「LAXに着いたら電話をくれ」
「私の電話番号を教えておく。一緒にランチでもしよう!」
届いたメールを読み返す様に俺は、「新しいボードの相談もしたいんだ」と返信すると「勿論だ。会えるのが楽しみだな」と、彼は返してくれた。
しかし、渡米直前に送信したメールからは返事が来ることは無かった・・・
おかしい?
彼はメールを読んでいる筈だ。
これまで返事が来ないなんて事は一度も無かった。
何かあったのかな?
そんな想いを抱きながらLAXに到着をするや否や、彼に電話を掛けてみた・・・
何度かのコールが続き、やがて留守番電話に切り替わった。
「今、到着したよ。メールの返事が無かったけど会えるかな?」
「折り返し連絡を貰えると嬉しいです」と、伝言を残し電話を切った。
そして、彼から返事が来た・・・
電話、ありがとう。
メールの返事も返せなくてごめん。
私は皮膚癌が再発してしまったんだ。
もう、シェイパーは引退する事にした。
今の状態を君に見せたくないから会う事は出来ない。
楽しいカリフォルニアにいる筈なのに、急に心が重く、虚しくなって来た。
彼に会えないからではない。
彼の病気が再発し、彼が引退せざるを得ないからだ。
今日は、そんな病と闘いながらもシェイプ励んで渾身のボードを創り上げてくれたシェイパーのボードを紹介したいと思う。
彼の名はロジャー・ハインツ。
云わずと知れたカリフォルニア代表するレジェンドである。
様々なレーベルでシェイプスキルを磨き上げ、ベアー・サーフボードのシェイパーとして活躍して来た剛腕シェイパーだ。
ロジャー・ハインツがカリフォルニアでベアーのボードを創り続けている事を知った俺は、どうしても彼に創ってもらいたいボードがあった。
映画「ビッグウェンズデー」によって切り開かれた俺のサーフィンライフに無くてはならないボードがベアーだった。
しかも、映画の冒頭の時代背景にマッチするボードと云ったら、紛れもなくPIGしかない。
嘗て、ランス・カーソンやミッキー・ドラ乗っていた様なセンターに2インチのバルサを宛がえ、映画のポスターにも登場したご覧のハーフムーンを纏ったPIG…

そんな、彼と幾度となくディスカッションをして、創りあげて貰ったボード。
それがこちらのPIGである。

劇中にPIGが登場する事は無い。
映画が制作された時代はショートボード全盛期・・・
実際に使用されたボードもエンディングのバルサ以外は殆どがBOXフィン。
存在しないボードだからこそ、ロジャーとは入念にミーティングを重ねた。
イメージはジェイコブスのヴィンテージPIG。
レールは今どきのピンチ気味のレールではなく、しっかりとボリュームのあるヴィンテージを感じられるボリュームが欲しい。
そんな、長年の理想を集約させたボードを次回の更新でさせて頂きたいと思います。
最後まで読んで頂きましてありがとうございました。
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