バルサ欲しさに無我夢中?いや、略勢い?
サーフショップに吊るされていた1本ボードは明らかに他のボードとは存在感が異なっていた。
それもその筈、そのボードはハップ・ジェイコブスお手製のバルサだったからある。
ボードの詳細なんてどうでも良かった。
唯々、ベルジーのパートナーであったジェイコブスのボードが欲しかっただけである。
そして、それがこちらである。
ハップ・ジェイコブスのバルサ・・・
その長さは正に奇跡のマイサイズの10ft.
ベルジーのバルサがマイサイズより短かった事もあり、この長さにには心が躍った。
この時代、まだ「ジェイコブス・サーフボード」はジェイコブスでは無くウェイン・リッチが管理していた為、ディケールは「ハップジェイコブス・サーフボード」となっている。
往年の「ジェイコブス・サーフボード」のディケールも気になる所だが、このディールにてジェイコブスが活動してた時代はタイラー・ハジキアンやマット・カルバーニが彼の下に在籍していたので、これはこれで浪漫を感じてしまう。
若しかしたら、このボードの製作にタイラーが絡んでいたのかな?
なんて、考察も楽しいものである。
さて、気になるディティールの前に、このバルサは一体どの様な素性のボードなのか?
購入当時は気にもしなかったが、入手してから間もなくして購入したショップに問い合わせした所・・・
まさかの「判らない!」と回答。
まぁ、バルサやヴィンテージに精通していないショップだからこそ、手頃な価格で入手できたので致し方の無い所である。
その後、長い時を隔て詳細を知る機会に遭遇した。
それは友人であるアダム・ダベンポートがジェイコブスのシェイプルームを間借りしている時の事だった。
「ジェイコブスさんが削ったバルサを有しているのだが、どんなモデルか判らないんだ」
「写真を送るからジェイコブスさんに訊いてもらえないだろか?」
すると早々にアダムから連絡が来た。
「それはランスカーソンモデルだそうだ」
と、まさかの珍回答。
なるほど・・・
確かに、このレールの形状は往年のランスカーソンモデルに通ずる気がする。
そして、3ストリンガーの仕様はランスカーソンモデルに見えなくも無い。
しかし、センターにレッドウッドのストリンガーではランスカーソンモデルではないのでは?
いやいや、これは1990年代に削られたボードではないか!
先にも綴ったが、この時代のクラッシクボードは「ディティールの詰め合わせ」がテーマとなっているのだから、レッドウッドを採用した豪華な仕様は必然だったのであろう。
そして、極めつけはハーフムーンである。
やはり、あの時代は「ハーフムーン=クラッシク」と云う風潮が強かった事は間違いない。
だからこそ、ジェイコブス自身も敢えてハーフムーンを採り入れたのではないだろうか?
かつて、ジーン・クーパーが「1990年代のベルジーやジェイコブスのボードは少し残念・・」と云っていたが、ロングボードが復活の産声を上げ始めたこの時代は誰もレプリカを求めおらず、彼らも「詰め合わせがベスト」と思っていたのかも知れない。
そもそもバルサのレプリカを追求して行くとチップとPIGになってしまう。
あの時代のバルサはストリンガーやブロックも無いのだから、それをそのままリプロダクトしても誰も興味を示さなかったのかも知れない。
そんな事を考察していると妙にベルジーとジェイコブのバルサが愛くるしい。
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