最初に断っておきますが、私はこの件に関してきわめて狭い範囲でしか知らず、他所の自治体・JAでは全然違うところもあると思います。


 各都道府県とか、あるいはもっと狭い地域単位で、その地域限定の郷土野菜と言うものがあります。名前だけのものもありますが品種そのものからして普通のものと違うことも多く、例えば夕張メロンや最近では宮崎のマンゴー「太陽のタマゴ」が有名です(太陽のタマゴは品質の規定はあるが品種的には特殊ではない)。各都道府県などが販売に力を入れ、成功しているものもあります。
 ブランドについてはもちろん近年新規に作られたものですが、品種としては昔からその地方のみに伝わるものを取り上げることがありますし、県なり何処なりが新品種を開発することもあります。


 さてうちはほとんど水稲だけの専業なんですが、数年前からとある郷土野菜を作っています。この野菜で困ったことになっていると言うか、個人的には何でみんな黙っているのかわからないくらい理不尽な扱いを受けていると思うほどなのですが、それは自分の器が小さいからなんでしょうね。
 販売契約の話です。


 その郷土野菜、しばらく前まではほんの小さな範囲でのみ作られ、地域の温泉旅館などで細々扱われていただけだったのですが、数年前に部会が作られ多少マシな規模で生産されるようになりました。
 で、何故かその時点でJAが出しゃばって来て、生産・販売に関する契約を迫ったわけです。この契約を結ばないと生産する権利を与えない、取引させないと言うような縛りで、これ自体も私には全く意味不明なのですが、その中に「生産物は有償・無償に関わらず個別取引をしてはいけない」という条項があります。つまり農家個人の采配で販売してはいけない、タダであげてもダメというもので、買い上げは全量JAが行い、市場に出すと言うものです。


 これでJAがしっかり営業や販売促進などやってくれればまだいいのですが、もちろんそうではないから問題なのです。この手の農産物取引の常として価格決定権は農家側には一切無く、全てJAの言い値で、当然納得できる価格とはかけ離れています。売れないから安くしてる、とか言うでしょうがそもそも高く売る努力が全く見えません。
 先に挙げたように自ら営業努力する権利すら取り上げられ(というか宣伝だけならしても良いだろうが現物をサンプルで配ることも出来ないし、そもそも宣伝にコストをかけても利益を得るのはうちだけでなく関係生産者全員&JA・市場であって個人的に割に合わない)、まるで納得できる話と思えないので何でそんなもんの言いなりになってるんだ?と周囲に聞いてみたりするんですが結局ほかの生産者(ほとんど小規模兼業農家)は自前の販売ルートなどもっていないし、それ以外の件でもJAとは様々につながりがあり、ご機嫌を損なうのは拙いと思うのもあるようです。

 なんか独禁法違反とか、そういうのに思い切り当てはまりそうな気がする事例なんですがね。優越的な立場からなんかを強要するのは良くないってのありましたよね。


 んでこんな事例はこの野菜だけなのかとか思うと、特にそうでもないようで、別の(当県では有名な)野菜にもそういう話があると聞きました。それの場合は生産者達の取組具合が異なり、なんでも個別の取引をしてはいけない条項はあるそうなのですが、全量を一旦JAに出し、それをすぐ自分達で買い戻し、その上でその野菜を自分達で売ったり加工品を作ったりしているそうです。で、けっこうな成果を挙げています。
 しかしそんな話を聞いて、すごい!と感心はしたくないのでありまして、いや取り組みそのものをけなす気はないのですが、つまりJAに余計なマージンを払う意味が全く理解できないのです。完全な無駄です。


 流通を統制したいという気持ち自体はわからない話ではなく、特に県が新規開発したような新品種を悪用されたりパクられたりするのは嫌でしょうから、ある程度の規制は必要でしょうがそれにしてももっといいやり方があろうにと思います。こういう仕組みが全国自治体・JAのスタンダードなのかどうかはわかりませんが、今のままでは守ることは出来ても(よほどの例外を除いて)発展させていくことは出来ないでしょう。単に箱入りで守るためだけに新規開発したわけではありますまいに


 正直この品種は販売が面倒くさすぎるし安いしで、実はほかの(他県産の)しがらみの無い品種に変更しようか検討中です。自分で売れるなら、地元産品種だというハクもつくし良いものだと思うんですが、喧嘩するのも馬鹿馬鹿しいので・・・。

