初心者が行く!印旛新川ベイトでオカッパリ -6ページ目

初心者が行く!印旛新川ベイトでオカッパリ

バス釣りド初心者の中年バサーがベイトオンリーで印旛新川に挑みます。

ほそぼそと働いてほそぼそと給料を得て、ほそぼそと嫁さんから小遣いをもらって生活している僕である。

昼にはほそぼそと安売りの弁当を買って腹を満たし、月に一度の贅沢はほそぼそと会社の同僚と安飲み屋に行く程度の、

言わば僕はほそぼそサラリーマンアングラ―なのであって、ほそぼそアラフォー不整脈持ちの頭髪が心配になってきたビール腹オヤジと言って差し支えありません。


そんなほそぼそとした僕にとって、バス釣りにおける消耗品への出費というものが、結構なサイフの負担になっているということは以前にも書いたような気がします。

時間とともに劣化してしまうラインなどはどうしようもないですが、例えばワームなんかは頭が裂ければ裏返して使い、反対も裂ければちぎって使い、どうにもならなくなればライターで溶接し、極力、使える限りは使い続けるように気を使っています。

が、それでもやはり、あちこちが裂けてフックを刺せる箇所もないようなワームについては捨てるしかありません。

ワームについては専用の補修材というものもあるのですが、なにぶん高価で元を取ることが難しく、また、すぐに品質が劣化してしまうために一度開封したら急いで使いきらなければならないなど、色々と制約も多いようです。


ところがそんなほそぼそアングラーである僕の釣り友達の、ほそぼそWestさんからある日いいものを教えてもらいました。







セメダイン



多目的接着剤ということですが、接着した部分が固くならずフックを刺すこともできるようです。

値段も通販で400円程度とお求めやすかったので、試しに購入して家中の使用済みワームを接着してみました。

使った感じですが、接着面は想像していたよりも柔らかく、これならちゃんとフックアップしそうだなと思った一方で、接着後にもう一度使用した場合の耐久性に少し不安を感じました。


もっとも、今までであれば捨てていたワームがもう一度使えるかもしれないというだけでも、万々歳なのかもしれません。

何しろ元値は400円、しかも、最近は一つあたりの単価が200円を超えるようなワームや、高価なスイムベイトも多いのですから。


補修後のワームはまだ実釣していませんが、機会があればまた結果を書きたいと思います。




…ということでフロータ―ダムです。

もともとのキッカケは春先くらいだったでしょうか。

昨年まで主催していた印旛水系の大会にいつもご参加いただいていた「けんけん」さんが、何やらフローターを買ったらしい、ということで、

ではぜひ一緒に行きましょう、なんて話をしていたのが最初だったように思います。


それが、どうせならあの人も誘ってみよう、この人も誘ってみようと、思い当たる限りフローター持ちの友人たちに声を掛けてみた結果、一時期は総勢10名での参加ということになっていたのですが、

ちょっと個人的な話なので詳しくは書けませんが、えっ、と声を出してしまうようなトラブルで参加できなくなった方や体調不良のため断念された方など、

最終的な参加人数は僕を含めて5人となりました。


そもそものキッカケであったけんけんさんも体調不良のため不参加となってしまったのは残念無念ではありますが、またご一緒する機会はいくらでもあるでしょう、

ということを信じて、今回はこの5人で浮きましょうと、僕はワクワクとその日が来るのを待っていたわけだったのでした。



釣りには色々な形態があります。

オカッパリしかり、ボートしかり、

それぞれにはそれぞれの良さがあり、一概にどれが一番だというものでもないのですが、

しかし、敢えて一番好きなスタイルを選択せよということであれば、僕はやはりフローターでの釣りが一番好きなわけです。


自然の中でゆったりと、自分の世界に浸りながら自分のペースで釣りができることも良いし、

水面に近い場所でルアーにかかった魚を間近に確認しながらやり取りするのも良い。

自分一人で浮くのも良いし、気の合う友人たちと浮くのも良い。

オカッパリのチョイ釣りほど気軽というわけではないけれど、ガチガチのフル装備で固めたボート釣行よりは肩の力が抜けている。

その中途半端具合も、僕の性格に合っているのかもしれない。


今回、ご一緒するのはWestさんにかいてんさんにリョウくんにジャーク(☆ニシヒロ)さん。

みなさん、もはや気心の知れた友人ばかり。

これは当日は楽しい一日になりそうだぞ、と思っていたわけだったのですが、












「台風10号は記録的な強い勢力を保ったまま現在北東へ進んでおり…」














…。






…クラッ














台風はアカン。











フローターで台風はアカンでしょう。


ついこの間も1つ2つ台風が通り過ぎたばかりだというのに、性懲りもなくまた来やがったというのか。

どうしましょう、みなさん、いっそ亀山でボートでも出しますか、なんて話をしていたのですが、気まぐれな台風10号はあっちへふらふらこっちへふらふらと進路が安定せず、どうやら関東上陸は翌日の月曜日になる模様。

これならいける!と予定通り決行することになったのでした。





当日。

朝3時半にかいてんさん、リョウくん、Westさんを回収して一路房総へ向かいます。

車1台に4人も乗ると、車内はワイワイと賑やかです。

最近かいてんさんがマグロを釣っただの、リョウくんが琵琶湖へ行っただの、色んな話が飛び交いますが、

結局、落ち着くのはやはり「果たして今日はどうなのか」ということ。


今年は平年からすると空梅雨で雨が少なかったとは聞いていましたが、減水に減水を重ねていた房総のダムはこの数日の台風ラッシュで一気に水位を回復したらしい。

この急激な変化が、バスにどのように影響しているのか。


「こないだの台風からもう4日も経ってるから大丈夫でしょ」なんて声もありますが、そのトーンは少し不安気です。

どうやら僕も含めて4人とも、どうにも最近の急激な雨と水位の回復が、釣りにとってはネガティブな方向に転がっているのではないか、と予想しているようです。

夏の終わり、減水しきったところでの待ちに待った雨、という瞬間はポジティブに働くことが多いと感じますが、あまりにも雨が続いてしまうと今度は環境の変化にバスが付いていけなくなってしまう。

皆、今までの体験からそれを危惧しているようです。



…まぁ、しかし普段からあまり混み合わないフローターダム。

環境のネガティブな要素と、プレッシャーが低いことによるポジティブな要素と、差し引きゼロでなんとかなるんじゃないか、

そんな風に軽く考えることにして、まずはジャークさんと合流すべくダム近くのコンビニへ急いだ僕だったのでした。


4時半に待ち合わせのコンビニでジャークさんと合流し、さて、では予定のポイントへ向かいましょうかと話をしていたところだったのですが、

ふとジャークさんはフローターダムについてかなり詳しかったなと思い出した僕は、何気なく「今日エントリーする場所、今の時期どうでしょう」と聞いてみたのでした。



「実はそこからエントリーしたことないんですよ」


―え、そうなんですか。

「普段は川筋ばかりなんで」


―川筋…。


なるほど、僕は逆に今までダムサイト近辺しかエントリーしたことがなかったです。


…チラリとかいてんさんを見やると、どうやら興味を惹かれている様子。

もともとかいてんさんは、台風でドタバタとやっぱり亀山にしましょうかなんて迷走していた時にも、

「というかこの状況ならダムより川じゃないか」と主張していたのです。


―じゃあ、せっかくなんでダムサイトはやめてジャークさん推薦の川筋にしましょうか。

と言ってみると全員異論は無い様子。


こうして急遽エントリーポイントを変更した僕たちは、ジャークカー先導のもとフローターダムに至る川筋へ向かうことになったのでした。



くねくねとした細道を抜け、橋を渡ると、先導していたジャークさんの車が駐車スペースでハザードを出します。

同じように駐車スペースに入り、エンジンを停止して全員でゾロゾロと車を降り、あたりを見回してみると、どうやら橋のたもとから直接川へ降りられるらしい。



―へー、こんなところからエントリーできるんですね。知らなかった。


かいてん「しかしここの雰囲気ヤバイよね。さっき渡った橋とか見てよ」


かいてんさんが渡ってきた橋を振り返りながらそんなことを言い出します。

…うん、たしかに、ここ10年以上何も補修していないと言われても納得するような外観をしています。


日の出の予定まではあと30分ちょっとということもあって、あたりはまだ薄暗く、シンと静まり返った木々が不気味な雰囲気に拍車をかけています。







…ゾワッ。





―いやいやいや、変なこと考えちゃうから勘弁してよ。



どうやらこのかいてんさん、普段からわりと怪談やら心霊やらに興味があるようで、今まで別の釣行にご一緒させていただいた時にも、

助手席で「なんーだか変だなー、なんーだかおかしいなー」と稲川淳二のモノマネをしながら僕に怖い話を聞かせようとしてきたことがあったのでした。

その都度、僕は高いところとお化けがダメだから勘弁してくれと伝えてきていたのですが、ここにきてまたその悪癖がチラリと顔を出してきたようです。






リョウ「そういえば、この間、会社の先輩と夜釣りに行ったんですよ…」






…リョウくんが(僕の)空気を読まずに唐突に何やら語りだしました。

この語り口調は非常に悪い予感がビンビンしてきます。






リョウ「川の沿道から岸に降りて釣りしてたんですけど、気がついたら沿道に女の人が立ってて、こっちを覗いているんですよ」

リョウ「こう、左右に体を傾けながら、なんかずっと覗きこんでるんですよね」

リョウ「ずーっとそんなことやってるもんだから、さすがに気になっちゃって、先輩と様子を見に行ってみよう、って話をして」

リョウ「沿道に登ってその人のところへ行ってみたんですよ」

リョウ「…そしたらその人、スゥっと消えちゃって」


















…。











…なぜ、いま、どこに、その話をする必要があった?









怖えー、それ怖えー、とゲラゲラ笑いながら興奮しているかいてんさんと、マジですよ、マジですって!を繰り返しているリョウくんを横目に見ながら、僕は怒りにも似た感情を静かにたたえていたのでした。


僕がそんな感じでムッツリとしていると、


かいてん「まぁまぁ、ね、ちょっと川の状況でも見てきましょうよ」



…。

僕が怖いものが苦手ということを知っているかいてんさんが、場の雰囲気を変えようとしたのか、そんなことを言ってくれました。

まぁ、僕も37の大人ですから、20の若者にお化けのことで説教するほどみっともないこともないでしょう。

お陰で我に返った僕は、ちょっと大人気なかったと反省して、かいてんさんの言うとおり川の様子を見に行ってみることにしたのでした。


…そこの橋の上から状況が分かるかな?


