サーフィン史に燦然と輝くロングーボード全盛期の1960年代。
’50年代後半に登場したPIGを切っ掛けに僅か10年足らずで歴史から消え失せてしまったロングボードは、この10年間で様々な事項を世に送り出して来た。
サーフボードの進化は勿論の事だが、サーファー達を魅了するテクニックの数々は時を隔てて我々の時代にタイムスリップをして来た。
ショートボードが長くなった様なボードから発せられたアクロバティックなサーフィンに嫌気が差し掛かっていた時に、一人の天才が「ロングにはこういう楽しみ方もあるんだよ」と世に投げ掛けて来た。
天才とは言うまでも無く、ジョエル・チューダーなのだが、彼によって僅か数十年前には当たり前とされていたサーフシーンに誰もが魅了された。
そして、天才によって掘り起こされたボードディティールから人々はヴィンテージの素晴らしさを再確認し、それを現代のサーフシーンに当てはめる事でモダンクラシックは誕生したのではないだろうか?
歴史を振り返れば振り返る程、確かに「答えは出ている」のだと思う。
では、そこに足し算、引き算を加えたらどうなのであろうか?
ロビン・キーガルを始めとする時代を牽引するシェイパー達は、歴史に埋もれていたロングボードの素晴らしいディティールを掘り起こし、それに独自のスパイスを降り掛け、彼らなりの答えを見出そうとしている。
ロビン同様にロングボードのディティール、一つ一つに魅了され、独自のスパイスを降り掛けボード創りに没頭するアダム・ダベンポートもその一人である。
前置きが長くなったが、本日は前回の続きとなるがアダム・ダベンポートのボードを紹介したいと思う。
と言っても、これは俺のボードでは無く、アダム・ダベンポートと親交を持ち、彼のボードを日本に齎したシースワローのオーナーである毛塚君の所有するボードである。
故に、ボードの紹介と言うよりはインプレッションの様な内容になるかと思うがお付き合い頂ければ幸いである。
本来、インプレッションは中級から上級者の方が遥かにボードを性能を引き出す事が出来る為、俺の様な初級者の出番は無いのだが、きっと、俺の様に初級者であってもクラシックを堪能したいと思う人はいると思うので、同じ目線でと言う事で僭越ながら書き綴りたいと思う。
インプレッションをさせて頂くボードは、こちらのボード、ステップデッキモデルである。


一方のノーズ側も程好く抉られており、ボードの撓りを最大限に引き出してくれる様はヴィンテージから大きくインスパイアされた表れではないだろうか?
テールは安定感のあるスクエア形状となっている為、スムーズなテイクオフが可能な訳だが、如何せん、ライドしているのが初級者の俺である為に、「ある仕様」がどうしてもスムーズなテイクオフをさせてくれない・・・


技量と言ったら身も蓋も無いので、ご容赦願いたいが、このボードにはステップデッキでありながらノーズコンケーブがしっかりと入っているのだ。

そう、以前紹介したライアン・バーチのボードの様に・・・
このボードはバーチのボード程、コンケーブは深く入っていないので、あの時の様な苦戦を強いられる事は無かったが、サーファーズの矢作さんから頂いたアドバイスを思い出し、インサイド寄りからテイクオフを仕掛けた所、スムーズなテイクオフが可能となった。
このボードは鎌倉と大洗で其々トライした訳だが、鎌倉の時は波のサイズも小振りで、パワーも無かった事から「アウトラインの造形にしては安定感があるボード」と言う程度の印象だったが、大洗の時には幸運な事に肩位のサイズに恵まれた。
パワーのある波をバックに、ボードは鎌倉の時は全く異なる様を露わにしてくれた。
ノーズへの安定感は言うまでも無いが、軽快なボードコントロールは初級者の俺を「勘違い」させる程であった。
波に恵まれたせいもあるが、これ以上、このボードと時を過ごすと素直に毛塚君に返却出来なくなると思ったので、3回目のトライをせずに返却させてもらった。
後日、毛塚君は俺のインプレッションをアダムに報告してくれたらしく、このボードを通してアダムとの距離感を身近に感じられた次第である。
ダベンポートのボードは早くも日本マーケットが注目し始めている様で、早々に湘南の某サーフショップがアダムにオファーを出したらしいが、毛塚君とアダムの太い絆によって、即答で断れたらしい。
それらのやり取りの様は、親子以上の絆で結ばれているシーコングの田中さんとロビン・キーガルと重なった程であった。

ダベンポートのボードは、これから間違いなくクラシック思考の強いロングボーダー達を魅了する事と思われるが、残念ながらハンドシェイプ&オリジナルラミネートであるが故に、入手に至っては困難極まり無いと思うので、見掛けたら迷わず入手された方が良いであろう。
今回はインプレッション形式でアダムのボードを紹介させてもらったが、いつの日か俺が所有するアダムのボードも紹介出来ればと思っています。
Keep Surfing!