 八ツ場ダムの件ですが、このダムの存否自体には触れません。興味がないので。


 で、朝のテレ朝「やじうま」見てましたら、東京新聞のコラムを取り上げていました。八ツ場ダムの上流には別の品木ダムがあり、そこでは治水保水云々ではなく水質のほうの管理をしていると。つまり上流の草津温泉や硫黄鉱山跡などのせいで、このあたりの川は「死の川」とも言われるほどの強酸性を示し、品木ダムで石灰水を投入して中和しているのだと。で、実はそれでも4割程度しか達成できておらず、下流には未だに酸性の水が流れている。
 それを受けてコメンテーターたちは「新しい事実が判明した」として、「酸性の水ならコンクリートを浸食するのだから、もし八ツ場ダムを作っても将来崩落するのではないか。なのにダム建設を進めるというのは一体なんなのか」というようなことを言いました。


 先にも言ったとおりダムそのものについては各方面が適切に判断すればいいと思いますが、私が気になったのは、こういう話を「今初めて明らかになった事」のように語る番組です。
 私はダム工事のことは知りませんが、それでも普通に考えて、建設業者は川の水質調査くらいするでしょう。その上で、耐用年数を決定して、それにふさわしい材質・構造を決定するでしょう。


 つまり東京新聞が伝えたような話は、テレビ司会者やコメンターや普通の視聴者にとっては初めて知ることなのでしょうが、それを現地の担当者とか業者が全く知らないとは思いづらい。それを無邪気に、どうせ知らないに決まっている、とでも言うような態度で紹介するのは明らかに専門家を舐めた不遜な態度ですがまあそんなのマスコミのデフォですわな。


 つまり朝っぱらから「やじうま」なんか見るほうが悪い、というお話でした。

 自分なりのまとめです。


○大前提:全世界の食料自給率は100%ではない。全世界の人口に対して全世界の食糧生産能力は足りていない。


○日本の食料自給率はほぼ40%。かなり低いとされる。理由は大きく分けて二つ。

 ・肉及び肉関連食品(乳製品、卵など)、油の自給率が低い・・・正確にはそれらの原料&家畜の餌となる穀物の自給率が低い。それらは高カロリーな食品ばかりなので、カロリーベース食糧自給率では大きく反映される。
 ・近年の食生活が、内食から中食・外食へ大きくシフトしてきた。特に中食(スーパーなどで買ってきた調理済みの惣菜や冷凍食品などを家で食べること)が非常に多い。内食ならばけっこう国産食品ばかりの献立も出来るが中食・外食の海外依存率は相当高い。


 対策としては、Aについては政府・農水省が様々に対応中。→けどたぶんダメ。
 Bについてはいわゆる食育で対応。→けどもう下火。


○自給率を上げるにはどうしたらよいか。

 前項目Aに対しては、
 ・麦・大豆・トウモロコシなどの生産を増やす。
  → 品目横断的経営安定化対策で対応。が、思うように資金が集まらず頓挫。
   → 減反廃止して米を大量生産し、トウモロコシなどの代わりに米を使わせよう。下がった価格は税金で補填しよう。 ←今ココ
    → (予想)いくら安く米を作ってもそれでもトウモロコシより高いので畜産業者打撃。米を作る生産者にとっても嬉しい価格&補助金ではないので打撃。なまじ米が大量に生産されるとそれと同じ比率で税支出もぐんぐん伸びやっぱり国庫も打撃。三方皆損。
      なおかつこの仕組みが理想的にうまくいくと、アメリカなどから大量に輸入している穀物の使い道がなくなるので廃棄あるいは取引停止、貿易摩擦拡大。
      飼料用米の一般食用への大量の横流し発生し、米業界全体がいろんな意味で大暴落。


 暗い予想は無視して、とにかく穀物を大量に作るために必要なのは。
 ・相当額の補助金(税金)。→要するに増税。
 ・遺伝子組み換え導入による超多収品種の開発。→狭い国土を有効活用するためには本来必須。というか今どき「感情のみを理由にして」遺伝子組み換えをかたくなに排除し続けるのも限界。
 ・水利。→八ツ場ダムが話題だが、実は穀物をさらに大量に作るには水が必要。農業が衰退した現在は足りて(余って)いるが、いわゆるバーチャルウォーターを国内で賄うと考えると日本の食生活に対して水資源は決して豊かではない
 ・輸入穀物の排除。→暗い予想とかぶるが、しかし少なくともやることはやらないと、生産した穀物または輸入した穀物がダダ余る。