スタスタと歩いて行くと、






















かいてん「ワッ!!!!!」




ギャーーーーーーーーーー!!!!!!!!











…腰を抜かした僕が振り返ると、ゲラゲラ笑いながら逃げていくかいてんさん。



プチーーーン!!



―コラァ!!!!!!!






かいてん「アハハwwwごめんなさいwww今のwビジ夫さんwタイミング最高だったwwwww」



…一分前にお化けごときで大人げないと反省した気持ちを空の彼方に放り投げて、かいてんさんに詰め寄る僕と逃げるかいてんさん。

それを見て笑うリョウくんに、呆れ顔のWestさんとジャークさん。



West「そんな怖いものダメなのによく房総で釣りできますね」

ジャーク「そろそろ日も出ますし、準備しちゃいましょうよ」


…大人二人にたしなめられて、ようやく正気を取り戻した僕は、かいてんさんに貸し一つだなと心の中でカウントして、いつどうやって返してもらおうかと、そんな底意地の悪いことを考えながらフローターの準備を始めたのでした。




さて、あたりも白々と明るくなってきて、無事にエントリーを済ませたのはいいものの、右も左も分からない僕はどちらが上流方面でどちらがダム方面なのかとジャークさんに確認してみます。


ジャーク「左手側が上流ですね」


…なるほど。


そして皆さん、何も言わずとも上流方面へ流していくつもりのようです。

せっかく川筋にエントリーすることにしたのですから、いつもやっているダム方面よりは上流方面へ進んでみたいというのが人情なのかもしれません。


…僕もそれに倣って上流に行ってみようかな、

そんなことを考えていたところ、



かいてん「きたきた、さっそくきたよー!」



おお、エントリーしたばかりだというのにかいてんさんが釣った!


―何で釣った?

かいてん「シャッドですね。ここのメインベイトはワカサギみたいなんで。あわせてみました」


…なるほど、秋のマッチザベイトを意識したということか。



かいてん「またきた!…お、これはそこそこ良いよ!」


またシャッド!しかも今度は40アップ?やるなぁ。



どのくらい潜るシャッドなのかはわかりませんが、巻物を追いかけてくるというのですから活性は良さそうです。

台風を受けて、魚の活性を一番心配していたのですが、どうやら杞憂だったのかもしれません。

ただおそらく、魚は既に秋モードへ移行しているでしょう。


…どうしようかな、僕も真似して水中のベイトを意識した巻物を使ってみてもいいけれど…。

…でも、始まったばかりで人真似はあまり芸が無いし、活性が良いならまずはトップを試してみようかな。



手にしたのはいつものプロップペッパーです。

初場所でポイントも分からず、ざっくり流しながら撃っていくには都合の良いプロップペッパー。

最近は、まずはハイフロートのジャークベイトから、という流れもお気に入りなのですが、今日はジャークさんがいるので封印します。


そもそもが、あまり周りの人がやらないことをやれば釣れるんじゃないか、という安易な発想からやっているという意味合いもありますから、

その考えでいくと、本職がいる今日はジャークベイトにこだわる必要はないのです。


…とかブツクサ色々考えながら流していきますが一向に反応がない。

濁っていて水中は見通せませんが、ひょっとしたらチェイスくらいはしているのかもしれません。

我慢強く投げ続けてみます。







…。







うーん、活性は悪くないけど水面を意識している感じではないのか。

あれ、そういえばかいてんさんはあれから釣ったんだろうか。

かいてんさんの方に寄っていってみます。



―あれから、どう?


かいてん「反応ないっすね。朝イチだけだったみたいです」


…う。

朝イチにポンポンと出て、お、今日は良さそうだぞ、じゃああれを試してみようか、

…なんて余裕をかましていたら、結局釣れたのは朝だけだった、なんて経験をしたのは2度や3度ではありませんが、まさか今日もそんなパターンなのか。


かいてん「なんか、ズルしてる人いわく、魚のレンジは5mくらいらしいですよ」

―…ズル?


かいてん「ニシヒロさん、魚探積んでるんですよ」

―えっ、フローター釣行なのに?一人だけ?


―…ズルい!!

二人でニシヒロさんを囲んでズルだズルだと非難しますが、まさか魚探を外せと言うわけにもいきません。


いずれにしてもズルジャークさんの情報によると魚は低いレンジに集まっているようですから、このまま上流方面へ向かっていくというのは果たしてどうなのか。


かいてん「逆かもね」

―…だねぇ。


どっちかというとダムサイト側へ向かったほうが可能性が高い気がする。

Westさんとリョウくんにも事情を共有して、もと来たルートを引き返していきます。


…しかし、5mか。5mはちょっとキツイ。

そんな深いところ探れるルアーは持ってきていない。

撃ちモノのリグを落としこんでいくか、あるいは深場から引っ張ってくるか…。


…ビッグベイト?


みちみち、引き返しながらジョイクロを流してみます。

タダマキしたり、ジャークを入れてみたりしますがチェイスすらありません。


―うーん、こりゃ本格的に表層系はダメなのかもしれないぞ。

どうしたものか悩みながら、2~3mのミドルレンジを引けるクランクで流していくと、やがてエントリーポイントを過ぎ、今度はダムサイト側へ進んでいきます。

ジャークさんが先陣を切ってどんどん進んでいくのを追いかけていたのですが、ふと振り返ると残り3人が付いてきていません。

僕らの進むペースが早すぎた、というより、おそらく残り3人はスローダウンしたのでしょう。

つまり、撃ちモノを試しているのではないか。


―うーむ、撃ちモノかぁ…。


深場に魚の反応があり、底から引っ張ることもできないとくれば、素直に撃ちモノを試すのも道理という気がします。

ただ、これだけ広いフィールドをゆっくり撃ちながら進んでいくというのも、ちょっぴりもったいない気もするのですが…。

しばらく悩みましたが、結局ヘビダンをセットすることに。

これで岸際を撃ち、底をとったらすぐ回収して進んでいけば、それほどペースも落ちることはないでしょう。


岸際にキャスト。

ラインが落ち込んでいくのをじっと待ち、フッ、と糸フケが出た瞬間。



…ん?あれ?

ちょっとした違和感にロッドを煽ってみます。

―あれ?なんだ、ゴミ?




ん?バス!?
















1



ちっさ…。


しかし、今日の初バスです。

底を取ってリグが倒れこんだリアクションでしょうか?


バスに御礼を言ってお別れすると、きちんと底を取ることを意識して投げ続けてみます。

岸からギリギリまで距離をとって投げ、リグが極力カーブフォールしないようラインスラックに気をつけて、底を取ったらしばらく動かさずに待ってみる…。

自然と移動するペースが落ち、ジャークさんに置いて行かれます。

そのままゆっくり進んでいくと、やがていくつかの川筋が合流して開けた場所に出ました。


―ダムサイトに出たんだろうか。


ジャークさんは左手側の岸沿いを進んでいるようだから、じゃあ僕は右へ行こうか…。

…ん、この辺は底に立ち木が植わっているのかな?

ちょっとだけ引っ掛けて外してみると…、














2

3



これまた小さいけど釣れた。

3匹目なんて、このサイズがよく喰ったもんだ。


…うん、やっぱり魚の活性は悪くないんだと思う。

さっきまでは攻めてるレンジがだめだったってことなんだろうなぁ。



…あ、かいてんさんが追いついてきた。


―かいてんさん、どう?

かいてん「さっきそこの岬でテキサスで一本追加しましたけどね。ビジ夫さんは?」


―ヘビダンで3本釣れたよ、一応。

かいてん「あ、釣れたんですね。どんな感じですか?」


―岸撃ってベタ底だよ。それに立ち木とかストラクチャが絡むと釣れた感じだねー。ちっちゃいけど。




いったん、情報を交換してかいてんさんと別れます。



…テキサスで釣ったってことは、多分かいてんさんも似たような感じなんでしょう。

活性の高い、小バスが底に溜まっていることは分かった。

じゃあ、デカいのはどこにいるんだろう?

このままここでヘビダンを続けていてもデカいのが釣れることはない、そう判断してロッドを変えます。


…もしも中層でベイトを追い掛け回しているなら、やっぱり巻物?

それとも、ところどころにある浮きゴミのようなカバーに絞って重めのテキサスか直リグを試してみようか…。


…あ、ジャークさんからLINEの着信が。



ジャーク「先に帰ります。お疲れ様でした!」




―えっ、まだ11時前ですけど!?


ああ、そう言えばエントリーする前に早上がりするかも的なことを言っていたような気もする。



ジャーク「大きいのは釣れませんでしたが結局8本でした」


…8本!


ジャークさんのことだから撃ちモノはやっていないはず。

途中までジャークベイトには反応が無かったように見えたけれど、何かルアーを変えたのか、いい場所を見つけたんだろうか。

気になってジャークさんがやっていたであろう方面へ向かってみます。



…あ、またかいてんさんだ。


―ねぇ、ジャークさん8本釣ったらしいよ。



かいてん「さっきこの辺で連発してたの見てましたよ」

―あ、ほんとに?何で釣ってたかわかる?


かいてん「バイブみたいでしたけどね」

…バイブ?



やはりジャークベイトは諦めたのか。

しかし、ジャークするからジャークさんなのにジャークしないジャークさんとはこれいかに。


いずれにしてもバイブってことはそれほど深いレンジを引いていたわけではないんだろう。

さっきまで僕もクランク結構引いてたんだけどなぁ。

場所の問題ってことなのか。


かいてん「それはともかく、これ見てくださいよ…」

…ん?どしたの?


―あ、ロッドティップがぷらーんってなっちゃってるじゃん!どうしたの!

かいてん「キャストする時、ティップにルアーぶつけちゃったんですよ…」


―えーっ!それで折れたの!?

