サーフィンが最も輝いていた1960年代・・・
デューイ・ウェーバーでは1週間に300本のサーフボードが売れていたそうである。
同様に、グレッグ・ノールやビング、ジェイコブス等でも1週間で200本~250本近いボードが売れていた様である。
1980年代に日本で起きた空前のヘインズブームをご存知だろうか?
俺と同世代、または年上の方であればリアルタイムに体感したと思うので説明する事も無いのだが、後にも先にも日本ではあの時期が最もヘインズのパックTシャツが売れたそうである。
しかし、その実売数はカリフォルニア州の1年間のヘインズの消費量と変わらない事が後に判明し、如何にアメリカが大国であるのかを痛感させられた事でもあった。
たった1つのサーフボードメーカーが週に200本~300本のサーフボードを売るなんて狭い島国の日本では考え難い話だが、ヘインズの例に習うと頷けなくもない。
「ヴィンーテージボードに価値を見出す事は出来ない!」と俺に教えてくれたサーフィン界の重鎮の方は、正にこの事を言っていた訳で、そんなに売れているんだから「誰が削ったか判らないよね?」、だからロングボードは1990年代初期の物の方がシェイパーが識別出来る分、「価値はあるんじゃないかな?」との事だった。
また、この時代にはポップアウトなるボードも登場しており、ボードの性質等よりもネームバリューに拘る者達が挙って購入していたと言われており、販路もサーフショップではなく、街中のデパート等であった様である。
そんな訳で、本日はデイル・ベルジーがリリースしたポップアウトを紹介したいと思う。
こちらが、ベルジーのポップアウト・ボードである!

ボードの各所を紹介する前に簡単ではあるがポップアウト・ボードを説明したいと思う。
ポップアウトは一言で表すと大量生産されたボードの名称でもあって、現在のサーフボードシーンに例えるならばモールドボードと同じジャンルになる。
ただ、この時代は流石にマシンシェイプ等は存在して良かった為、ポップアウトの生産工程は至って簡単で、フォームにそのままクロスを巻いてフィンを立てるというもので、フォームに付着しているバリを削り落とす程度でシェイプ等は一切行わず、コストダウンを図ていたと言われている。
シェイプ工程が存在しない為、当然ながらレールもご覧の様な丸太状に近い物が多かった様である。
また、ポップアウトは1970年代に誕生した「陸サーファー」の先人とも言われる者達に重宝されていた事から、それなりの仕様にはなっていた様で、ストリンガーもレッドウッド使われていたりする。
勿論、ハーフムーンだってウッド製でなければ人目を引かない訳で、ポップアウトを手掛けるメーカーは見栄えにはかなり気を使っていた様である。
また、殆どサーフィンを熟知していない者達へ向けてのジャンルのボードだった事から耐久性にも非常に気を使っていた様で、重厚なボランクロスが惜しげも無く巻かれていたりする為、ポップアウトのボードは全般的に非常に重いのが特徴である。
ポップアウトの参入にはシェイプノウハウが必要で無かった為に様々な企業が参入していた様で、サーフィンとは無関係の企業も多かったのだが、やはり、名のあるメーカーのボードが人気があったのは言うまでもない。




この辺はモールドボードであってもブランドに拘る日本人と同じなのであろう。
従って、ベルジーの様なメーカーは特に人気が高く、その流通量も一際多かったと言われている。
ポップアウトの普及によって過剰なまでに飽和したロングボードは、後のショートボード・レボリューション時に粗大ごみ同様に扱われたので、この時代を愛する俺としては胸の痛む話である。

サーフボードは乗ってナンボの代物である。
実は俺もその言葉に習って、ここ最近はかなりの本数を処分している。
乗っていなかったボードにワックスを塗り、フィーリングを確認して合わなければ手放す。
恐らく、これらの事項は多くのサーファーの方が普通にしている事だと思うが、何故か俺には出来なかった。
20年近くロングボードに乗っていて言うのもなんだが、今まではきっと自分のサーフィンが定まっていなかったのだ思う。
でも、最近はようやく自分の目指すサーフィンが見えて来たような気がする。
だからこそ、真にボードと向き合える様になったのではないかと思う様になったのではないだろうか?
KEEP SURFING!