老害の人/内館牧子
「終わった人」
「すぐ死ぬんだから」
「今度生まれたら」
以前3冊一気に読んだ
タイトルでまずドキリとさせられる
「終わった人」
「すぐ死ぬんだから」
そして高齢者シリーズ4冊目は「老害の人」
また毒のある直球タイトル
作中も変わらず毒舌いっぱい
表紙の絵がまた良い
元気いっぱいの蛍光色に近い黄色の装丁も
この迫力の85才福太郎一家と
この方々「老害クインテット」の群像劇
老害五重奏、だそうで
著者の内館さんが、あとがきで
八十代、九十代の群像劇にしたいと思ったと
百年近く生きても、人生は一瞬の夢だと
ご自分に重ねて書かれたとのこと
趣味や挑戦などの「自分磨き」ではなく「利他」
利他に向かって力が湧く老害の人も、若年層には傍迷惑
好きなように生きるが勝ち
昔の自慢
病気自慢
体力自慢
容赦ない毒舌
福太郎の娘、明代は54歳
友人の孫自慢に辟易するも
自分にも孫ができて気持ちが変わる
鈴木おさむさんの脚本業、放送作家業引退、のニュースが頭をよぎる
ソフト老害を自覚したエピソードが読める記事
◇以下、ネタバレします
「そうだよ。どこの県の人も、死ねばみんな故郷の山に帰るんだよ。
それでみんな神さんになって、ご先祖さんになる」
「元々、私らお山神さんから、この世に遣わされてきたんだからさァ、
そりゃ用がすめばお山に戻されるのよ。
あっちで神さんの仕事も手伝わなきゃ何ないしさ」
用がすめば神が故郷の山に呼び戻す
この解釈いいな
田舎がないとすぐに思い描ける「山」がなくて
ぼんやり目に浮かぶのは日本昔ばなしに出てくるような
絵の具の緑のまあるい山
老害の人のいいところは、「ごゆっくり」しないことだ
他人の家で自慢話をさんざんしても夜7時半には全員引き上げる
これは明代の目線
松木さん、老人の責任とは「若い人間に仕事の面白さと生きる面白さを伝えること」です。
他には何もしなくていい
自分の代で終えると言った、脱サラ農家の松木さんに
まだ若い透が言う
「ああ年取ったなァって一番感じるのは・・・欲がなくなること」
中略
「欲がある時代というのは、攻撃的な時代なのよ。自然に欲が消えた年代、私らね。
私らに攻撃しろっていうのは間違ってる。
それって人生の流れに逆らってるもの」
三ちゃん農業のカアちゃん、松木の妻の美代子が手伝いの若い消防隊員達に言う
「お前ら、『個性』って言葉、だいすきだろ。
算数ができねえ子供も、かけっこが遅い子供も、人みしりなのも落ちつきがないのも、
みんな欠点じゃなくて個性だって、すぐ言うだろ。
他人と同じである必要はない、何もかも個性なんだからって、お前ら言ってるじゃねえか。
それと同じだよ。
自慢も説教も繰り返しも、
上から目線も足が弱るのも頭が弱るのも、みんな個性だ。
覚えとけ、バカ娘」
福太郎が同居の実の娘、明代に言う
『教育』じゃなくて『今日行く』
老人には今日出かけて行くところが必要
きょういく
『教養』じゃなくて『今日用』
老人には何でもいいから、やるべき今日の用事が必要
きょうよう
「死ぬって引っ越しかよ」
死への不安、畏れを軽減させてくれることば
「引っ越し」
「どこかで役立てようなんて、青い若者の貧しい発想よ。
自分の役に立つのよ」
本さえあれば死ぬまで楽しめるというサキ
「今日いた人間が明日はいないんですよ。
なのに、生きている間は遠慮して、『ごめんなさい、ごめんなさい』
って謝って。
すぐいなくなる身で悲しいよな」
福太郎が老人と暮らす里枝に言う
ご立派すぎるお言葉を吐く自分に、自分でも気持ちが悪い。
思えば、いい人というのは気持ちが悪いものだ。
孫自慢の友人が謝りに来たことで気持ちに余裕が生まれ
親切そうな言葉が思わず出る明代の自省
「俺ね、昔の同級生とか知り合いが病気してるとか、今じゃ歩けないとか、
手術しただの引き込もってるだのと聞くとさ、
申し訳ないけど何かホッとするんだよ」
そうそう、兼好法師も徒然草で言っている
人生は帳尻が合うようにできてる
良いことも悪いことも続かない
こういう年長者、老人のことばは、良い時にも、悪い時にも思い出される
老いるということは、人間の能力を越えた事象
中略
加齢とともに自分が消されていく哀しさ
消される
さみしい
年代によって受け止める重みがきっと違う
「母さんってホントにいたのかな」
老害の人のひとり、春子がポツンと言う、「母さん」
このセリフ、読後ずっと残る
ただ春の夜の夢のごとし
このお話
明日の食事にも困窮するような人は出てこない
孤独であっても、本人はそれを良しとしている
良しとできる経済状況と、健康状態
以前観た、「プラン75」という映画が蘇る
この映画、観て以来何度も蘇る
「家を出る時鍵は開けたままにしておいてくださいね」
主人公が、最後の日の説明を受ける際の役所の担当者のこのセリフ
ハッとした
違う年代の立場を思いやれる人になりたい















