短編四十八手 その四十九
「光がとどいた!」と穴の奥で空をみはっていた一輪の花が叫びました。すると、暗闇でうつむいていた花たちが一斉に空をあおぎました。たしかにまぶしい。自分ひとりじゃ何ひとつできないくせに……。花々は眼をほそめます。久方ぶりの輝きでした。あまりに永いこと、まっくらな洞窟にいたので、その花びらは嘘のように純白です。めしべまわりが黄金づくと、花たちはひらひらとかけ足で穴を辞しました。
それは花の願いというよりは、光の意志でした。花びらが土に堕ちると、地上が色づきます。そして、海は青みがかり、空は碧になりました。光こそがこの世をまわしているという秘密をまだ憶えているのは、いまだに木陰で人識れず咲いている小ぶりな一輪なのかもしれません。