呉の練習艦「はたかぜ」から・「旗風」三代記 | 艦艇・船舶つれづれ

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「海軍艦艇つれづれ」からタイトルを変更しました。

先日、呉の艦船めぐりで撮った写真を。

 

 

左から護衛艦「かが(DDH-184)」、練習艦「はたかぜ(TV-3520)」、護衛艦「まや(DDG-179)」が並んでいます。

 

海上自衛隊最大の護衛艦、練習艦に類別変更されたとはいえ現役最古のDDG、そして現役最新のDDGが並んでいます(と、艦船めぐりの説明でおっしゃってました)。

 

この中の練習艦「はたかぜ」ですが、令和2年3月19日にミサイル護衛艦(DDG-171)から練習艦へ類別が変更されました。

「はたかぜ」は、昭和56年度に計画された4,500トン型護衛艦で、昭和58年5月に三菱重工長崎造船所で起工され、昭和61年3月に竣工しています。

【要目(練習艦改装後)】

 基準排水量:4,600トン、満載排水量:5,900トン、船質:鋼、全長:150.0m、幅:16.4m、吃水:4.8m

 機関:ガスタービン機関×4(COGAG)、推進軸:2軸

 出力:72.000馬力、速力:30ノット、乗員:260名

 兵装:スタンダードASM単装発射機×1、ハープーンSSM4連装発射筒×2、

     127mm単装砲×2、20㎜CIWS×2、アスロックSUM8連装発射機×1、3連装短魚雷発射管×2

  ※引用:世界の艦船別冊「海上自衛隊2020-2021」No.928、2020年7月、海人社、P74

 

練習艦「はたかぜ(TV-3520)」(引用:Wikipedia)

(海上自衛隊, CC 表示 4.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=91585770による)

 

「はたかぜ(DDG-171)」は、ミサイル護衛艦としては初めて主機関にガスタービンエンジンを採用し、艦尾甲板をヘリコプター甲板としています。ただし、格納庫は設置されていないことから固有の搭載機は配置されておらず、ヘリコプター発着の際には後部127mm砲の砲身を90度横向きにする必要があります。

 

この「はたかぜ」は、前掲の写真の左にいる「まや(DDG-179)」の就役に伴い練習艦へ類別変更され、呉に転属してきました。

この時の改装に合わせて煙突の頂部の黒い塗装がなくなり、艦番号と艦尾の艦名が灰色がかったロービジと呼ばれる塗装に変更されています。ただ、各種兵装は護衛艦時代から変更されておらず、有事の際には護衛艦任務に復帰できるよう考慮されているようです。

 

ちなみに「はたかぜ」は海上自衛隊に先代が存在します。

先代「はたかぜ(DD-182)」は、昭和29年5月に調印された日米艦艇貸与協定に伴い、米海軍の駆逐艦で予備役艦艇となっていた「グリーブス」型駆逐艦が同年10月に2隻貸与されます。

このうちの1隻が「メイコム(DD-458)」で、昭和29年7月に発足した海上自衛隊により「はたかぜ(DD-182)」と命名されます。

【要目】

 基準排水量:1,600トン、満載排水量:2,500トン、船質:鋼、全長:106.0m、幅:11.0m、吃水:3.9m

 機関:蒸気タービン機関×2、主缶:水管缶×4、推進軸:2軸

 出力:50.000馬力、速力:37ノット、乗員:270名

  ※引用:世界の艦船別冊「海上自衛隊全艦艇史」No.630、2004年8月、海人社、P28

 

護衛艦「はたかぜ(DD-182)」(引用:Wikipedia)

(Japan Maritime Self-Defense Force - http://www.mod.go.jp/msdf/, Attribution, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=48837872による)

 

駆逐艦「メイコム(DD-458)」は、昭和15年9月に米国・メイン州のバス鉄工所で起工され、昭和16年1月に竣工しています。

就役後は主に大西洋での作戦に参加し、昭和20年3月には太平洋側・沖縄戦などに参加しています。

 

米海軍駆逐艦「メイコム(DD-458)」(引用:Wikipedia)

(USN - Official U.S. Navy Bureau of Ships photo 19-N-29130 available at Destroyerhistory.org, パブリック・ドメイン, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=40400758による)

 

「はたかぜ(DD-182)」は、海上自衛隊の創世期における主力艦として運用され、昭和44年10月に除籍、米国へ返還されます。その後、台湾に渡り「咸陽」と命名され、昭和49年まで運用されていました。

 

帝国海軍には初代の「旗風」が存在しました。

「旗風」は「神風(二代)」型一等駆逐艦の5番艦で、いわゆる「八八艦隊」計画の大型駆逐艦として大正9年度に計画され、大正12年7月に舞鶴工作部で建造され、大正13年8月に竣工しています。

【要目(新造時の「神風(二代)」】

 基準排水量:1,270トン、全長:102.6m、水線幅:9.2m、吃水:2.9m

 主機:三菱パーソンズ式オール・ギヤード・タービン機関×2、

 主缶:ロ号艦本式水管缶(重油専焼)×4、推進軸:2軸

 出力:38,500馬力、速力:37.3ノット、乗員数:154名

 兵装:12cm45口径単装砲×4(後に1基撤去)、6.5mm単装機銃×2、

     53cm連装魚雷発射管×3、一号機雷×16

 ※出典:世界の艦船「日本駆逐艦史」増刊第34集、No.453、1992年7月、海人社、P74

 

一等駆逐艦「旗風」

(引用:ハンディ版「日本海軍艦艇写真集 No.18」1997年11月、光人社、P.103)

(不明 - 日本駆逐艦史より, パブリック・ドメイン, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=5796780による)

 

「旗風」は竣工時には「第九駆逐艦」と命名され、大正13年8月には「第九号駆逐艦」と改名しています。

そして、昭和3年8月に駆逐艦の番号名が廃止され「旗風」と改名します。

 

「旗風」は大東亜戦争開戦時にはすでに旧式な駆逐艦となっていましたが、フィリピンや蘭印方面の作戦に従事し、昭和17年3月のバタビア沖海戦にも参加しています。

昭和17年5月以降は輸送船団や艦艇の護衛を中心とした任務に就きますが、台湾・高雄在泊中の昭和20年1月15日に米軍機動部隊艦載機の攻撃を受け、「旗風」は午前10時42分、爆弾命中により火災が発生し18時に沈没しました。

 

私の個人的な話ですが、「はたかぜ(DDG-171)」の斜め前方から見たときのMk13スタンダードSAM単装発射機と127㎜単装砲、アスロックSUM発射機、そして艦橋への佇まいが、いかにも「軍艦」的な感じで気に入っています。最新のイージス艦にはない雰囲気で古めかしいかもしれませんが。

 

ミサイル護衛艦「はたかぜ(DDG-171)」(引用:Wikipedia)

(海上自衛隊, CC 表示 4.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=88957499による)

 

「はたかぜ(TV-3520)」が退役するときには、イージス護衛艦「こんごう(DDG-173)」が護衛艦籍から外れることになるのではないか思いますが、隔世の感がありますね。すでに「こんごう」も竣工から27年になりますから。

 

令和2年11月21日・練習艦「はたかぜ(TV-3520)」(左)と護衛艦「まや(DDG-179)」(右)