後頭葉が両側に、しかも広範に損傷されると、皮質盲の状態になります。

稀な病状です。


脳梗塞、脳出血でみられることは勿論あります。

また交通事故などで頭が強く揺さぶられると、前頭葉だけでなく、反対側の後頭葉全体にも出血することがあります。

静脈からの出血、くも膜下出血などの場合も同様です。


現疾患によって経過が異なるので、高次脳機能障害の経過も一概には言えません(静脈洞血栓症などは、驚くほど改善が早いことがあります)。


さて。

両側後頭葉に病気をされた方に対して、言語聴覚士が入る場合。

何を評価するかといえば、やはり視覚系の高次脳機能障害です。

ベッドサイドでスクリーニングを行うと、急性期では、発症直後は全盲かな?と思っても、徐々に失認が明らかになることがあります。現疾患が出血であれば、浮腫が影響するのでなおさらですね。


「世界が灰色になってしまった。輪郭はあるが、何がなんだかわからない。色がない」という人もいれば、

階段や自分のベッド、トイレを見て「すべてが絵のように平らだ」という患者さんもいます。

写真の貼ってある壁を指差し、「あのスイッチ押してよ」という患者さんも。


皮質盲であれば、ほぼ盲患者さんと同様の対応を行いますが(Antonは別です)、

「見えてるんだけど解らない」という失認は、非常に難しい病態だと思います。

患者さん、ご家族、医療スタッフに対し、どう説明すればよいのか、毎度毎度考えるのに苦労します。

看護師さんが「盲」「認知症」とカルテに書いているのをみると、ちょっとがっかりしてしまいます;;


急性期でのアプローチは、とにかく患者さんが少しでも楽に過ごせるような環境を提案することです。

ベッド周りを整理整頓し、必要以上のものはゴチャゴチャ置かない。ティッシュ、コップ、リモコンなど使用頻度の高いものの定位置をつくり、ここを探せば○○がある、という状態を作る(特にナースコール)。それを患者さんに覚えてもらう。医療者や家族が勝手に動かさない。

病室の入り口がどこも同じで解らなくなってしまうなら、入り口に目立つ縫いぐるみをぶらさげたりする。

食事の器が解らずスプーンで宙を掬ってしまうようなら、左手でしっかり器を持つよう指導するなどなどなど。


もちろん環境調整だけでなく、訓練室でのリハビリもしますけど;;


後頭葉の高次脳機能障害

と聞いて思い浮かぶのは、

単純に右なら失認、左なら失読

というところでしょうか。

これに脳梁膨大後部に病巣が及ぶ場合、記憶障害が出ますね。



過去に、稀と言われている相貌失認を見させていただく機会がありました。

もちろん急性期は失認症状がありましたが、徐々に相貌認知だけの問題になってきたのです。

患者さんは最初、「みんなの顔が曇っている」と言いました。

しゃべっている相手が誰であるかは、声をきいて判別していました。

しかしテレビなど二次元になると認知がさらに難しくなり、「みんなのっぺらぼうに見えるんだよ」と教えてくれました。

入院中は家族や友達の写真を見て、同定、識別の練習をしていました。


麻痺がなかったので、退院となり、その後は外来でみていました。

私とのリハビリは、とにかく傾聴、そして日常生活でのアドバイスに尽きました(ほかに出来ることがなかった・・・)。

とうとう職場復帰だ!という時には、現在の障害をどう職場の人にわかってもらうか、一緒に作戦を練りました。

幸い営業職でなく、見知った顔の中で働くデスクワークが中心だったので、

同じ職場の人の服装や顔の特徴(髪型、メガネなど)を徹底的に分析し、挨拶の時など失礼のないようにして(相手の声が無いと誰か解らないというのは避けたかった)、

表情が読めないぶん、声色や仕草といった相手の発信に、常にアンテナを張って、それが無意識にできるよう頑張ってもらいました。


自分の障害が何であるかを正確に理解し、その障害に対する社会の反応を学ぶのはとても大切だと思います。

特にこういった稀な障害の場合、医療従事者も「なにそれ」的な反応ですから;;


職場復帰した上で、社会のなかでの自分のハンディキャップを自覚し、どうしたら周りに理解してもらえるのか、どうしたら少しでもハンディを埋められるのか、それを一緒に考えるのが、この患者さんと行ったリハビリでした。


しばらく外来に通っていましたが、「自信がついた!」とのことで外来は終了しました。

今、どうしているかな。。


院内に、左室駆出率(EF)が低い患者さんはたくさんいます。
脳卒中で入院した患者さんでも、心エコーの結果を見てみると少なからずいると思います。

最近、EFの低い人は認知機能も低下する、という報告が海外で散見されています。
要するに心臓のポンプ機能が低いから、血流が頭に十分いかない、というわけです。
きちんとした証拠があるわけではなく、いささか乱暴な説ではありますが、臨牀では「ああやっぱり」と納得することも。

心不全の患者さん。重症の場合は、MMSEをとると低下している場合があります。

心臓機能の回復が難しい心臓移植待機患者さんは、たいてい補助人工心臓をつけていますが、人工心臓のパワーには限りがあるので、拍出量は低いです(その人の体格にもよります)。
しかも厳重な血圧管理のもとにあり、多くの場合血圧は低い状態です。
そうなると、余計頭に血がいかないのか…
脳CTなどでは30代、40代の若い患者さんでも脳虚血を認め、
補助人工心臓をつけている20代の患者さんにWMSーRを行うと、言語性記憶の指標が60だったりすることがあります(低心機能患者さんは言語性記憶がおちるという海外の報告もあります)。

日本での報告は皆無に等しいです。
といっても、心臓移植そのものの法改正もつい最近のできごとですので、こうした分野の研究は進んでいなくて当たり前なのですが…

とはいえ、STがこうした患者さんにかかわることは、まだ難しいと思います。算定ができないので…