うちは麦や大豆は全然やっていないので、制度そのものについて余り詳しくないのですが。
経営安定化対策と言うものが何年か前から始まりました。米の場合は、それに加入すると毎年経営規模に応じて掛け金を取られますが、その代わり米の買い取り価格が10%を超えて下落すると、下落した分の80%を掛け金プラス補助金から充填すると言うものでした。(←間違い。最近5年の米価(ただし、1番高かった価格と低かった価格を除く)の平均よりも現在の価格が下回った場合、その価格に対して保障がある。10%を超えて下落すると、などといった縛りは無い)
麦や大豆などの場合はそもそも生産量に応じて、価格に下駄を履かせてくれる形で補助金がつきました。麦や大豆はそもそも価格がものすごく安い上に、面積あたりの生産量も米より少なく(生産原価は米よりはやや安いけど)、普通に取引されている価格ではとてもじゃないが商売にならなかったからです。
麦大豆を作っている農家は早速参加しました。これに参加したほうが儲かるからです(儲かると言っても、まあ何とかやっていけるってレベルですけどね)。
それが今年の春、品目横断的経営安定化対策と仕組みが変わりました。品目横断と言う名前がつけたされたのが変更点ですが、それまでは米なら米、麦なら麦と栽培品目ごとに掛け金・補助金のやりくりをしていたものが、全部まとめて一本化して、例えば米のぶんから上がってきた補助金を麦対策のほうに当てると言う制度になりました。
そしてこの品目横断を1年やってみて、事務局側からは財源の目処が立たなくて破綻寸前だと泣き声が上がっていました。すでに政府与党からは、制度の抜本的見直しをするとの発表がなされています。まだ始めて1年、と言うか1シーズンなんですけどね。
破綻しそうになったのは当たり前で、なぜなら、うちのような米専業の農家など、麦大豆をやっていない農家が全く参加しなかったからです。
我が家の話になりますけど、うちはもともとの経営安定化対策にも参加していません。そもそもJAには米を一切出してないので補助金などもらいようがないから当たり前ですが、もしJAと付き合いをしてても参加しなかったと思います。10%以上下落したら補填すると言う仕組みが曲者で、要するに毎年10%ずつ下落するならば補助金など一切もらえず、単に掛け金だけ取られるなんて状況がみえみえだからです。実際、毎年の米価下落率はきれいに8%前後に抑えられています。
米価って奴は市場経済の影響を受けているように見せかけて、実際は全農の胸先一つで決まっているようなものなので、その程度の操作は楽に出来るんですね。
どこでもそうかもしれませんが、農業の場合、補助金とかナントカ制度とかに乗ってもいいことなど一つもありません。そりゃあ役人やJA職員はうまいこと言って騙そうとしますが、最近はもう農家だって容易には騙されませんから。
役所の試算では、農家がみんな制度に乗ることを前提にして、米農家から巻き上げたお金を麦農家に配分することで運営はうまく行くと考えたことでしょう。しかし、一切の儲けにならない、ただお金を取られるだけの制度に乗るようなバカも今どきいません。儲かると思った農家だけが制度に乗り、儲からないと思った農家は乗りませんでした。
ただ、麦などの場合はこれに乗らないともう絶対再生産不能なほどに単価が落ちていたので、うかうかと乗った農家が出ました。そして、品目横断となって、ハシゴを外されたわけです。
品目横断に乗った農家には、大規模な転作が義務付けられました。具体的には、麦を作りながら米も作っているところは、米の面積を大幅に減らしてそのぶん他の何かを作らなければならない、そうしないと補助金をあげないとしました。ある知り合いの農家は、米の面積を4haぶん減らす羽目になりました。
で、その4haでなにを作る?と言う話ですが、田んぼで作れってことですから、選択肢はほとんどありません。一般の人はあまり知らないことかと思いますが、田んぼと畑はそう簡単に切り替えできません。田んぼとは米を作る専門の土地であって、そこにいきなり畝を作ろうとしてもなかなか出来ないし、客土などをしない限り畑として何か別のものを作ることは無理です。まあよっぽど水はけのいい乾田なら、畑としても利用できるところがあることはありますけどね。
転作対象地で麦や大豆が作れるなら話は簡単だったのですが、実際には湿田でそれらのものは作れず、何か湿田でもできるものを考えなければならなかったのです。
で、ある知り合いははと麦を作りました。ただ当たり前ですが、いきなり新しいものを作るとなるとそれ向きのノウハウや販売ルート、設備投資が必要になります。普通に作るだけで黒字を見込めるような都合のいいものはありません。
そこで発想の転換です。押し付けられたのは転作そのものであって、転作したものを売って利益をあげろなどと強制されたわけではありません。
つまり、別の作物を植えはするが、一切手をかけずに収穫も見込まない。もしも収穫できてちょっとでも売れればラッキー、くらいのことをしたのです。実質的には4haの農地を耕作放棄も同然ですが、麦をたくさん作っている農家にとってはそっちの補助金のほうが大きく、バカ安になった米を4ha減らすほうがまだマシだったのです。
はと麦。除草などの手間を全くかけていないので、雑草伸び放題。手間をかけて頑張って収穫しても、大幅赤字。だったら収穫しないほうがいいくらい。
まだマシと言っても苦渋の選択で、4ha分の収益を全くフイにしているのですから、苦しいですよ。4haって大きいですからね。
この制度がうまくいかなかったので抜本的な見直しを行うと言うアナウンスですが、まあ農家にとっていい方向には動かないでしょうね。今はこれは大規模農家しか参加できないが、小規模農家でも参加できるようにしたい、ってそれは別に事の本質ではないんですよね。現在参加している農家にとっても、この制度に対応するために行った投資が無駄になるような方向での見直しになったらもう最悪ですし、しかもたぶんそうなります。ひょっとして、うちのように参加してない農家も無理矢理参加させるような制度になったらこれまた最悪です。
こんな変な、手の込んだ事しなくても、頑張って米価をドンと2倍くらいに上げてみたらどうですか。そのかわり生産調整は厳しくする。米価を2倍にする代わりに、みんな生産量は4割削減しなさいとか。それなら無理のない参加も出来るし、米の品質も向上します。空いた農地で農家は勝手に何かしますよ。
ちなみに数年前はさんざんプッシュしてた集落営農ですが、最近JA職員に聞いたら、今頃になってやっと駄目な制度と気づいたのか、もう全然普及していく気もないし、している人もいないと聞きました。はああ。
koume