初音ミク（はつねミク）は、クリプトン・フューチャー・メディア株式会社が提供するバーチャル・シンガーソフトウェアと、そのキャラクターです。初版は2007年に発売されました。彼女は「電子の歌姫」とも称され、自身が築き上げたボカロ文化によって、ネット発の音楽シーンに大きな変革をもたらしたことで有名です。
初音ミクは音声合成ソフトの枠を超え、多岐にわたるクリエイターたちが彼女の創作に参加することで、「初音ミク現象」と称される大規模なムーブメントを巻き起こしました。アマチュアから、プロ、企業にいたるまで、創作の連鎖に加わり、独自の文化を形成しました。
初音ミクは、歌声合成システムに歌手のイメージを与え、よりリアルな声を実現するというアイデアから生まれました。このコンセプトに基づいて、彼女はソフト自体をバーチャルアイドル（バーチャルシンガー）として位置づけられ、未来的なアイドルというコンセプトが与えられました。
その名前である「初音ミク」は、未来から来た「初めての音」という意味が込められています。初音ミクは単なるソフトウェアやキャラクターに留まらず、文化や音楽シーンにおける新たな潮流を作り出しました。
当時、ニコニコ動画ではゲーム「アイドルマスター」の人気を中心に、架空のアイドルをプロデュースするという活動が行われていました。そんな中、初音ミクは発売前から注目を浴び、需要を一気に取り込む成功を収めました。初期はカバー曲が主流でしたが、すぐにオリジナル曲も登場しました。
オリジナル曲の「みくみくにしてあげる♪」が投稿されたことで、初音ミクを題材とした創作活動が急速に増加しました。黎明期には初音ミクを歌詞の主人公にしたキャラクターソングが主流でした。しかし、ryoが作詞作曲した楽曲「メルト」がニコニコ動画に投稿されると、この曲が大きな人気を獲得し、状況は一変しました。
初音ミクのキャラクター性を前面に出した作品でなくても、楽曲の良さが評価されてボカロソングとして成功すると言う事が証明されました。「メルト」の成功により、その後はクリエイターたちの独自の世界観を反映した曲が注目を浴びるようになりました。
同時に、作曲家を含む楽曲制作陣も脚光を浴び始めました。従来、一般の音楽ファンは「歌手」に焦点を当てていましたが、ボーカロイドのシーンでは楽曲制作チームの情報にも注目が集まるようになりました。この動向は日本の音楽業界全体に影響を及ぼし、若いリスナーたちが制作チームにも意識を向けるようになりました。
初音ミクの人気は、ボーカル音声を自身のPC上で作成できることや、キャラクター性が分かりやすいことから急速に広まりました。ミクの個性はクリエイターたちの想像力をかき立て、彼女を用いた創作が急速に広まりました。
2008年には、3DCGソフト「MikuMikuDance」（MMD）が発表されました。このソフトの登場により、ニコニコ動画の利用者はボカロ曲をBGMにして、キャラクターがダンスを踊る3D動画を制作できるようになり、さらにボカロ界隈の活動は活発になりました。
初音ミクのキャラクターデザインはイラストレーターのKEIさんによるもので、1983年に発売されたヤマハのシンセサイザー・DX7にインスパイアされています。DX7はデジタルシンセサイザーの普及に貢献したヒット商品であり、初音ミクも同様に一時代を築く存在になることを願って、デザインに取り入れられました。
初音ミクのCV（キャラクターボイス）・サンプリング元は声優の藤田咲さんです。クリプトンは初音ミクを制作する際に約500人の声優の声を聴いた後、V2（バージョン2）に適した声かつ可愛らしい声を基準にして藤田咲さんを選びました。
ミクのキャラクター設定については、企画段階で考えられていた背景設定などは見送られ、キャラクターを色付けしすぎないことが考慮されました。その結果、最低限のプロフィールだけが与えられ、ユーザーたちが自由に彼女を創作の対象として活用することが可能となりました。
初音ミクは「一億総クリエイター時代」において一大ムーブメントを巻き起こし、文化の連鎖を生み出しました。アマチュアの表現が互いに呼応し合う新しい文化現象を生み出し、様々なコンテンツが互いに元ネタになって派生していく「N次創作」の現象を形成しました。
イラストやフィギュア、ゲーム、3DCGライブコンサートなど、さまざまなコンテンツがミクを中心に展開されました。「初音ミク現象」はネット発の一大ムーブメントとして注目を浴び、ボカロという音楽ジャンル・文化を築くと同時に、時代全体の転換点となりました。
その影響力は非常に大きく、彼女の存在は教科書にまで記載されるほどです。初音ミクは後の文化や音楽シーンにも深い影響を与え、新たな表現の可能性を示し続けています。
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