かいてん「その時は折れてなかったんですけど、ダメージがあったみたいで力を加えたらポッキリと」




…。


かいてん「…。」






…この落ち込み具合からすると、たぶん、お高いロッドなんだろうなぁ。



かいてん「…今日、何時くらいまでやりましょっか」

―そうだねぇ、ジャークさんもあがっちゃったし、僕らも引き返そうか。

Westさんもリョウくんもイマイチっぽいし…。


…なにより、かいてんさんは釣りを続けるような心境じゃないだろう。

ちょっぴり気の毒だから、朝の貸しにしておいた分は帳消しにしてあげよう。

Westさんとリョウくんに、戻りますよと声をかけて、道中を撃ちながら引き返していくことにしたのでした。





…その途中にあったゴミだまり。















4




…あ、ちょっとマシなサイズが釣れた。

しかし、今日は本当にわからなかったな。

川筋じゃなくてダムサイト側が正解だったんだろうな、という程度で、結局大きいのがどこにいたのかサッパリだった。

丁寧に底を取っていけば小さいのはたくさん釣れる感じはしたけれど…。



12時ちょうど、ちょっと予定よりは早かったですが、納竿としたのでした。





…帰りの車中。

かいてん「このロッド、たしか買ったのが去年の9月だったからまだ保証が残ってるはず」

―おお、よかったじゃん!いやよくはないけど。


かいてん「たしか、免債5000円か6000円くらいだったと思うんだよなー」

―へぇ、安いね。良心的なメーカーだよ、そこ。


かいてん「◯◯◯とか△△△とか免債でも高いですからねー」

West「✕✕✕とかも新品の半額くらい取るでしょ」

リョウ「□□□は多少マシらしいですけど」

かいてん「一年使わせてもらって、また5000円で新品が手に入ると思えばね」

West「ポジティブやなー」

―いや、でも実際、その考えもアリだと思いますよ。よかったね、かいてんさん。




…思わぬトラブルでしたが、最終的にはよかったよかった、めでたしめでたしということで、落ち込んだ空気を引きずることなく帰路につくことができたのでした。




3人を無事に送り届けて帰宅し、やれやれ、あともう一仕事、とフローターの後片付けをしていると、ピロリンとかいてんさんからLINEが。






かいてん「免債額、定価の半額でしたわ…」











…。






返信のしようがない…。

そっとスマホの画面を閉じると、再びフローターの後片付けを再開した僕だったのでした。
…湖面を打つ雨音が激しくなってきました。

レインウェアのフードをすっぽりとかぶって、ボートに乗り込んだ僕は同船しているワカバヤシさんことワカタンに話しかけます。


―まず昨日の護岸、やっていく?


…おそらく、「いいですよ」と返答があったのだと思いますが、雨音と両耳を覆うフードが邪魔をして返事がはっきりとは聞き取れません。

昨日の護岸とはもちろん、ワカタンが49cmを釣り上げたコンクリート護岸のことなのでして、

今日一日の調子を占う意味でも、最初にそこをやっておきたいと昨晩のうちから考えていた僕だったのでした。



…7月9日土曜日の早朝。

バンガローに響く雨音で目が覚めた僕たちは、いそいそと雨天釣行の用意を済ませて2日目の桧原湖に出船したのでした。


初日は何しろ不眠釣行の疲れから集中力が途切れる時間帯もありましたが、バンガローを借りて熟睡した甲斐もあって体調はすこぶる良好です。

昨日と同じ、エンジン役を担当することになった僕は、出船するとすぐにコンクリート護岸に向けて舵を切ったのでした。


エレキモーターとは比較にならない速度で進んでいくアルミボートですが、それだけに行き交う他のボート、特にバスボートには注意を払わなくてはなりません。

こちらに向かっているバスボートが遠目に見えたと思っても、ふと目線を外しているうちに思いもよらない距離まで近づいているときもあって、そのたびに僕は慌てて大げさに舵を操作し、無用にボートをグラグラと揺らしていたのでした。


ワカバヤシ「…バスボート、昨日より多いですね」


―たしかに。


昨日もバスボートが多いなと感じていたけれど、今日はそれに輪をかけた数のボートが浮かんでいます。

バンガローからボート屋さんに向かうまでにも、たくさんのバスボートを牽引した大型の4WD車を見かけましたが、これが桧原湖のハイシーズンの姿ということなのでしょう。


…そういえば、そうやって牽引されたバスボートの1台を見たかいてんさんが、「あ、あのボート綺麗にラッピングされてるからきっと有名なバスプロだ」とか言っていたなぁ。

チャプターだかなんだかの、プロの大会が近く桧原湖であるはずだから、そのプラクティスのためにたくさんのバスプロが集まっているんじゃないか、なんてことを言っていたけれど、

そういったプロもプロを目指す人たちも、今頃はこの湖のどこかに浮いているんだろうか。



…プロかぁ。

そんな人達と同じフィールドで一緒に釣りができるんだもんなぁ。



…例えば野球が趣味のとあるサラリーマンが、休日に趣味仲間と草野球をやっている最中に、ふと隣を見てみたらプロ野球選手が混ざっていた、なんてのは絶対に有り得ない話です。

プロも、将来のプロを目指す若いバサーも、僕らのような休日バサーも、何の区別もなく同じ土俵で一緒に楽しめるスポーツというのは、案外少ないものなのかもしれない。


そもそも考えてみれば、例えばプロ野球選手になりたいと思うなら、

元プロ野球選手である父を持ち、

3歳から既に厳格な英才教育をうけ、

右利きであろうとも箸を左手で使うよう矯正され、

筋力増強を目的としたバネの塊のようなギブスを施し、

家の壁の僅かな穴を目掛けてボールを投げ、

鋼鉄のバットをブンブン振り、

野球を辞めたいと言えばちゃぶ台をひっくり返され、

甲子園決勝では血染めの指で力投を続けるも惜敗し、

苦心の末、魔球とも呼称される変化球を編み出していく、

といったような経歴をたどるのが一般的な実現の仕方だと思いますが、

バス釣りのプロというものは、もっとアマチュアとの距離が近いものだと感じます。


…それが良いことなのか悪いことなのかと言われれば、たぶん、良いことなんだろうなぁ。



そんな他愛もないことを考えている間に、昨日ワカタンが49cmを釣った護岸に到着します。


岸際から10mほど距離をとってエレキを落とすと、ワカタンはもちろん実績のあるフットボールを投げ始めます。

僕は…。


…どうしようか。ひとまず朝イチということで、昨日はまったく反応のなかったミノーを投げてみようか。


周辺の様子を見回すと、昨日よりもさらに水位が上がっています。


…夜のうちに結構降ったんだなぁ。


その割に、水はクリアのままです。

裸眼で見通せる水深は、昨日とさほど変わりないように感じます。


一晩で水位が急激に上がるほど雨が降ったなら、地元のダム湖ならドチャ濁りになっているでしょう。

あちこちの岸際には昨日には無かったはずの流れ込みができていますから、そういった流れに乗って土砂も一緒に流れ込んでいるはず、というのが僕らのような房総バサーの一般的な感覚だと思います。


…が、桧原湖のような天然のクリアレイクではそんな考えは当てはまらないらしい。

こういったちょっとしたギャップが積み重なって、釣るためのアプローチに大きな違いが出てくる可能性があるんではないか…。


…あれ、ワカタンが何やらルアーを変えようとしている。

どうやら、昨日の最後に調子のよかったライトキャロを使おうとしているらしい。



―フットボール、だめ?反応ない?


ワカバヤシ「反応ないっすね」



…あらー、これは厳しいかも…。


昨日、ワカタンの49を筆頭に、勅使河原さんもそこそこサイズを2本、ここで釣ったと言っていたから、

僕の中ではここが一番可能性が高い、一級ポイントだと位置づけていたのに。


―昨日とは段違いに人が増えてるし、もう撃たれちゃったのかなぁ。


独り言のようにつぶやいて、僕はミノーを投げ続けてみますが、当然のように反応はありません。

ワカタンも、しつこくライトキャロを投げ続けていますが手ごたえはない様子。



うーむ…。


雨のせいだろうか。

それとも、やはり人が増えたことによるプレッシャーだろうか。




―平日釣行だった昨日が、釣りあげることができる唯一のチャンスだった…、

…10時間後、そんなことを考えている自分が脳裏に浮かんで軽く首を振ります。


イカンイカン、まだ2日目も始まったばかり。

こんなことを考えている時間帯じゃない。




―…北、行ってみる?


