですが、今回1時間になっております。ですがこれはよほどの鏡花ファンの方にだからこそ喜ばれた長時間でした。ある方などは、3時間背筋を伸ばしたままお座りになり(自然体で)、文章に聞き入って下さり、ときに微笑んだり真剣な顔持ちになられたり。お帰りの際には「全編朗読して下さってありがとうございます」と仰って静かに微笑んで、お帰りになられました。忘れられないお方です。ですが、今回はどなたにでも気軽に楽しんで頂けますように、ダイジェスト版でお贈りします。


<飽きない楽しさ>
久しぶりに開いた「高野聖」は、やはり面白かったです。
「参謀本部」と聴いただけで、ワクワクします。好きな小説の冒頭文は、誰にとっても嬉しいものです。

「参謀本部編纂の地図をまた繰開いて見るでもなかろう、と思ったけれども、余りの道じゃから、手を触るさえ暑くるしい、旅の法衣の袖をかかげて、表紙を附けた折本になってるのを引張り出した。飛騨から信州へ越える深山の間道で、ちょうど立休らおうという一本の樹立も無い、右も左も山ばかりじゃ、手を伸ばすと達きそうな峰があると、その峰へ峰が乗り、巓が被さって、飛ぶ鳥も見えず、雲の形も見えぬ。道と空との間にただ一人我ばかり、およそ正午と覚しい極熱の太陽の色も白いほどに冴え返った光線を、深々と戴いた一重の檜笠に凌いで、こう図面を見た。」

次々と巻き起こる『旅僧』の身に降りかかる珍事難事。修行僧と言えども、人の子。…さて『旅僧』のゆくへはいかに。次々と巻き起こる『旅僧』の身に降りかかる珍事難事。修行僧と言えども、人の子。…さて『旅僧』のゆくへはいかに。皆さんも是非『飛騨山越え』をご一緒に如何でしょうか?

孤家(ひとつや)の夫人(おんな)、白痴(ばか)*次郎さん。この二人にも物語があります。なんとも切ない背景が、このストーリーに深い味わいを持たせています。

他人の不幸は蜜の味... 皆さんも是非『飛騨山越え』をご一緒に!


<雑司ヶ谷霊園>
2013年11月14日(木)・15日(金)「外科室」「海の使者」/12月14日(土)・15日(日)「高野聖」私のひとり語り「朗読空間」の其の一、其の二です。

 

浪漫と幻想の世界〜泉鏡花 「高野聖」

 

このシリーズが決まった年の夏、雑司ヶ谷霊園の泉鏡花のお墓を訪ねました。この冬から始まる『朗読空間』と、鏡花3作品の公演が成功することにについて、お線香を焚き手を合わせました。「よろしくお願い致します…。」蝉の鳴き声の染みる、夏の盛りでした。

雑司ヶ谷霊園、とにかく広いんですもの💦
『鏡花 泉鏡太郎墓』というお墓をやっとみつけました。

永井荷風先生、小泉八雲、夏目漱石、竹久夢二。。。ここには文豪の方々が眠っています。
皆さん、もしお伺いするときには場所を調べてからいらして下さいね、どうか。

<ひとり語り、泉鏡花『高野聖』公演と、朗読シネマ永井荷風『葛飾土産』のご案内>
市川市文学ミュージアム・ベルホールにて、”おとがたり朗読シネマ” と "長浜奈津子ひとり語り"『市川荷風散歩 〜本八幡より〜』が2021年12月18日(土)ー19日(日)に開催されますが、長浜奈津子ひとり語り「高野聖」はここで上演されます。


<朗読シネマについて> 
おとがたり朗読シネマの第一日目12/18(土) 14時からは、ヴァイオリニストの喜多直毅さんの音楽と共に『寺じまの記』荷風名随筆の世界をお贈りします。長浜奈津子ひとり語りは『耽美派』泉鏡花 の幻想小説です。鏡花独特の旋律、美しい筆脈に妖しく惑わされる「高野聖」を読ませて頂きます。ゆっくりお楽しみ頂けましたら幸いです。


2021年 12月18日(土)14時 午後の部のプログラム
受付は13時半から。以後の受付はありませんので、ご注意下さい。
14時開演の朗読シネマ、 15時からのひとり語り両方お楽しみ頂けます。

◎ 午後の部(終演:16時頃)
 
 開演 14時00分「葛飾土産」永井荷風随筆/朗読シネマ(51分)

  <休憩10分>

 開演 15時00分「高野聖」泉鏡花/ひとり語り(60分)



<朗読シネマ/演目>
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『葛飾土産』
市川菅野、真間の情景を眺めながら、まるで荷風とともに散歩しているかのような作品です。手児奈(てこな)伝説、八幡の藪不知(やぶしらず)なども書かれています。まるで草薫る荷風散歩を共にするかのようです。

「菅野に移り住んでわたくしは早くも二度目の春に逢おうとしている。わたくしは今心待ちに梅の蕾の綻るのを待っているのだ。去年の春、初めて人家の庭、また農家の垣に梅花の咲いているのを見て喜んだのは、わたくしの身に取っては全く予想の外にあったが故である。戦災の後、東京からさして遠くもない市川の町の附近に、むかしの向嶋を思出させるような好風景の残っていたのを知ったのは、全く思い掛けない仕合せであった。」



<長浜奈津子 ひとり語り/演目>
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『高野聖』泉鏡花 12月18日(土)午後の部 (15時〜) *ひとり語り
  

 


 旅の途中で『私』は高野山に籍を置く『旅僧』と出会った。『私』は旅先の宿で夜話に『旅僧』が飛騨の山越えをした時に経験した不思議な体験話を聞きます。飛騨から信州へと向かう山中で『旅僧』は偶然出会った『薬売り』が、新道と旧道、二手の分かれ道で危険が潜むという旧道をえらび先にいってしまった為、それを知らせる為に自分もその旧道へ向かった。『旅僧』は身を襲う蛇と山蛭の山路を抜けて、やっと山奥の孤家にたどり着いた。そこには妖艶な『女』と病気で口のきけない『少年』が住んでいた。『女』にはある秘密があり、そこで『旅僧』は奇妙な一夜を過ごしたという。魔界と現実とが交差する、泉鏡花が28歳の時に書いた代表作。1900年(明治33年)2月1日初出。



<公演の詳細ブログです>

 

 

 

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