 Bに対しては、
 ・食生活・食文化そのものの大幅な見直し。
  →焼き肉やフランス料理、イタリア料理などから人々を遠ざける。
  (最近は地元産の食材を使ったイタリアンなどもよくあるが、やっぱり限界があるし、むしろこだわる人ほど「イタリア風トマトソースならやはりイタリアのトマト」「パスタはデュラム・セモリナ」などとなる)


☆これらのことを踏まえて、つまりこれだけのことをやってまで食糧自給率を上げる必要はあるか??
○これだけのこと(いわゆる消費者に関連するもの)
 ・増税
 ・食費の高騰
 ・遺伝子組み換え食品適法化・導入
 ・焼き肉禁止
 ・etc


○そもそも自給率を上げることにどういうメリットがあるか/自給率が下がって何が困るか。
 ・個々の農家や消費者(と言うか、大多数の人々)にとっては、たぶんどうでもいい。
 ・自給率向上を公約に掲げた政治家・政党は喜ぶかも。
 ☆ただしそれは現在での話。


○近い未来の脅威。
 ・いわゆるBRIC’sやそれに続く国々の、購買力強化に伴う食料の輸入拡大。
  ・冒頭の大前提に書いたように、地球全体で見れば食料自給率は完全ではない。日本がいつまでも食料を輸入し続けられる保証はない。
   ・日本の場合、相手は要するに中国。→その人口はもちろん、未だにバスケットに守られて暴力的に強い人民元を背景にし、最近はすっかり食糧輸入国に。
    ・実例・数年前からのマグロの買い負けはTVニュースにもなり話題に。また同時期よりボルドーワインの大高騰(中国富裕層の大量購入による)
     ・そもそも日本は中国からたくさんの食糧を輸入していた。その中国がよそから食糧を輸入しだしたと言うことは・・・?


☆つまり現状はともかく、将来の買い負けに対する備えは必要だとは思う。
 ・ただし、未来の日本国の食糧事情に対する責任を担っているのは現政府。自覚されているかはアヤシイ。生産者・消費者は協力しなくてはならないだろうが主体ではない。
 ・タイミング的にはすでにかなり瀬戸際な予感。



 妄想もだいぶ含んだお話ですが。

 今号の「もやしもん」ではもうすでに自給率の話からは離れていますが、まあ流れなので。


 というわけで内容はとにかく読んでいただくのが一番早いんですが、現職の生産者や販売業者ではなかなか言えないような本音が書いてあります(まあ私はけっこう言いますけど(^^;)。・・・というか、ああいうことを生産者が言えないような社会の雰囲気こそが「悪の一翼」なんでしょうけど。
 「お客様は神様です」って言ってたのは三波春夫でしたか。相当独り歩きしている言葉ですが、良く解釈してもそれは営業側が消費者を神様として扱えと言う意味であって、消費者自身が神の如く振舞って良いわけではありません


 ところで話の中に、農家が出てきて「無農薬をやれば売れるってことはみんなわかってるんだがやらない。その理由は手間がかかるとか言うのは2の次で、実際にはいろんなしがらみが強くて出来ないんだ」とかいう部分がありましたが、これは、そうかな~~?と思います。有機で害虫増えて文句を言うとかいうのは実際ありますが(それは当然でしょう)、今時ならしがらみなんかそれほどでもない地域も一杯ありますし。
 やっぱり有機をやらないのは、手間がかかるから、それに加えて手間に見合うほどの評価がないからでしょう。だってなんだかんだいって結局、売れるのは安いものじゃないですか。


 それに「無農薬をやれば売れる」ってのも実は「悪の一翼」に近い風潮なんです。いつも言っていることですが、無農薬というのはしょせんは手段に過ぎないからで、手段だけを評価してその結果については評価しない(評価していないことに気づいてない)無農薬に意味なんかないからです。


 実は無農薬栽培が環境に優しい、安全性に優れる、味が美味しいなどというエビデンスはないわけです。なのになぜ無農薬がウケるのかといえば、「無農薬」というネームそのものがほとんど神秘的な価値になっているからです。「自然なお産」と全く同じです。
 で、それを受けてどういう商品が作られるかといえば、「無農薬でありさえすれば、あとの条件には頓着しない商品」です。例えば無農薬だが環境には優しくない食品や、無農薬だが安全ではない食品などです。実例としては前者なら遠い海外から膨大な燃料を使って輸入されてくる海外産有機食品、後者なら農薬ではない農薬もどきを使って作られたエセ無農薬食品が挙げられます。