昨日、僕は釣れなかったけれど、良さそうな場所だという手ごたえはあった湖の最北。



ワカバヤシ「行ってみましょうか」



…朝一に入れれば、あわよくば僕も40アップを…、

なんて、淡い期待を持っていたこの場所。


ちょっと未練があるけれど、まさかこの狭いコンクリート護岸だけで一日をやり通すわけにもいかない。

ワカタンにエレキを引き上げてもらって、昨日と同じように舵を北に向けて切った僕だったのでした。









―…多いなぁ。


ウンザリと、僕はワカタンに話しかけます。


ワカバヤシ「…多いですねぇ」


僕に負けず劣らずウンザリとした表情のワカタンがそう答えます。



桧原湖の最北。


なだらかなシャローからガクンとブレイクが落ちていて、ところどころにウィードが密集していたり、島のように地底が盛り上がっているところがあったりと、

狭い範囲の中に色々な変化が富んでいるこの場所。


昨日のうちから、ここ結構いいんじゃない、良さそうですね、なんて会話を交わしていた場所。


到着するや否や、湖上を覆うバスボートの群れにウンザリとしている僕とワカタンだったのでした。



入ろうと思っていたポイントには、すでに二人組のボートが入ってせっせとリグを投げています。

岸側はダメかと沖を見ると、船団を組んだバスボートが沖を埋め尽くしているのでした。



―良さそうなポイントだとは思っていたけど、このボートの数はちょっと尋常じゃないよね。


ワカバヤシ「たぶん、ワカサギじゃないですかね…」


―ああ、回遊ポイントってことか。だから沖をボートが埋め尽くしているのかな。



…ラージは地形に付き、スモールはベイトに付く、なんてどこかで聞いた格言をチラリと思い出します。

しかし、その推理があたっていたところで…、と、ため息をつきながらワカタンに話しかけます。



―…でも、ねぇ。ちょっとお邪魔しますよ、なんて混ざったところで釣れる気しないよね。


ワカバヤシ「しませんねぇ…」



だだっ広い、水深10mを超えるような沖で魚探を見ながらベイトのレンジを狙い撃つ釣りなんてやったことがない。

それはワカタンも同じようで、雨に打たれながら途方に暮れた表情で同意しています。


そもそもが、船団の中の誰も釣れているように見えない。

今はワカサギの回遊を待っている時間帯ということなのかもしれませんが…。





―あっちの方に行ったらシャローになってたよね。昨日40アップの見えバスがいたところ。


ワカバヤシ「そっち行ってみます?」


―もう、人、入っちゃってるとは思うけど…。




…それでも、ここで立ち尽くしているよりはマシだろう。

シャローの釣りなら、普段やっていることをそのままやればいいんだから。


昨日のうちから、最初はあそこに行って次は…、と考えていたプランがことごとく潰されていきます。

しかし、気持ちを切り替えて、再びエンジンをかけると船団の中を掻い潜るようにしてシャローを目指した僕たちだったのでした。





…やっぱり、人、入っちゃってるね。


ワカバヤシ「さっきのところよりはマシみたいですけどね」



目の前には水深1mから3m程度のシャローが延々と続いています。

底はびっしりとウィードに覆われていて、バスやベイトが隠れていると言われれば、さもありなんという場所です。



先行者の邪魔にならないポイントに船を付けた僕たちは、さっそくルアーを投げ始めます。


ワカタンはライトキャロやダウンショットなどのスローな釣りを試している模様。

しかし、そもそも、昨日と同じようにバスはいてくれているんだろうか。


…ジョイクロを試してみます。

やたらめったらブン投げてみて、ゆっくりとタダ巻きしてみますが…。



…チェイスが、ない。


昨日はこのあたりで投げれば3投に一回くらい、いいサイズのチェイスがあったというのに。



―やっぱり、昨日とは状況が違うっぽいね。


特に返答は期待していない、半分は独り言だったのですが、聞こえていたらしいワカタンは「そうですね」と答えます。


雨のせいか、人のせいか、おそらくはその両方かもしれません。

それがフィールドにどんな影響を与えているのか。

そうなったときに何をすれば釣れる可能性が高まるのか。


…見当もつきません。




ワカバヤシ「あっちの二人も釣れてないみたいですよ」


いつの間にか、かいてんさんに連絡をとっていたらしいワカタンがそう伝えてきました。

そうか、やっぱりあの二人も似たような状況なのか…。



経験値の少ないフィールドで頼りにすべきは、やはり実際に釣ったポイントで釣った方法をなぞってみることだろう、

そう思い立った僕はワカタンに提案してみます。



―昨日の最後、ワカタンが連発したところ行ってみない?


桧原湖のほぼ最北と最南という、非常に効率の悪い移動となってしまいますが、あてもなくボートを流していくよりはいいだろう。

いつの間にか時間も正午をまわって、残り時間はそう多くありません。


ワカタンも異論はないようです。

エンジンをかけると、気の長い走行に備えてフードを目深にかぶりなおした僕だったのでした。





…やがて到着した桧原湖の最南ポイントは、昨日よりは多いもののライバルでごった返しているというわけでもなさそうです。

さっきの最北ポイントのように、船団で釣りにならないような状況になっている可能性を考えていた僕は、ほっと胸をなでおろします。


先行者のボートから距離をとって、ワカタンは必殺のライトキャロを投げだしました。


…ワカタンが釣った状況をなぞってみる、ということで、僕もキャロを試してみます。

シンカーは投げられるギリギリの5gに落とし、ざっくりと周辺を探ってみます。




…む。


やっぱりこの辺りもウィードが密集しているのか、シンカーがやたらと引っかかる感触がある。




ワカバヤシ「ビジ夫さん、それ何gですか?」


―5gだよ。


ワカバヤシ「5gでもウィードに引っかかるでしょ。キャロはウィードの上に乗せて使わないと」


―む、そういうものなの?



…ワカタンが使っている2.5gのシンカーが、ウィードに乗せられるギリギリの重さということなのかな、

と、考えはするものの、しかし僕が使っているタックルじゃそんな軽いリグは投げられないのだから仕方ない。




…ああ、そうか、なるほどな、とこの頃には僕はだんだんと理解しつつあったのでした。

桧原湖では、なぜベイトタックルではなくスピニングタックルがメインとなっているのか。


ターゲットとなる魚がスモールだから、アベレージがラージより小さいから、小さいルアーを投げなきゃいけないから、なんて理由じゃないんだ。

桧原湖は、釣りあげるためのアプローチが、ベイトよりスピニングの方が有利なフィールドということなんだ。


ウィードを使った釣りにしてもそうだし、ディープをとる釣りにしてもそうなんだろう。


…そしてスピニングをメインに使う以上、ワームもどうしても小さくなってしまう、というのが真相なんじゃなかろうか。

小さいワームを使いたいからスピニングを使う、というのとは発想が真逆だったんだ。


今日、ここに来た僕以外の3人にとっては、そんなことは先刻承知の周知の事実なのでしょうが、

自分の身で体験するまで理解を拒む僕のような天邪鬼には、これは結構な発見だったのでした。


桧原湖でも、ベイトオンリーで釣行するバサーはきっとたくさんいるでしょう。

しかし、そういった人たちは、この事実をきちんと認識したうえで、そのうえであえてベイトタックルしか使わないのでしょう。


知っていてそうするのか、知らずにそうするのか。

この両者には天と地の開きがあるはずです。



…しかし、そのことに気が付いて自分のタックルを見直してみても、ベイトタックルの何本かがいつの間にかスピニングタックルに変わっているわけでもありません。

ここで、あるもので何とかしなければなりません。



…リグに絡まったウィードをブチブチと引きちぎりながら、どうすべきか考えます。





ワカバヤシ「…あ?きましたよ!」



え、と振り向くとワカタンの竿がしなっています!

今日ここまで全く無反応だった二人にとっては、初めてのヒット!


おお、さすがワカタン!ランディングネットは必要かな?

…なんて声をかけようとしたところ、







ワカバヤシ「…あ」




え?







ワカバヤシ「切れました…」





ええ!?




―切れた、って、え、ドラグ調整してなかったの?



ワカバヤシ「僕は基本フルロックなんで。寄せてからは調整しますけど」


―…そんなもんなの?スピニングなんて掛けた瞬間からジージーいってるイメージだったけど。


…しかし、もったいない。

3ポンドとはいえまがりなりにもラインを切ったわけだから、そこそこサイズのある魚だったんじゃ…。



…ここに移動してきて早々のアタリに浮かれたのも束の間、天国から地獄の二人。

どんよりとした空気がボートの上を覆います。





「おーい」



…あ、かいてんさんと勅使河原さんだ。

そうか、またいつの間にかワカタンと連絡をとっていたらしい。



―そっちはどうですか。


かいてん「全然ダメ」



―ダメかー。こっちも全然。


かいてん「厳しいし、もう、諦めて早上がりしちゃおっか」



―え、いや、それは無いわ。

ワカバヤシ「無いわ」



…ハモる僕とワカタン。



今日は昨日よりさらに渋い、それは間違いないけれど、少なくとも投げていれば可能性はあるだろうに。

まして、今そこでワカタンが掛けたのを僕は見ている。

ここで諦めて帰るなんてとんでもない!


昨日、正解かどうかはともかくとして、僕も7gのキャロで一回魚を掛けている。

しばらくは他のことは考えず、ひたすらキャロを投げ倒してみよう。


考えがまとまると、俄然やる気がみなぎってくる僕である。

大体が、あれこれと色々考えすぎなのだ。


ベイトがどうの、スピニングがどうのと、

しばらくはいったんこれをやると決めたら、あとは雨が降ろうが槍が降ろうがやり通せばいいのだ。

そんな簡単な話だったのだ。


一人でうんうんと頷いて、ではまずはあの先に見える(見えないけどあるであろう)ブレイク目がけて投げてみようではないか!



ワカバヤシ「…あ、雨が強くなってきましたよ」




…え?












…ドザァァァァァァァァァァァァッァァァァァッァ!!!!!!!










…ヒイイイ!!





…ちょっと雨の粒が大きくなったかな、と思った瞬間には、目の前が真っ白になるほどの大雨が湖上を覆いつくしています。

さきほどの決意とやる気は既にどこかにすっ飛んで、慌てて避難先を探します。



…あ、そういえばここに来る途中に立木のトンネルみたいになっているところがあった!


急いでエンジンを掛け、その場所を目指すと既に先客がお一人。


…でも、まだ入れるスペースがありそうかな?

と判断した僕は迷わずそのスペースにボートを突っ込みます。





…ふぅ、やはり山の天候はどう転ぶかわからんなぁ。

やれやれ、どうにか雨を凌げそうだと、ワカタンと話をしていると、





かいてん「きたぁ!!」










…え?




声のする方向を見やると、同じようにオーバーハングで雨宿りをしていたらしいかいてんさんが、

雨が弱くなるまでの暇つぶしだったのでしょう、たまたま投げたリグに魚がヒットした模様。


さっき、かいてんさんから聞いていた話からすると、かいてんさんは今日これが初ヒットのはずです。


え、マジで?マジで?と見守っていると…、







かいてん「あーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!」













…バラしたか。


遠目からでも、落胆しているかいてんさんの様子が手に取るようにわかります。



―しかし流れが悪いなぁ。

さっきのワカタンの一匹もそうだし、ただでさえ渋い中での、せっかくヒットなのに…。





雨が弱まり、オーバーハングから出た僕たちはこれからどうしようかと相談します。


―どうしようか、さっきワカタンが掛けたところに戻る?

ワカバヤシ「や、このままあっち側に行きましょう」


…ワカタンが指差したのは、方角的には北の方。

こういう言い方が適当かはわかりませんが、ダムでいうところのダムサイトにあたるような、だだっ広くて水深のあるエリアがある方向を指差しています。


―あっち、って、ちょっと深い感じだよね。

ワカバヤシ「はい、岸際の浅いところと、沖側の深いところと両方できるかと」


…ふむ。

普通、自分が魚を釣ったり、バラしたりしたポイントに気が向きがちなものだと思うのですが、ワカタンはあっさりとそれを見切りました。

これが、一つのポイントに固執することは良くないという経験則によるものなのか、本人の性格的なものなのかはわかりませんが…。


特に反対するだけの理由もない僕は、


―わかった、んじゃそっち行ってみようか。


と同意して、最南のシャロー地帯から抜け出します。



どうやら、かいてんさんと勅使河原さんもこの辺りを見切って移動するようです。

エンジンを掛けて、大きく移動するつもりらしい。


僕らはエレキで流しつつ、ゆっくりと北上していくことにします。



しばらくはキャロで通す、と決めたことを思い出した僕は、それをひたすら岸側に向けて投げ続けます。

時折、ウィードに引っかかっては引きちぎりながら、黙々と投げ続ける横で、ワカタンはライトキャロやネコリグなど、色々なリグを試しているようです。


…しばし、沈黙の時間が流れます。


ひたすら無心で岸の方向へキャロを投げ、底を探り、回収する。

おそらく、ここ桧原湖へ来てから100回以上は繰り返している作業を、黙々と続けていきます。


…シンカーが、またウィードに引っかかった感触がありました。

軽くロッドをゆすっても外れなさそう。


ロッドを手前に引っ張ってウィードをブチブチと引きちぎります。



瞬間。











…ゴッ!!







