ボルティモアで橋を崩落させたコンテナ船「ダリ」 | 艦艇・船舶つれづれ

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など、怒涛の仕事を課内総出で何とか片付け終わりました。

まあ、2024年度になってからでなければできないこともまだまだありますが。

 

とは言いながら、今週も1回飲みに行っているのですが(笑)。

 

26日に米国から衝撃的なニュースが入っていましたね。

 

 

一夜明けたら、コンテナ船の上に橋の構造物が落下している状況が見られました。

 

 

コンテナ船の上に崩落した橋の一部(引用:Wikipedia・英語版)

(By David Adams - This image was released by the United States Army with the ID 240326-A-SE916-6662 (next).This tag does not indicate the copyright status of the attached work. A normal copyright tag is still required.  https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=146806924)

 

崩落した橋は「フランシス・スコット・キー橋」といい、全長2,632.3mの長大橋で、ボルチモア港外部を繋いでメリーランド州州間高速道路695号線(ボルチモア・ベルトウェイ)を通している鋼製アーチ形連続トラス橋です。

この橋は連続トラス橋としては米国で2番目に長く、世界で3番目に長い橋です。

 

「フランシス・スコット・キー橋」(引用:Wikipedia)

(Patorjk - 投稿者自身による著作物, CC 表示-継承 4.0, 

https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=41035194による)

 

この橋は昭和52年3月に開通したボルチモア周囲の環状道路である州間高速道路695号線の一部で、4車線で構成され一日約34,000台が通行しています。

昭和55年には貨物船が衝突する事故がありましたが、その際には大きな被害を受けることはありませんでした。

 

「フランシス・スコット・キー橋」に衝突した船は、「ダリ(DALI)」という名のコンテナ船です。

「ダリ」は、デンマークの海運会社「マースク(MAERSK)」向けとして平成26年10月に韓国の現代重工業で起工され、同年12月に進水、平成27年1月に竣工し、ギリシャのオーシャンバルク・マリタイムSA社に引き渡され、マーシャル諸島のマジュロを船籍港としました。

なお、姉妹船に「セザンヌ」があり、2隻とも画家の名前を与えられました。

【要目】

 総トン数:91,128トン、積貨物重量:116,851トン

 全長:299.92m、、幅:48.2m、型深さ:24.8m、 吃水:15.03m

 主機:クロスヘッドディーゼル機関×1、推進軸:1軸

 出力:55,630馬力、速力:(航海)22ノット

 コンテナ容量: 9,971TEU( 20 フィート換算) 

 

コンテナ船「ダリ」(引用:Wikipedia・英語版)

(By kees torn - DALI, CC BY-SA 2.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=63512771)

 

「ダリ」は、ネオパナマックスと呼ばれる船型のコンテナ船で、竣工後はマークスにチャーターされ運用され、平成28年10月に所有権がグレース・オーシャン社に譲渡され、船籍港がシンガポール変更されています。

 

平成28年7月11日にベルギー・アントワープ港で出港時にコンテナターミナルのバースに衝突し、船尾に重大な損傷を受ける事故を起こしています。

 

平成28年7月・アントワープ港の「ダリ」

(引用:HP「marine traffic」)

 

また、令和5年6月にチリ・サンアントニオ港における港湾管理検査により推進装置と補助機械の計器や検温器の一部に問題が見つかり、3か月後に米国での追跡検査で欠陥は修繕されたとされています。

 

そして、令和6年3月26日に「ダリ」は乗組員22名とパイロット2名を乗せてスリランカのコロンボに向けボルチモア港を出港しますが、直後に停電が発生し操船不能となったとされており、米国東部標準時1時27分に「フランシス・スコット・キー橋」の橋脚のひとつに衝突したことで橋桁が崩落ました。

 

「ダリ」が衝突した「フランシス・スコット・キー橋」の橋脚(引用:Wikipedia・英語版)

(By Larry Syverson - https://www.flickr.com/photos/124651729@N04/53613166209/, CC BY-SA 2.0,

 https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=146806407)

 

橋脚は上からかかる荷重には強いですが、今回のような巨大な船舶が衝突するような巨大な横方向からの荷重は考慮されておらず、今回の崩落に繋がったようです。

こんな巨大な船が衝突しても耐え得る橋脚とするには、コストがかかりすぎるので現実的ではないですから、難しい問題ですね。

 

衝突前に「ダリ」から電力系統が失われ危険な状況にあることを周囲に知らせる遭難信号が出され、当局は遭難信号を受けて車両の通行を規制たことで、多くの車が事故に巻き込まれるのを回避できたとされています。

橋の崩落により、当時橋の補修作業をしていた作業員8人のうち2名が犠牲となり、6名が行方不明となっています。

 

「ダリ」の3月30日12時(日本時間)現在の位置

(引用:HP「marine traffic」)

 

ボルティモア港は全米有数の海運の拠点で、全米最大の自動車の輸出入港であり影響が懸念されているほか、復旧作業が長引けば国際貨物のサプライチェーン(供給網)に大きな影響を与えることが懸念されています。

更には、海上保険においても、保険金の支払い請求額は最大30億ドル(約4540億円)に上る可能性があり、英国の世界的な保険市場ロイズ・オブ・ロンドンへの影響が懸念されています。

 

亡くなられた方々へ哀悼の誠を捧げるとともに、国際経済へ大きな影響が出ることがないよう、ボルティモア港の港湾機能の早期復旧を願いたいと思います。

 

崩壊事故の10時間半後の「ダリ」(引用:Wikipedia・英語版)

(FBI Baltimore Field Office - https://www.fbi.gov/contact-us/field-offices/baltimore/news/

fbi-baltimore-statement-on-francis-scott-key-bridge-collapse, パブリック・ドメイン, 

https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=146800243による)

 

【参考文献】

  Wikipedia(英語版含む)

 

【Web】

 HP「ブルームバーグ」

 

 HP「marine traffic」

MarineTraffic: グローバル船舶追跡インテリジェンス |AIS海上交通