 言っておきますが私は「無農薬食品」そのものに対して全く馬鹿馬鹿しいとか無意味だとか思っているわけではありません。自然なお産と同様に、消費者がそれを自主的に選び、満足しているなら全然OKです。ただ、他人に勧めるのはちょっと待て、いや勧めるのはまだしも農薬を使った慣行栽培や近代医療などをけなすなよと言う思いはあります。


 で、マンガでは消費者が情報を集め勉強することが大事だといいます。全く同感ですが、しかしかなり難しいです。なにしろ「情報を提供して欲しい、公開を進めて欲しい」などといっている人がいる限りはダメでしょう。
 だってその気になれば、例えば農薬に関する情報なんかは農水省のウェブページを見れば相当に詳しく載っているわけです。ほかの資料なんか要らないくらいです。なのに、まあ一部に過ぎないにしても特定の人は「農水省は農薬メーカーやJAに有利なように情報を改ざんしているから信用できない」とか言うわけでしょう。で、むしろムチャクチャに胡散臭い自称学者の言うことを信用しちゃうわけで、そういうのはもうお手上げです。ツルネンマルテイとか議員になっちゃうヤツまでいるくらいで。


 まっ話をマンガに戻すと、教授は「生産者は売りたい人に売ればいいんじゃない?」てな話をします。消費者に追従しすぎる体力はもうありません。
 ただ、政府が目指す農政は基本的に農産物の値下げです。それはつまり「さほど欲しがってもいない人に売る」戦略です。もやしもんで言ってたのとは正反対の手法ですが、やっぱり私はもやしもん贔屓だなあ。

 昨日のエントリの続きなんですが、どうも開業医優遇税制にはいろいろ事情があって、その内実はどうも私が想像したものとは違うようです。
 で、色々説明してもどうせうまく出来るはずが無いんで、よそ様のコメントをお借りします(^^;Yosyan先生のブログでの、元ライダー氏のコメント。


http://d.hatena.ne.jp/Yosyan/20091020


元ライダー 2009/10/21 00:34
そういえば、そもそも医師優遇税制が使えるのは診療報酬が年間5000万以下(未満?)の診療所でした。それ以上の診療所は使えません。
ですからウハクリは話の外でしたm(_ _)m

気を取り直して、仮に年間診療報酬が5000万円として計算すると、優遇税制によるみなし経費は3340万円となります。しかし、ふつうに法人や個人事業主として、普通に節税すればもっと多くの経費を計上できるんです。優遇税制を使わないほうが実際にはお得(納税額が少ない)なんです。

元ライダー 2009/10/21 06:16
いわゆる医師優遇税制は
診療報酬2500万円以下の72%
2500万円超~3000万円以下の70%
3000万円超~4000万円以下の62%
4000万円超~5000万円以下の57%
これらを自動的に経費とみなす制度ですから、実際の経費が例えば50%なら優遇と言えるわけです。確かに昔は諸物価に比べて診療報酬が高かったので実際の経費率は低く、優遇となっていたのでしょうが、今では昔発生しなかった経費(電カルとか)が発生するようになったり、不動産の取得・賃借にべらぼーな経費がかかるようになったりして、実際の経費率がみなし経費率を超えてしまったということです。特に、設備投資を減価償却中のクリニック、つまりほぼ借金返済中のクリニックではみなし経費以上に経費を計上できる(実際に経費がかかる)ので優遇税制もまったく優遇にならないということです。


 ・・・つまり開業医優遇税制の恩恵にあずかってたのは、建物や機械などのローンが全部終わっていて借金が無く、雇用も少なくついでに売り上げも少ない医院だと言うことですか。具体的には、地方で昔から開業してる年配の医師のクリニックなんかが当たりそうです。
 そういう所以外については「優遇税制」なんて有名無実化していますから元々適用していないでしょうし、税収増は本当に雀の涙になりそうです。


 というか真の目的は税収ではなく「優遇」と言う文字を消すことなのかな。この言葉、得体の知れない不快感だけはありますから。もっとも表で優遇とは書かない優遇のほうが気持ち悪くはありますが。