…え、と思った瞬間には体が動いてアワセを入れています。

魚なのかどうなのか、その時には半信半疑だったのですが…、







…魚だ!!




ロッドの先に伝わってくる生命感。

間違いなく魚の感触です!



…が、どうやら中途半端にウィードに絡まったままらしい。

ビンビンとロッドには魚の反応が伝わってきますが、巻いてもロッドが曲がるだけで寄せられない。

ベイトロッドのパワーに物を言わせて、無理やりロッドを引き寄せてウィードを引きちぎります!



…ウィードのちぎれるブチブチとした感触が伝わると同時に、魚が走り出します。


―良かった、バレるかもとちょっとだけヒヤヒヤしてしまった。


でも、こうなればもう安心でしょう。


ふと横を見ると、いつから気づいていたのか、ワカタンが心配気に水面を見守っています。



ワカバヤシ「頼む!頼む頼む!」


今日は自分も釣っていないというのに、ワカタンが僕のために祈ってくれています。

そして魚が寄ってきたと見るやいなや、ランディングネットを構えて、


ワカバヤシ「ビジ夫さん!いいですよ!」


―サンキュー!ワカタン!















桧原湖





…ヨイショーイ!!



―やー、嬉しい!めっちゃ嬉しいよ、ワカタン。


ワカバヤシ「おめでとうございます!」


―…いやー、ありがと。お陰で釣れたよ。

ウィードだよ、ウィード、引っ掛けてちぎった瞬間に喰ったねー。

喰わせた感じじゃないね、リアクションだね、たぶん。



…釣り上げたばかりの興奮が冷めやらぬ僕は、一人ベラベラとワカタンに話しかけます。



ワカバヤシ「良かったですね。じゃあ、これが初スモールってことで大丈夫ですか?」


―大丈夫です!



…良い返事をして、これでようやく、長かった僕の桧原湖リベンジがここに終結したのでした。


いやー、しかし長かった。本当に。

スモール一匹釣るために、何年かけているんだと自分のヘタレ加減に我ながらびっくりする。



…あらためて魚を見やります。

―30ちょっとくらいかな、35はないくらいか。


…おそらく本当はワカタンが言うように、キャロをやるなら2.5gくらいのシンカーでウィードの上に乗せながら探るのが正解なんでしょう。

ところが、この魚ばっかりは5gのシンカーでウィードの根本まで落としたことが功を奏しました。

ウィードに引っかかり、無理やり引きちぎったアクションに反応したバスが、リアクション的にワームに飛びついたのでしょう。


そして、ロッドのパワーとラインの太さのどれが足りていなくても、この魚を取ることは難しかったかもしれません。

その一方で、正解のタックルを使っているワカタンはラインブレイクしてしまったのですから皮肉なものです。




…まぁいずれにしても、僕にしたら上出来でしょう。


―本当にありがとう、と形式だけではないお礼を言って、スモールをリリースします。

手を離してやると少しの時間、ボケっと水面に浮いていたスモールは、ふと何かに気がついたように水底へ戻っていったのでした。




…さぁ、ともかくも一匹釣り上げることができました。

ただ、ここまでかなりの時間をキャロに費やしてようやくの一匹。

それも、喰わせた気がまったくしない、事故のような一匹です。


たぶん、このままキャロを続けていても状況が良くなることはないし、とは言っても、じゃあ何をすればよいやら検討もつかない。


うーむ、としばらく考え込みます。




…そもそもが、昨日からそれなりに色々と試してみたけれど、キャロ以外に反応があったのはメザシを釣り上げたステルスペッパーしかない。

それも、反応するのは似たようなチビばかりで、大きな魚が反応をしたことは一度も無かった。


何か、考えをガラッと変えて…、



…いやいや、待て待て。

あったじゃないか、そういえば。

僕自身が釣り上げる気が全く無いまま使っていたけれど、反応があったルアーが、あったじゃないか。








…ジョインテッドクロー!



これが喰わせのメインルアーになるわけないと、完全にサーチ用として割りきって投げていたから考えから抜けていたけれど、

これにチェイスする魚をどうにか喰わせるのが、実は一番近道だったりしないのか。



…もしも、さっき釣り上げた一本が無ければ、こんなことを考えたところで本気でジョイクロで釣ろうなどとは思わなかったでしょう。

僕は桧原湖で一本釣った男だと、この大自然を相手に勝った男なんだと、その意味不明の余裕が、ジョインテッドクローを真剣に使って魚を釣ってみようという気にさせたのでした。



思いつくが早いか、XHのロッドを手にとって岸側に投げてみます。

チェイスが無くてもしつこくしつこく投げ続けると…。



…あ、そこそこサイズが追いかけてきた!

やっぱり、デカいのもいるにはいるんだな、喰わないだけで。


…さて、ここで巻き続けてもピックアップ直前に見切られるのがいつものパターン。

こいつを喰わせるにはどうしたらいいか。



…ふと、巻くのを止めてみます。





…あ、至近距離まで寄ってきて…、

喰うのか?まさか、こんなにアッサリと…、















…プイッ!










…ですよね。はい、分かってました。





考えろ、僕。止めてダメなら…、


あ、またチェイスがきた!


寄ってきたタイミングを見計らって…、









ジャーク!


また寄ってきたところを…、



ジャークジャーク!

















…ゴッ!!





!!!




え!?


喰ってきた!!!




…けど、乗ってない、バイトミス!?




うわぁぁぁぁ、今の、今の、超惜しい!


ジョイクロで喰わせてみようって自分で考えてやっておきながら、心のどこかでは、正直まさか、って気持ちがあった。


…でも今の、喰いどころが良ければ乗ってたんじゃないか。

うおぉ、マジかー、悔しい!




…しばし一人で悶絶します。



ここにきて、まさかのジョイクロ。

実は僕のできる範囲で一番可能性がありそうだったのがジョイクロだったという、この展開。


時間を見ると…、15時か。

帰着まであと1時間。



…あまりにも、気がつくのが遅すぎました。




…その後、勅使河原さんが短時間で2本釣ったという連絡を受けて、ベイトを追いかけているバスを狙ってみたりしたものの反応もなく、

浮島周辺のシャローにジョイクロを投げまくってジャークさせまくってみたりしましたが喰わせるまでには至らず、

無情にもタイムアップとなってしまったのでした。




2日間を最初から最後までジョイクロで通していたらどうなっていたか?


…というのは結果論ですし、考えてもしょうがないことなのですが、

でも、どうしてもそう考えてしまう僕がいます。


…あのルアーを追ってくる、大きなバスをもしも取ることができていたなら…。


帰りの車中、運転しているかいてんさんの横で缶ビールを開けながら、悶々とそんなことを考え続けます。

ずるいずるい!と騒いでいるかいてんさんにスルメを与えて大人しくさせ、窓の外を見ると既に磐梯山は後方にあり、モヤがかかってその全景はぼやけています。


今日、一匹釣ったことで来年また桧原湖に行くという口実は無くなってしまったわけですが、

次にまたここへ来るのはいつになるのでしょう。


…2日もやり続けておきながら、もう次に来るときのことを考えてしまうのは、釣れようが釣れまいが関係の無い、桧原湖自体の魅力があるからなんでしょうか。

だいぶ渋かったけど、あの山々に囲まれながらロッドを振っているだけでも、関東で荒みきった僕の心も段々と癒され…、



かいてん「そういえば、初日の釣果なんだけど」



…うん?


かいてん「一番釣った人は40本以上釣ってたらしいよ」









…ハァ!?



―嘘でしょ、そんな状況じゃなかったじゃん!

周りでもそんなに釣ってる人なんて一人も…、




…あ。


初日、そういえば出船早々に釣ってる人を見た。

湖の沖、ど真ん中をバスボートでゆっくり流しながらスピニングでドラッキングしていた…、



…あれか!

もしかして、あれが正解パターンだったの!?


