月並みではありますが、本年もよろしくお願い致します。
さて、今年最初の更新になりますが、ここ最近、ダベンポートの問い合わせが非常に増えて来たような気がします。
「乗り味はどうなのか?」
「シースワローは入りやすい店なのか?」
「オーナーはどんな人?」
「アダムのボードは良いのか?」
等々・・・
ブログで紹介したとはいえ、このブログに問い合わせを頂いた事は嬉しい限りだが、ぜひ直接ボードを見て、触って、そして感触を確かめて頂ければと思う。
そして、今日はアダムに因んで、無理くりマリブチップの事を綴ってみたいと思う。
海仲間の一人にタイラーをこよなく愛する者がいる。
そんな彼は非常に早い段階でアダムに注目をし、アダムがタイラーの弟子あった事を突き止めた。
タイラーをこよなく愛する彼は、長年タイラーの下でスキルアップして来たアダムにタイラーの真骨頂であるリドラーをオーダー出来ないかと打診した。
リドラーと言えば、タイラーのマスターであるジェイコブスから伝授されたアウトラインを元に、ヒンソンのストレッチノーズの要素を採り込んだタイラーの代表作である。
長年、タイラーのシェイプを目の当たりにして来たアダムが削れる事は間違いなく、本人も否定はしなかった様だ。
しかし、彼は「リドラーはタイラーのボードだ」、「だから、それを削る事は出来ない」と断ったとの事だった。
なんとも、アダムらしい断り方ではないか!
この断りを彼は素直に受け止め、逆にアダムに申し訳ないと謝罪したというエピソードがあり、海仲間の間でも語り継がれている話である。
実は、これと同じ事が俺にもあった。
以前にも紹介したダノーにワンオフで創ってもらったマリブチップがあるのだが、このマリブチップの乗り味が抜群に良くて、一時、マリブチップにハマった時期があった。

その乗り味はチップである事を忘れさせてくれる程、優雅に動き、HOG同様にモダンクラシックの楽しさを一層高めてくれる唯一無二のボードである。
そんな、チップに酔いしれた俺は、モダンクラッシクの第一人者であるジーン・クーパーにも「マリブチップを創って欲しい!」と願い出た事があった。
俺の技量でもPIGの楽しさを体感させてくれる技量を持つジーンさんが「チップを創ったらどうなるのだろうか?」考えただけでもワクワクして来る。
兎に角、ジーンさんのボードは1年~2年は待たなければならないので、腰を据えて待つ事にした。
そして、月日が流れジーンさんからの回答が・・・
「あれは出来ない」
「あれはランスのボードだから創る訳には行かない」
まさかのアダムと同じ回答であった。
しかし、チップが何故にランスのボードなのか?

チップはボブ・シモンズが考案し、1940年代からPIGが誕生する1950年代後半までの間に様々なシェイパーによって改良が成され、今に受け継がれるボードでは無いか?
と、言いたい所だが、実はチップというボードを現代に蘇らせたのは、紛れもなくランス・カーソンである事をジーンさんは熟知しているからである。
ランス・カーソンは系譜としてはベルジー・ツリーではないが、彼が子供頃にサーフィンをしたくて、父親にサーフボードをねだった時の事だった・・・
父はランスの為に自作でサーフボードを創る事にしたのだが、肝心のバルサの入手が出来ずに頭を抱えていた。
何としてもランスの為にボードを創ってあげたく、バルサの入手に様々な情報を取り寄せたそうだ。
そして、知人から一人の男を紹介してもらう。
その男はピアの上で早朝から日が暮れるまでバルサと向き合いシェイプを続けていたそうだ。
その男が削っていたボードは紛れもなくマリブチップだったという。
そして、その男こそ、ランスを始め、数々のレジェンド達に多大な影響を齎したデイル・ベルジーであった。
ランスにとってマリブチップというボードは単なるサーフボードでは無い。
ジーンさんは、それを知っているからこそ断ったのであろう。
ランス・カーソンにとって、ピンテール同様に代表作となったマリブチップ・・・
その噂は瞬く間にCAに飛び交い、様々なシェイパーが自分なりの解釈でチップを創り上げ来た。
その光景は、まるでPIGが登場した時に多くのシェイパーが挙って真似した様な現象にも似ていた様だ。
そして、その現象は一人のシェイパーにも大きな影響を及ぼした。
しかし、彼は真似をするのではなく、直接ランスから指導を受けたいと志願する事となる。
かつてのマスターであるジェイコブスに仲を取り持ってもらい、ランスからマリブチップを伝授される事となった。
そう言えば、ランスに会った時に「あなたの弟子って、誰なんですか?」と尋ねた時の事だった。
ランスは開口一番に「タイラーだよ!」と教えてくれた事があった。
そう、ランスからマリブチップを直接伝授された人物こそが、タイラー・ハジキアンであった。
しかし、タイラーはランスとは異なり、フォームでは無くバルサに拘った。
まるで、「フォームはランス」、「俺はバルサ」と言わんばかりであった様にも思えた。
タイラーはバルサのチップを削り続け、自身でも一時、メインボードとして使う程気に入っていた様だ。
そして、それらの経験を踏まえて遂にフォームのマリブチップへと着手する事となる。

制作にはマスターでもあるジェイコブスも立ち会った程、タイラーのチップへの想いは大きかった様である。


ビングにはマット・カルヴァー二のチップがあり、ホビーにはタイラー・ウォーレンのチップがあり、意外と身近に入手出来る背景があるので探してみては如何であろうか?
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