ビッグウェンズデー | Viva '60s SurfStyle!!!

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1960年代のカリフォルニアサーフスタイルに心を奪われた男の独り言。

前々回の更新でジェイコブスの事を書かせて頂いたのだが、今日はそれに纏わる映画の話を少し綴ってみたいと思う。
勿論、その映画とは「ビッグウェンズデー」である。
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「ビッグウェンズデー」というと、監督であるジョン・ミリアスの印象が非常に強い映画の様に思われるが、実はその誕生には一人の女性プロデューサーの存在無くしては語れないと言われている。


彼女の名はアレキサンドラ・ローズ。
ビッグウェンズデーは、正に彼女がサーファーに興味を抱いた事から全てが始まったと言われている。


彼女はサーファー達がどんな生活をして、何を考え、そして、何故海に出向くのかを知りたくなった。
そして、出来るならば、それをフィルムに収めてみたい・・・
こんな彼女の好奇心から、後に世界中のサーファー達の人生にまで影響を及ぼした1本の映画が完成するのである。


彼女はハリウッドでサーフィンに精通する人物探しから始めた。
そして、辿り着いた人物がジョン・ミリアスだった。
ミリアスはサーフィンが上手く、また、サーフィン業界にも精通していた為、彼女にとっては打って付けの存在であった様である。


彼女は早速、ミリアスに交渉を試みたのだが、この時代のミリアスは既にジョージ・ルーカスやフランシス・コッポラ同様にハリウッドでは売れっ子中の売れっ子であった為、自身では拘わる事が困難であると判断し、一人の男を彼女に紹介する。
その男こそ、デニス・アーバーグだった。


この時アーバーグは既に一冊の小説を世に発表しており、その主人公こそが、後のビッグウェンズデーの主人公のモデルとなるランス・カーソンであった。


ビッグウェンズデーの冒頭で、「マット、ジャック、リロイの三人は僕らのヒーローであった・・・」というフレーズあるが、この「僕ら」がアーバーグやミリアスであった事は言うまでも無い。
そして、彼らが憧れ続けたヒーローも当然ながら実在する。


では、その3人とは一体誰なのか?
これは当時のサーフシーンに目を向ければ簡単に察する事だと思うが、その3人こそが前々回の更新時に紹介した彼らなのである。
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ランス・カーソン・・・
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マイク・ドイル・・・
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そして、ミッキー・ドラなのである。
勿論、彼らが手にするボードこそが、ベアーサーフボードのモデルとなったジェイコブスのボードであり・・・
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彼らを支え続けたハップ・ジェイコブスをモデルとしたのが、ベアーである事は言うまでも無いと思う。
破天荒な3人をジェイコブス同様に、兄の様に見守るシーンは度々劇中でも紹介されている。
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マリブの伝説のサーファーであった3人を題材とする事は決まった。
そして、彼らを見守り続けた兄貴的な存在も決まった。
後はどの様に彼らにキャラクター付けをして行くかだけとなった


アレキサンドラ・ローズはアーバーグに出来る限りリアルな情報が欲しいと迫り、アーバーグもそこに必然性を感じていた様である。


アーバーグは限りなく当時の話を作品に汲み込む為にランス・カーソンに幾度となく話を聞いたらしい。
元々、アーバーグの兄がランスの親友という事もあり、憧れの存在でもあったが非常に近い存在だった事が幸いし、キャラクター創りには当時のサーファー達の姿が大いに汲み入られた様である。


主人公のマットは略ランス・カーソンの実体験を反映させてキャラクター構成がされ、ジャックはマイク・ドイルの参考にしつつも、そのキャラクターはアーバーグ本人だと言われている。
そして、リロイにはミッキー・ドラを参考にしつつも、キャラクターは当時のマリブのやんちゃなサーファー像が汲み入れらた様である。


もしかするとミッキー・ドラのこんな光景もリロイのキャラクター創りの参考になったのかも知れない。
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また、ベアーはマリブに集うサーファー達の兄貴の要素はジェイコブスから汲み入れる一方で、葉巻を加え、店を失ってしまう事などはベルジーの要素が汲み入れらてれいると言う。
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また、劇中のこのシーンも、勿論、彼らの実体験から映像化されている様で、リロイのシーンなどは実際にアーバーグ自身の行動だった様である。
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ランス・カーソンは、この事について「戦争に行くのが怖かった訳でない。ただ、何年もサーフィンが出来なくなる事が耐えられなかった。」と当時を振り返ったという。


当時の映画のチラシを見ると「これは実話である」と書かれているのだが、これらの事を辿って行くと正にその通りではないだろうか?
アレキサンドラ・ローズは、限りなく史実に近づける為に彼らが愛したマリブのビーチをも再現している。
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場所はホリスター・ランチのとあるプライベートビーチ。
そこに、マリブを彷彿させるセットが組み上げられたと言われている。
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また、この映画のテーマでもある「伝説の大波」は、ジョン・セバーソンのフィルム映画からタイトルを譲り受け、その伝説を引き継ぐ映画としても話題となった。
しかし、実際に限られた撮影期間の中でカリフォルニアに押し寄せる「伝説の大波」に遭遇する事は不可能だった為に、クライマックスのシーンはハワイのサンセットビーチで行われた。
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ジョン・ミリアスが「聖なる剣」と称したマットが抱えるバルサガンも、撮影に際し数本が用意され、中にはフォームにバルサ風にエアブラシで細工した物もあった様である。


中学生の時にテレビで何気なく観た1本のサーフィン映画・・・


まさか、この映画が1人の女性プロデューサーの「サーファーへの好奇心」から始まり、そして、マリブの偉大な3人のサーファーに憧れる少年達の憧れが詰まっているとは思いもしなかった。


公開から40年弱を迎えるビッグウェンズデーな訳だが、この様な映画は恐らく今後2度と制作される事は無いのではなかろうか?
今宵は、これらの事柄を頭に叩き込み、グラスを片手に久しぶりに観入ってみたいと思います。


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