そうか、そりゃ、僕らは岸の方ばっかり向いてやってたんだから、沖で釣ってる人がいても気がつくわけないよね。



…いやー、しかし、出ないわ。

あの釣り方は出ない。

僕の引き出しのどこを開けても、あの釣り方は出てこないよ。



…40本か。


もし事前にその釣果だけ知っていたとしたら、

「え、桧原湖釣れ釣れじゃん」などと軽く考えていたであろうことは間違いありません。

「そんなんヒョイヒョイと2,30本釣って、じゃあ後は喜多方ラーメンでも食べにいくか」なんて、能天気な発言をしていたに相違ありません。




…恐ろしい場所だ、桧原湖。

一本釣ってリベンジしたとか言っていた自分が恥ずかしい。



…次に行く時にはもう少し事前に勉強してからにしよう。

いつになく、謙虚な気持ちになった僕だったのでした。





…ということで、なんとかかんとか、滑り込みセーフという感じでようやく桧原湖で釣り上げることができた僕だったのでしたが、

「これで晴れて桧原湖はクリアです」とは、とてもではないですが、言える心境ではないのでした。


釣った一本にしても、僕は別にウィードに絡めてリアクションを狙ったわけでもなんでもありません。

ただひたすら、ひたすらキャロを投げては回収する作業に勤しんでいただけなのでして、

ウィードに絡まったリグを引きちぎって外した瞬間に喰ってくることなどは、はっきり言って想像の範疇の外だったのでした。


最初は誰でも、釣り上げるバスは偶然です。

しかし、その偶然を確信に変えるのがバス釣りです。


僕は桧原湖においてようやくその一歩を踏み出せたというだけなのでして、

そういう意味では、僕のスモールマウスへの挑戦はむしろここから始まるのだという気がしてならないのでした。


…さて、ここ数年の恒例にしていた桧原湖への年一回の遠征ですが、じゃあ来年からはどうしようか。

同じようにまた桧原湖へ行って、今日感じたことを胸に新たなチャレンジをしてみるか。

それとも…。



まぁ、考える時間はあと1年あるわけで、それまではまた関東で、いつものラージマウスに胸を借りて、

コテンパンに勉強させてもらいながら、ケチョンケチョンに打ちのめされながら、

とにもかくにも明日から心機一転またがんばっていこうと、そんなことを考えている僕だったのでした。

―水、去年よりだいぶ多いよね。

ワカバヤシ「多いですね」

―去年、魚が付いてたところには付いてないかもしれないね。

ワカバヤシ「レンジ変わってますもんね」



7月8日の早朝。

この日、僕は約10ヶ月ぶりとなる桧原湖の湖上に浮かんでいました。

同船しているのは釣り友達のワカバヤシさんことワカタン。

昨年の秋にも僕は釣り友達のかいてんさんとワカタンを引き連れて、この桧原湖を訪れていたのでした。


昨年、訪れた時には水上に突き出していたはずの岬が、今では1mほどの水深に隠れてしまっています。

―去年はああしてああやってワカタンが釣ってたから、今年も最初は同じようにやってみて…、

なんてことを考えていた僕は様変わりした桧原湖を目にして早々に面食らっていたのでした。




―2016年も、桧原湖に行くぞー!

…と宣言していたのは、実は昨年の桧原湖釣行直後のことで、

とにかく僕としては、桧原湖スモールを一匹でも釣り上げるまでは毎年の恒例行事とするつもりでいたのでした。


本来、僕の個人的なリベンジに無理やり付き合わされている立場のかいてんさんとワカバヤシさんのはずだったのですが、

「知り合いに桧原湖で釣れてるワーム教えてもらったよー」とか、

「スピニングを2本にするか3本にするか迷うなー」とか、

僕以上に楽しそうに準備を進めているらしい二人の様子を見ていると、その手の罪悪感は感じずにすんだ僕だったのでした。



勅使河原「ビジ夫さんはタックルどうするの?」



…そして、勅使河原さんです。

前回のフローター釣行の際、今年も桧原に行くんですよと、ふと話をしたことがキッカケで、自分も参加したいと言っていただいたことによる参戦です。

昨年、ご一緒したかいてんさんとワカバヤシさん、

そして今年はこの勅使河原さんを加えて、4人で桧原湖に行きましょう、ということになっていたのでした。



―僕ですか。タックル5本なら、10lb・12lb・14lb・16lb・20lbのタックルですかね。








かいてん「また来年も宜しくお願いします」





―どういう意味だ、

なんてやり取りをしながら、僕自身もリベンジはひとまず置いておいて、一年ぶりの桧原湖遠征に胸を躍らせていたわけだったのでした。



…そして、なにより今回は…、

ワカバヤシ「バンガローも予約しましたよ」

そう、現地に宿泊して1泊2日で桧原湖を釣行するという、なんとも贅沢な計画を立てていたのでした。

7/8の金曜日は有給をとり、その前日、木曜の仕事終わりにそのまま集合して桧原湖に向かい、一日釣行してバンガローに宿泊、翌日も朝から一日釣りをしてそのまま帰宅するという、ひたすら釣りのことだけを考えていればいい、贅沢な2日間です。


前回の経験を活かして、ボートはエレキのみではなくエンジンも付いたアルミボートを借りることになっています。

魚探も2つ借りて、装備は無免許艇としてはフルスペックに近いでしょう。


―これで2日やりきって、もしも釣れなかったとしたら…。

そのときはもう、参りました、ゴメンナサイと謝るしかないでしょう。


桧原湖も名にし負うメジャーフィールドですから、土日祝日は湖面も賑わうであろうことを考えると、平日釣行となる初日の7/8がよりチャンスの多い日ということになるでしょう。


―初日が勝負だな、初日で釣れないと…、


…逆に、非常に厳しい展開になることが予想されます。

それだけに、この昨年とは様変わりした桧原湖に僕は早くもデンジャラスなスメルを嗅ぎとっていたのでした。


ボート屋



昨年と同じボート屋さんから出船し、

昨年、ワカタンが釣った岬を二人で同じように撃ってみますが反応はありません。

桧原湖は縦長の丸みを帯びた形の湖で、千葉の人工ダム湖のようなウネウネクネクネとした地形変化はありません。

全く同じような岸際が延々と続いていく光景をみると、果たしてこれを岸に沿って撃ち続けていくのが正解なんだろうかと、自分のやっていることに自信がもてなくなってきます。


水上の景色は変化が無いように見えても、魚探を確認するとせわしなく水深が変化しているようですから、

地形の変化を狙うというなら、岸に注目するよりも魚探に注目していった方がいいのかもしれない。



…ふと、周囲のバサーがどんな釣りをやっているのか見回してみると、

僕らと同じように岸に沿って狙っている人もいれば、水上からは一見何もなさそうな沖に張り付いている人もいる、と様々です。




…あれ?あの人、何をやってるんだろう。

なんとなく目についたバスボート。


桧原湖はエンジン船の使用が認められている湖ですので、湖上には実に多くのバスボートが浮かんでいます。

持ち込みか、レンタルなのかはわかりませんが、手こぎ船や僕らのようなアルミボートを上回る数のバスボートが、北へいったり南へいったりとせわしなく走り回っています。

そんなバスボートが近くを走り抜けていく都度、バスボートが立てる引き波に揺られて安定感に劣るアルミボートはグラグラと傾き僕らを不安にさせるのですが、

エンジンを使わずにエレキだけで沖をゆっくりと移動しているらしいバスボートが目について、何をやっているのか気になったのでした。



…あ、ひょっとしてドラッギングしてるのかな?



ドラッギングとは、水中に落としたルアーを船の動力で引っ張りながら魚がかかるのを待つというテクニックですが、

あんなに沖で、何を目標にドラッギングしているんだろうか。

まさか、何も根拠が無いままルアーを引っ張っているわけでもないでしょうが…。


…そんなことを考えながら見ていると、唐突にバスボートの船主が持っているロッドが折れ曲がります。

どうやらスピニングロッドでドラッギングしていたようで、ドラグを懸命に調整しているらしい光景が遠目からでもよくわかります。



ワカバヤシ「あ、あのバスボートの人、釣ってますね」

―うん、見てたけど、どうもドラッギングで釣ったみたい。


ワカバヤシ「ドラッギングかー、魚探で何か見えてたんですかね」

―どうなんだろうね、ベイトなのか地形なのか…。



…釣っている人がいると、ついその人の真似をしてみたくなる、

というのが初心者バサーの一つの特徴だと思われますが、

既に初心者から初級者にクラスアップしていた僕の過去の経験から照らしてみると、

そういった場合、真似をしたところでろくな結果にならないということがわかっています。


終わった後の惨憺たる結果に打ちひしがれながら、ああ、こんなことなら人真似なんて慣れないことをやるもんじゃなかったと、

自分でやろうとしていたことを最初から最後まで貫き通していればよかったと、

過去の苦い経験の数々から、そう後悔する結果になることが火を見るよりも明らかです。


そんな未来予想図が一瞬で脳裏に浮かんだ僕は、

そうやって釣っている人がいた、くらいに記憶しておいて、僕らは僕らで自分たちが釣れそうなやり方を考えることにしたのでした。



―こっちの岸って、風が当たってるんだよね。


僕らがボートを借りた場所は桧原湖の南西にあり、僕らは西側の岸に沿いながら北上していたわけなのですが、

その時の風は東から西に向けて吹いていて、岸からある程度距離をとったつもりでも、いつの間にかボートは岸際スレスレまで接近してしまっているのでした。


操船に支障をきたすほどの強風というわけでもありませんが、いつの間にか岸に近づいて行ってしまうよりは、沖に離れて行ってしまうほうがまだ釣りもしやすかろうと、

僕は東側の対岸へ移動することを提案したのでした。


昨年釣れたバス(といっても、釣ったのはかいてんさんであり、ワカタンだったのですが)は全て西側の岸で、

東側はロッドを振ったことすらない、まるで未知の領域だったのですが、



ワカバヤシ「いいですよ、別に」


釣れそうな気配というものが感じられていなかったのか、あっさりと同意したワカタンにエレキを引き上げてもらって、

エンジンを始動した僕はその舵を東側にきったのでした。




…湖を横断して東側に到着してみると、思った通り風裏になっていて水面は緩やかです。

岸際の水深は3m程度。

そこから10mほど沖に離れた地点で水深5mから6m程度。


水深のあるポイントの釣りは経験が少なく苦手なのですが、この程度の水深ならなんとかなりそうな気がします。


しかも、考えてみれば午前中は東側にシェードができるのが当たり前で、

スモールがラージほどシェードを気にするかどうかはわかりませんが、少なくとも釣り人にとっては、午後に向けてこれから気温が上がっていく中、少しでも影の中で釣りをできる方がありがたい。



ワカタンは昨年実績のあるフットボールジグを投げ始めました。

僕はどうしようか…。


7月の上旬。

釣りをするには一番いい時期のはずです。


どうしても表層系の釣りを試してみたい僕は、フローティングミノーを使って探っていくことにしました。



…そのまま東側の岸を北上していきますが、どちらにも反応はありません。




―あ、あそこ、ちょっとだけワンドになってるね。

ワカバヤシ「ほんとですね」


―よさそうだけどね、人入ってないね。やってみていい?

ワカバヤシ「いいですよ」


一気にワンドの中に入っていきます。


ワンドの中は薄暗く、橋脚が一つポツンと立っていて、奥にはゴミだまりもありいい雰囲気です。

ただそれはあくまでも「ラージを釣るなら」という僕の経験則に基づくものですから、スモールが同じように付いていてくれているかは不透明です。



―ちょっと、サーチしてみてよい?

