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オリバー「よう、了、久しぶりだな。今日は学校へ来られたんだな。背、伸びたんじゃね?」
蓼科先生「ほんとね、ずいぶん大きくなったわね。それにしても痩せて痩せて…大変な仕事してるでしょ」
滝「臼田くん、私、滝っていうの、よろしくね」
真夏(左)「みんなあすかっちが来るの待ってたのよ。新刊も大人気よ」
あすか(中央)「ありがとう。次作の打ち合わせとか、やり直しになっちゃって…」
キワナ(右)「了くん身長だけでなく筋肉もついてきたねー。頭ちっさいし、女子の間で争奪戦になるんじゃない?」
謎の少女「初めまして~。僕、阿野志子(あの・ゆきこ)といいます。あすかさんがいない間に転校してきました」
あすか「なんて呼んだらいいかな。私の本名は臼田飛鳥。あすかっちと呼んで」
阿野「阿野ちゃんでいいです。よろしく」
あすか「耳にくっついてるピアス、歯に見えるんだけど」
阿野「僕の乳歯です。ピアス開けていい年齢になったから加工したよ。うち、歯医者なんだ」
あすか「すごいセンスだな、乳歯取っとくなんて面白いよ!」
了くん「なんか学校だりーな」
滝さん「一緒に帰らない?」
阿野「あすかっちもピアス開けてるんだね」
あすか「うん、これは赤メノウ。きみんち歯医者なのか。それはよかった」
阿野「歯の健康診断の際はぜひご予約を~」
あすかっちの心の声「(この子の虹彩、水色だ。そういえば昔、お祖母ちゃんが言ってたな。久美子ちゃんにはルビー、私にサファイア買ってくれた時だ。変わった目の色を持つ女の子がいたら連れて来いって。エメラルドを渡すから、て。私だけでもアヴァロン島には行けるけど、3つの宝石がふさわしい乙女の手にあって一堂に会した時は瞬時にここと往来できるって。あの時は作り話だと思ってたけど、こんな子がいると信じそうになる)」
あすか「介護施設のバイトに行きなよ。了くん体調悪いから休ませるって電話したんだけど、了くんに会いたがってる利用者さんいっぱいいるから顔だけ出してほしいってさ。前のきみはお年寄りに人気の介護福祉士だった」
了くん「おれにお年寄りのオムツ替えろってのか?」
あすか「やることはオムツ替えだけじゃないよ。ポータブルトイレの中のバケツ交換や、お風呂介助、食事介助、歯磨き、シーツ交換、いろいろ忙しいよ。前の了くんはそういうのが趣味で、嬉々としてやってた。きみを気に入ったっていうお婆さんに会っておいでよ」
あすか「さあ、さあ、行った行った」
久美子(右)「パラレルワールドを遮断したのに、最後っ屁でとんでもない了くんが飛んできた?なにそれ」
あすか(左)「もう、こうなったら了くんを他の了くんとは取り替えられない。今の了くんを教育しよう」
了くん「ただいま。えーと、手を握ってやったらにっこり笑うんだ、あの婆さん。温かい手ね、って」
あすか「褒められて嬉しいだろ、よかったな」
久美子「わざわざ顔見せにいっただけで、すごく嬉しそうにするなんて、よほど人恋しかったのね」
ツヨシ「家族とか面会に来ないのかな」
翌日。
了くん「今日はもうどこに何があるか分かったから、婆さんのお世話手伝った。婆さんと握手すると『温かい』って今日も。おれぐらいの孫がいたんだけど、バイクで事故ってあの世に行っちまったって。その孫も手が温かかったってさ。家族はさっさと婆さんを介護施設に放り込んで、婆さんの家を乗っ取っちゃったらしい。面会はやっぱりないって」
あすか「今日も行ったの、えらいね」
翌日。
了くん「なんでか分かんないけど、介護のやり方、おれ全部知ってた。うまくできたよ。婆さん、孫が帰ってきたようだって笑ってた。匂いとかも慣れた」
あすか「よかったね」
ツヨシ「シャワー浴びておいでよ」
翌日。
了くん「婆さん、息を引き取ったってさ。スタッフにありがとう、ありがとうと言って逝ったって。つらい人生だったけど最後の最期で毎日おれに会えて幸せだったって、書く力もないだろうにメモ帳に走り書きしてた。ご遺体は家族が早々に来て…おれが施設に着く前に退所したって死に目に会いたかったよ。」
久美子「アンタ、だいぶ変わったわね」
了くん「おれ、頑張るよ。今の仕事は続けるけど、夜勤断ってその間に勉強する。誰もこんな淋しい最期にならないように、うちの病院でも介護施設を併設して、普段から利用者さんたちとその家族とがコミュニケーション取れるようにしたい」
了くん、涙をこらえる。
あすか「泣いていいよ、気が済むまで。ここなら誰にも知られない」
了くん「どうしておれにありがとうなんて…」
了くん「で、おれのほうこそありがとうだったよ、大事なこと気づかせてくれた。だからおれ、利用者さんとのコミュ力も磨く」
あすか「偉い!」
ツヨシ「すげー体験」
久美子「アンタ成長したわね」
久美子「アンタ、なにをやったの?」
あすか「便利屋とプロのアンダー・スタディー雇ったの。お婆さんはこういうの専門の女優さん。ちょっと弱ってた時だったから、これぞ最後の仕事だと思って引き受けるって言ってくれた。おかげで了くんの心は救われた」
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こうして了くんは、真面目で優しい介護福祉士に戻りました。地球儀の力に頼らず問題を解決したことに、あすかっちは満足でした。了くんは看護学部を目指して勉強中です。看護師は大変体力と精神力を使うお仕事です。頭の回転も速く、周囲の空気を読めて、器用でなければならず、いつも報われるとは限りません。そして、つらくても笑顔でいることを求められます。看護専門学校でも、睡眠時間がほとんどないため、ドロップアウトしてしまう人も。病院も、医療従事者が元気な笑顔で働ける環境であることを願います。
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