今回は舟の話題から離れます。
我が家には少々変わった書籍が少なからずあります。と言っても私が収集したものですが。
ちなみに、船の本ではありません。船の本も巷の方々から見たら変わった書籍かもしれませんね。
今回は、少々変わった書籍の中でも比較的古い書籍を取り上げます。
HP「日本の古本屋」で15年ほど前に購入した書籍です。購入時からパラフィン紙が張り付けられていました。
この書籍は「昭和18年版 最近検定市町村名鑑(一庁、三府、四十三県、朝鮮、台湾、樺太、関東州、南洋)」というもので、内務省地方局の石渡猪太郎氏が校閲しています。
書籍の背と表紙見開き
発行は東京・銀座の文録社で、昭和17年11月に再版(第2刷)された物です。
書籍の奥付
中はこんな感じです。
最新県別里程入地図
本文・市町村別の公共機関と字名が一覧で記載されています
この書籍、発行が戦時中のため髪質が非常に悪く、丁寧に扱っているつもりでもページに破れが生じてしまう事があります。
この書籍には「国勢調査人口数」が記載されています。出版直近の国政調査は昭和15年に行われていることから、この人口数は昭和15年の物と思われます(注釈等がなく、推測です)
道府県別に現在の人口と比較してみました。なお、現在の人口はHP「都道府県市区町村」の令和2年10月のデータを使用しました。
都道府県別の人口推移
(赤字は増加率200%以上、橙字は同150%以上、青字は減少)
マップに落とすとこんな感じです。
関東・東海・近畿の人口増加が著しい反面、東北の日本海側、山陰、南四国および九州の西・南の人口は、戦前と比較し人口が減少しています。
以前、学校で教わった「太平洋ベルト地帯」への人口集中と、第一次産業・特に農業県の人口が減少しているのは、現在の日本の姿を如実に表していますね。
長崎は、戦前の軍事拠点であった佐世保と造船の拠点であった長崎の二大産業が縮小されたこと、また鹿児島と同様に離島が多いことも要因の一つであると思われます。
次に、都道府県庁所在地の人口比較をしてみたいと思います。
都道府県庁所在地別の人口推移
(赤字は増加率500%以上、橙字は同400%以上
緑字は300%以上、青字は減少)
マップにするとこんな感じです。
都道府県庁所在地は、戦前とは異なり昭和・平成の大合併を経て市域が大きく変動した都市もあります。
減少しているのは大阪市のみで、一時は350万人を超えていたものの、ドーナツ化現象により260万人まで減少しました。現在は都心回帰がみられ275万人まで持ち直しています。
大幅に増加したのは、浦和市・与野市・大宮市の3市が合併して誕生、政令指定都市となったあとにも岩槻市を合併したさいたま市、周辺町村を合併し大規模ニュータウンの建設を進めた千葉市と東京のベッドタウンが目立ちます。戦前はどちらも10万人に達していないんですね。
地勢的なもので人口増加が著しかったのは、北海道の中心地である北海道の札幌市、近畿地方は京阪神のベッドタウンとして急成長した滋賀県の大津市、奈良市、北関東最大の都市で東京との繋がりが強く新幹線での通勤客需要もある栃木県の宇都宮市、昭和期に周辺市町村を大きく取りこむ合併を行い新産業都市となった大分市などが該当するかと思います。
平成の大合併が大きな要因と考えられるのは、政令指定都市となった新潟市、周辺町村を合併した宮崎市、全国最小の人口から脱した山口市などが該当します。
総じてみると、戦前は比較的小さな都市であった県庁所在地が、県内の中心都市として次第に大きな都市へと変貌していく様子が見て取れます。
ちなみに、この書籍は題名の通り、旧外地(朝鮮、台湾、樺太、関東州、南洋)の行政区域、市町村名、大字名なども記載されており、購入目的もそちらが主でした。
「関東州」の冒頭のページ
そのうち、外地の話題についても書いてみたいと思っています。
なお、この書籍はHP「国会図書館デジタルコレクション」から、誰でも無料で閲覧・ダウンロードが可能です。少々ピントの甘いスキャンのため読み難い文字もありますが、興味を持たれた方はネットを除いてみてください。
今回は、手持ちの少々変わった書籍について取り上げてみました。
皆さんの手許にも、変った書籍はありませんか?