感覚四十八手 その二十四
テニスにおいて百球アウトする練習というのは、よくやる。人間、本能的にまったく同じミスというのを避けるようにできているから、アウトを続けてゆくと、もうミスのしようがなくなり、自ずとコートのなかにボールがはいってくるのである。これは師匠の受け売りなのだが、無論、テニス以外にもあてはまる。例えば、北方謙三さんは三っつ四つ小説を書いたくらいで、物語になるわけがない。百、二百書いてはじめて文体ができる
というようなことをどこかでおっしゃっていた。この言の葉などは私の支えになった。テニスで百球ミスするよりも、永い話になる。もっと遠くを眺めれば、百くらい輪廻転生しておかなければ、魂は板につかないだろうし、百ビックバンしなければ、宇宙ははじまらないのかもしれない。