ワカバヤシ「いいですよ」


ダメとは言われないことがわかりきっていた僕は、聞きながら既にタックルを手に取っています。

XHのロッドの先についているのは、ジョインテッドクロー。


これをワンドの奥にブン投げて、そのままタダ巻きしてみます。


ワカバヤシ「ちょ、ビジ夫さん、サーチってジョイクロすか、…あ」


―あ。




表層をヌラヌラと泳いでくるジョイクロのすぐ後ろに、35㎝ほどのバスがチェイスしてきているのがはっきりと目視できます。

ボートに近づくとサッと離れて行ってしまいましたが、やはり、いたのか。



―…いたねぇ。

ワカバヤシ「いましたねぇ」


―今の、もったいなかったかな、他のルアーだったら喰ってきてたとか。

ワカバヤシ「どうでしょうね、どのへんから出てきたんですか?」


―あの奥のゴミのとこだね。




…しまったなぁ、もうちょっと丁寧にやっていけばよかったか。

ここまで全く反応が無かったからいきなり大雑把にやりすぎたかもしれない。


それこそ、ワカタンがゴミのど真ん中をジグで貫いていたなら、一発で釣りあげることができたかもしれません。


ただ、スモール相手にもジョイクロがサーチルアーとして機能することがわかったのは収穫です。

魚がいるのかいないのかわからない場所では、積極的に投げていってよさそうです。




さて、いずれにしても、魚がいることはわかりました。

まさかさっきの一匹だけってことはないでしょうから、何を投げれば釣れるだろうか…。



思いついたのはステルスペッパーです。

アピール力は低いのですが、魚がいることがわかっている場所に投げさえすれば、思わぬ喰わせの力を見ることがあるルアーです。


サイズは90mmと70mmを持ってきていましたが、より喰わせの力が強い70mmを試してみましょう。


ワンドの奥にキャスト。

―あまりゆっくり巻きすぎると、この透明度では見切られてしまうかもしれない。


水面から飛び出さないギリギリのスピードで巻いてみます。




…すると、










…ガッ!




!!






―きた!ワカタン!



ワカバヤシ「マジすか!」



―ステルスペッパー喰った!















…あ、けど、ちっさいな、これ。



水面を横に体を傾けつつ、近づいてくる魚影は20㎝あるかないかというところ。

初スモールは嬉しいけど、もうちょっと大きい魚を掛け…、あ、



…急にテンションの戻った竿先から伸びているラインの先には、いつの間にかステルスペッパーしか付いていません。



―ありゃ、バレちった。

ワカタン「惜しかったですね、初スモール」


―いや、小さかったし。初スモールはもうちょい良い魚を釣りたかったからちょうどよかったかも。


…魚の反応を得て、急に強気になった僕は昨年までの立場も忘れて生意気なことを言います。


気を取り直して、同じようにワンドの岸に沿ってステルスペッパーを投げ続けると…、





…いるいるいる!




どこからかワラワラとバスが沸いて一斉にステルスペッパーにアタックしてきます!












…しかし、



ワカバヤシ「チビばっかりですね」





…うん。


そうか、表層で食い気があるのはチビばっかりってことなんだろうなぁ。

ジョイクロくらい集魚力があるルアーを投げないと、底からデカいのは引っ張ってこれないんだ、たぶん。



…ただ、今まで無反応の時間帯が長かったことを考えると、チビとはいえ反応があるのはそれなりに楽しい。

ほらほら、ワカタンみてよ凄いよ反応が、なんて言いながらステルスペッパーを投げ続けていると、




ビビビッ!!!





―ああ!乗った!


ワカバヤシ「…。」




ビビッ!ビビビッ!




…いや、これバレてくれちゃって構わないんだけど…。


ワカバヤシ「…。」






ビビビッ!ビビビビッ!





―うわ、これしっかり喰っちゃってるわ…。




やむなく抜きあげます。












メザシ





ワカバヤシ「…。」





―わかってる。みなまで言うな。


ワカバヤシ「ルアーと同じくらいじゃないですか」



―わかってる。わかってるって。


ワカバヤシ「いいんすか、ビジ夫さんはそれで」



―…僕だってこんなことならさっきのバレたやつで初スモールだとか言いたかったわ!



…そんなことを続けてればそういうことになるのは分かりきってるだろう、

と言いたげなワカタンの厳しい視線に軽く逆ギレします。


あらためてステルスペッパーの先にぶら下がっているスモールを見やりますが、

やはり、大きさは10cmも無いくらいでしょう。


…ああ、別にキミが悪いわけではないんだけどね、

でも、もうちょっと空気を読んでもらってもよかったかなぁ。

お父さんとかお母さんとか、近くにいなかった?いない?

ちょっと呼んできてもらえるとありがたかったんだけど…。


…リリースすると、ピチャっと音を立てて家に戻っていくチビスモール。



―これが初スモールかぁ。


…ハァ、と溜息が漏れます。





…まぁ、でもここで同じことをやってても良い魚は釣れてこないだろうというのはワカタンに同感です。

ワンドを出て、そこから北へ向かってやっていくことにします。



ワンドから少し北、コンクリの入った護岸。

桧原湖では珍しいポイントです。


落差があって、房総ダムの岩盤を思い出します。


試しに付けっぱなしのステルスペッパーを投げてみると、先ほどのワンドと同じようにコバスが浮いてくるところをみると、

ここも魚が付いている可能性が高いんじゃないだろうか。



―ヘビダンを試してみようかな。



そう思いついて、MHのロッドをガサゴソしていると、






ワカバヤシ「あ、あ、喰いましたよ!」


―えっ!?



驚いてワカタンの方を見やると、確かにロッドがしなっています。


ワカバヤシ「(さっきのビジ夫さんのメザシみたいなやつと違って)まともな魚ですよこれ!」



…カッコ書きの中のワカタンの心情を正確に読み取った僕は、それはどういう意味だ、と言いかけますが、

ワカタンのベイトロッドが異常にしなっていることに気がついて、そっちの方を問いかけます。



―え、それデカくない?



ワカバヤシ「そこそこ重いですよ、いい魚です!」




…いや、いい魚っていうかさ…。



すると、浮いてきた魚体が水面にギラリと光を反射させます。





…デカイ!



―いやいやいや、デカイでしょそれ、50あるんじゃないの??



ワカバヤシ「そこまでではないですよ、せいぜい45くらいでしょう。落ち着いてくださいよビジ夫さん」




…45?

いや、どう見てもそれ以上あると思うけど。



もっとも、そんなことを言い合っているよりちゃんとランディングさせるのが先決だと気がついた僕はランディングネットを手に取ります。



―いいよ!ワカタン!



ワカバヤシ「おりゃあああああああ!!!!」













49





―おおおおおおおおおおお!良い魚!

―フットボール?何gのやつ使ってたの?




ワカバヤシ「ビジ夫さん…」


―え?







ワカバヤシ「これ50あるかもしれません…」



―いや、だからさっきそう言ったじゃんか!


ワカバヤシ「落ち着きましょう。一回落ち着きましょうビジ夫さん」


…自分が落ち着け!と言いながらメジャーをセッティングします。





―いいかい?口先そろえーの、しっぽ開きーの…、











…49!!


うわあああああああ惜しい!!!





ワカバヤシ「ぐああ!」




―いやー、惜しいね。これ測り方次第で50って言う人もいると思うけど。


ワカバヤシ「いやいや、でも49でも大満足ですよ僕」


―そうだよね、これラージだったら55クラスでしょう。


ワカバヤシ「いやー、ほんと来てよかったっす。あざーす」



…ちょっと記念に僕にも持たせて、と言って持たせてもらうと、思ったよりも軽い。

なるほど、サイズに対しての重量はラージよりも軽いんだ。

そういえば、桧原や野尻の大会ではラージを選んで釣るプロもいると聞いたことがあるなぁ。




ワカバヤシ「来年は50になってまた釣れてくれよ!」



ワカタンがリリースすると、来年の50アップは水面でゆらりと身を翻し、水底へ消えていきました。









…ワカタンが49釣ったよと、かいてんさんと勅使河原さんに連絡すると、さっそく二人を載せたボートがやってきました。


勅使河原「どうやって釣れたの?」


―フットボールで岸際を撃ったら釣れた感じです。

そっちはどうでした?



勅使河原「1バラシのみだね」

かいてん「全然反応ないよ」



―コバスで良ければこの辺でステルスペッパー投げれば釣れますよ、

と偉そうにアドバイスして、この近辺でやることに決めたらしい二人を置いて再び移動します。




―思い切って一番北行ってみない?


ワカバヤシ「北っすか」



―うん、僕が初めて桧原湖に来た時に、嫁さんがお義兄さんにオカッパリの一番のポイントとやらを聞いてたんだけど、それが北の方にあるのよ。

ワカバヤシ「へー、別にいいですよ」


―なんか、キャロで広く探ると釣れるらしい。ボートだからアプローチの向きが逆になっちゃうけどね。


言いながらエンジンを始動して、舵を今度は北に切ります。




…実は、去年来た時にもその場所は気になっていたんだけれど、去年はエレキだけだったから諦めたんだよなぁ。


ボート屋さんがあるのは湖の南西。

そのオカッパリポイントは湖の真北。


エレキだけでその距離を移動するのはあまりにも無謀に思えたのでした。




…うーむ、やはり、そうなってくるとエンジンの存在は偉大だなぁ。


千葉のダム湖で釣りをしていると、エレキだけで湖を移動することが当たり前のような感覚になってしまいますが、

本来はこのスタイルのほうが当たり前なんでしょう。


エンジンで大きく移動して、エレキを使って細かく位置取りしながら釣りをする。


…あ、そう言えば印旛沼はエンジンもOKなんだったか。

新川をホームにしていながら、たった今までそのことを忘れていた。


いつか、印旛沼を同じように走り回りながら釣りをしてみるのも楽しいかもしれないなぁ。


…エンジンの振動で操作している左腕が痺れつつ、そんなことを考えていた僕だったのでした。







ワカバヤシ「ここですか?」


―そう。前に来た時はそこらへんにカバーがあったんだけど、無くなっちゃってるな。



…湖の最北に到着した僕たちは、さっそく周囲を確認します。



―なんか、ボート多くない?


ワカバヤシ「多いですね。有名なポイントなんじゃないですか?」



…先程までやっていた東側のポイントと比べると、明らかに人口密度(ボート密度)が高い。


―撃たれちゃってるかな。たぶんその辺にブレイクのラインがあると思うんだけど。



言いながら、少しずつ僕は思い出していました。



…そうだ、3年前に、嫁さんと二人でそこに立っていたんだ。

嫁さんが沖に投げたキャロで釣った一方で、僕はカバーの中から引きずりだしたデカバスをラインブレイクで逃がしてしまったんだった。


まさかその一件からスモールを一匹釣り上げるために、こんなことになるなんてなぁ。


…ちょっぴりノスタルジックに浸る僕。




ワカバヤシ「底にウィードが生えてるんですね、ここ」


―え、ああ、そうなの?


ワカバヤシ「はい、その辺とか」


―ああ、ほんとだね。だからポイントになってるのかな。



我に返って、キャロライナリグを用意します。


キャロライナはリグるのがとにかく面倒で、いったんリグってしまうと容易には他のリグには変えられません。


…うーん、たぶん、投げられる最低限のシンカーは5gだろうなぁ。

でも広く探るっていうなら7gくらい欲しい気がする。


…結局、7gを採用してやってみることにします。





沖から岸に向かってキャスト。



底を取りながら引いてきますが、やたらと引っかかる感覚があるのは、きっとウィードのせいでしょう。

時に力いっぱいウィードを引きちぎりながら引いてきますが、ややストレスが溜まります。


―自分で連れてきておいてなんだけど、これ本当に釣れるんだろうか。


キャロで広く探って…、というお義兄さんのアドバイスの裏には、なんとなく繊細な釣りの一面が見え隠れする。

僕が今やっているように、ウィードに引っ掛けてはブチブチと引きちぎるような釣りは、もしここにお義兄さんがいれば「ちがうちがう!」と言われてしまうのではないだろうか。



ワカタンは…、

どうやらネコリグを試しているらしい。


ああ、たしかにネコリグもいいかもしれない。

ネコリグの方がウィードに絡まる可能性も少ないかな?





ワカバヤシ「あ、喰った!?」




しなるロッド。










2



―おお、釣った。

やっぱり釣れるポイントではあるんだ。



―ブレイク?

ワカバヤシ「たぶんブレイクだと思います」



…僕もブレイクを意識してやってるつもりなんだけど。

やっぱりブチブチやりながらやってるのが悪いのか…。



―ここもあんまり広いポイントではないし、移動しようか。


ここから西に向けてやりながら南下していけば、ボート屋に戻るくらいには帰着時間かな?



気がつけば時間は正午をまわっています。

帰着時間は4時ですから、既に今日の釣行の半分以上が終わっていることになります。


ボート屋に向かう途中で寄ったセブンイレブンで買ったオニギリを頬張りながら、

再びエンジンを始動させた僕だったのでした。













…反応、ないねぇ。


ワカバヤシ「ないですね」




最北のポイントから西にぐるっと回りながら撃ち続けますが、全く反応が無い時間が過ぎていきます。

時折、サーチ用にジョインテッドクローを投げてみると、そこそこのサイズの魚がチェイスしてくることから、

「魚はいるけど喰わない」という状況のようです。


かと言って、喰わせ用にステルスペッパーを投げてもチェイスするのはチビばかり。

あんまり良い流れではありません。




ワカバヤシ「デカイのもいますけどね」

―いるねぇ。


水深1mのシャローに明らかな40アップが目視できますが、投げるルアーには何の反応も示しません。



―こっちが見つける前に向こうが気づいちゃってるんだろうね。

ワカバヤシ「この透明度ですからね…」



―でも、さっきワカタンが釣ったオカッパリポイントとここは覚えておいてもいいかもね。

明日また来てみる価値はあるかも。


ワカバヤシ「そうですね、明日また来てみますか」


―かいてんさんと勅使河原さんはどこやってるんだろうね…。



ワカバヤシ「一気に南下して戻ります?」

―そうだね、僕もちょっとトイレ行きたいからボート屋まで一気に戻っちゃおうか。


エンジンをかけて先ほど来たルートを逆戻りします。


途中途中、良さそうな場所があれば止まって撃ってみますが、やはり反応はない。


ワカバヤシ「今日、シブイんですかね」

―うーん、そうなのかも。この時期の桧原なんてバッコンバッコン釣れちゃって大変とか聞くんだけどね。



…そう、だからわざわざ皆、仕事の繁忙期の合間をぬって、この日を釣行日と決めたのに。

今日が特別なのか、それとも、根本的に釣り方が間違っているのか…。


ボート屋でいったん上陸してトイレ休憩を済ませると、かいてんさんに連絡をとります。



ワカバヤシ「南の方にいるみたいですね」


―じゃ、一回合流してみようか。向こうの様子も知りたいし。



…時間的に、南に向かったらそれが最後かな?

途中のポイントはすっ飛ばして合流を目指します。



ワカバヤシ「あ、あのボートかな?」

―おお、いたいた。どうですか、調子は?


勅使河原「なんとか釣れたよー、あのコンクリ護岸のとこで」


―ああ、ワカタンが49釣ったところ。


勅使河原「フットボールで釣れたよ」


…釣り方まで一緒か、あそこはやっぱり良いバスが付くポイントなんだろうか。

―かいてんさんは?


かいてん「この周辺で釣れましたけどね、でもシブイですね」


―ええー、せっかく来たのにそういうこと言わないでよ…。



…僕らは移動しますわー、と去っていくかいさんさんと勅使河原さん。


―どうしようか、ワカタン。



ワカバヤシ「せっかくだし、やってみますか」

―そうだね、かいてんさんが釣ったなら悪くはないポイントなんでしょう、きっと。




岸から30mほど沖にボートをキープし、周辺を探ってみます。

ここは遠浅の広いシャローになっているようで、岸から距離があっても3mほどの水深がずっと続いています。


ワカタンはスピニングにキャロをリグりだしました。


―それ、シンカーいくつ?

ワカバヤシ「2.5gかな?」



…2.5g!

そりゃ、僕には投げられないな…。


僕はリグりっぱなしになっていた7gのキャロで試してみます。


この一帯もウィードが生えているようで、投げるたびにリグがウィードを捉えて引っかかります。

我慢しながら投げ続けていくと、


ワカバヤシ「きた!」










3




―おおー、やるなぁ。


ワカバヤシ「2.5インチのシャッドテールに変えたら一発でしたね」


―シャッドテール?

シャッドテールか、持ってたかな…。


…ゴソゴソとタックルボックスを探ると、あ、あった。

ジャッカルのアイシャッドテール、3.8インチ。


2.5インチとは大きさがだいぶ違うけど、まぁ、シャッドテールはシャッドテールだし、大丈夫でしょう。


ワームを付け替えて、ワカタンが釣った方向と逆方向に投げてみます。

シンカーが沈んでいく感触が、底をとった瞬間、



…ゴゴゴン!


!!





―あ、あ、僕も喰ったかも!!



叫びながらラインスラックを巻き取って、

…せーの!




おもいっきりアワセます!








ゴッ!!






乗っ…










…フッ








え?






バレた!?



ウソでしょ、勘弁してよ…。





午前中のメザシから起死回生となるはずだった一本。


ガックリと肩を落としながらリグを巻き取ると、ワームにはしっかりと喰った形跡があります。


ワカバヤシ「結構、送り込まないと乗らない感じですよ。早かったかも」



…ええー。それなりに待ったつもりだったけどなぁ。




でも、ワカタンが言うとおりシャッドテールワームが正解なのかもしれない。

変えて早々に1バイトあったんだから、帰着時間までやり続ければ…、



ワカバヤシ「あ、またきた!」

ワカバヤシ「またまたきた!」





4


5








えええええええええ。


なぜ?なぜワカタンばっかり?


同じシャッドテールでキャロをやっているというのに。

違いといえば、ワカタンのシャッドテールは2.5インチで僕は3.8インチというくらいしかないじゃないか。



…いや、シンカーがワカタンは2.5gで僕は7gというのもあるか。

あ、それとワカタンはスピニングで3ポンドラインだけど、僕はベイトで12ポンドというのも関係あるだろうか。



…。




…結構違う気がしてきた。

いや、もはや別物と言っても過言ではないかもしれない。


ワカタンの釣り方が正解だというなら、ここで僕に挽回の芽はあるのだろうか?







ワカバヤシ「…ぼちぼち帰着ですかね」


―…だねぇ。


ワカバヤシ「なんとなく釣り方もわかったし、明日釣れますよ、きっと」


―うーん、いかんともしがたい釣り方の差がある気がしないでもないんだけど、これは気のせい?



…まぁでも一本釣ってるし、いいじゃないですか(メザシだけど)!

というワカタンに慰められながら、ボート屋さんに向けてエンジンを始動する僕だったのでした。














…桧原湖から銭湯に直行し、僕以外の3人は、ゆったりと湯船に浸かりながら、わいのわいのと今日の反省会をやっています。


勅使河原「まぁでもよかったじゃん。一応全員釣れたしさ」

かいてん「いや、1名は疑問符がつきますけどね。まぁ、いいですけど。本人が釣れたって言いはるなら」



…誰のことを言ってんだ、とは聞くまでもありません。


ワカバヤシ「いや、これで桧原湖クリアってことでいいと思いますよ。ビジ夫さんが良いと言うならですけど」


…ビジ夫さんって言っちゃってるじゃんよ。





―…ええい、今日のはノーカンだよ、ノーカン!!


かいてん「え!いいんですかビジ夫さん!来年も桧原湖でいいんですか!」



―なんで明日釣れない前提なんだよ。明日釣るわ!

ていうかね、よくよく思い出してみたら、あれスモールだったかどうかもわかんないし。

ひょっとしたらラージのチビだったかもしれないし。


かいてん「とか言って、あれでしょ?明日釣れなかったら今日のはスモールだったとか言い出すんでしょ?」








―それは、一考の余地があるかもしれないね。




全員「駄目じゃん」







…ということで、勝負の日と考えていた初日は非常に不本意な結果となってしまいました。

午前中に釣り上げた一本はスモールかラージかもわからない一本ということでノーカウントを宣言した僕は、

文字通り背水の陣として明日の釣行に臨むことになったのでした。


予報では明日の天気は雨。

今日、ワカタンが掴みかけたパターンは、明日には通用しないかもしれない。


でも、パターンが変わるからこそ、今日通用しなかった釣りが通用するようになるかもしれないじゃないか。

バンガローでささやかな酒盛りを交わしながら、そんなことを考えて床についた僕だったのでした。