米国の全米ベンチャーキャピタル協会(NVCA)では、四半期毎に
VC-Back(VCが投資したベンチャー企業)のExit状況について報告
している。

2010年度のレポートでは下記のような状況となっている。

M&A 420件(前年273件)
開示している平均の売却価格152Mドル

IPO 72件(前年12件)
IPO時の平均調達額97.5Mドル

M&AもIPOも対前年比で大幅に件数が増えている。2007年度程度に
回復していることが良く分かる。

M&Aの平均売却価格は、開示していない件数も多いし、それらは
決して高くない金額(おそらく20Mドル以下)で売却していると
思うので、それらと合計して平均化するとディールサイズも小さ
くなる可能性が高い。

ただ、日本と比べてもM&Aのディールサイズが大きいし、IPOでの
調達額も一桁多いことが分かると思う。

そもそも、日本でIPOした場合の資金調達額は未上場時に調達する
額とそれ程変わらないし、日本でM&Aしても米国のように高く買って
くれる新興企業も自社のマーケットバリューがそれ程高くない企業
が多いので、ダイリューションを危惧して株式交換でも買わないし、
ましてや現金でも買ってくれないのが実情。

とは言うものの、楽天やDeNAなど時価総額が1兆円や3千億円を超えて
キャッシュを豊富に持っている新興ベンチャーも増えてきているので、
それらが外国企業ばかり買わないで、日本のベンチャー企業を買って
くれるとVCのExit手段も変わってくるのだが。。。

米国のGoogle、MS、Appleなどは20Mドル以下の買収案件を実は多く
買っている。日本の大手企業や新興ベンチャーの考えが変わるまで
待つのか、それとも、そのような流れにはならず、中国企業が日本
のベンチャーを買うようになるのかもしれない。
2008年秋のリーマンショック後、日本のVC投資の投資額は減少している。

日本の新興市場マーケットのIPO社数が激減しているので、VCもExit手段が
限られるので、IPOの可能性が高い企業や途中でM&Aできるようなベンチャー
企業にしか投資できないので、投資額が減少していたのは致し方ないと現場
にいて感じる。

また、IPOマーケットが堅調だった2005年~2007年頃に投資したビンテージ
企業の多くが思ったような事業展開ができず、資金繰りが厳しくなって破綻
したり、リビングデッド企業となり、引当や売却などの処理に追われて投資
どころではないということだったのも否めない。

この1,2年日本のVCは、IPOマーケットが好調な中国や東南アジアの投資を
増やすのは当然の流れだったであろうし、今後も続く傾向だろう。
ただ、日本国内のVC投資額や投資社数は昨年を底に今年は回復するだろうと
個人的に思っている。

日本のIPOマーケットは景気循環と同様で、2012年~2013年から回復し、
IPO社数も増加するだろうから、その回復期に向けてVCは投資をして
仕込みをするのだ。

マーケットが悪い時に投資した企業は厳選され、結果的に成果の高いリタ
ーンを産むビンテージ企業が多いことも経験測から知っているのだ。






今年のアカデミー賞にノミネートされた「ソーシャルネットワーク」

FacebookのマークCEOの自伝だけど、米国流のマーケティング戦略は
凄いと感じる。

米国では昨年公開された映画だけど、その後、Facebookの利用者が5億人
を越えたというニュースの後に、年明けの日本での公開前後から日本の
メディアでも大きく取り上げられている。

最近、日本の一般人にもかなり知名度も上がったであろう。自分の
Facebookのアカウントにも昨年秋以降に「友達になりましょう」という
アクセスが多くなったし、つい先日、とある中小企業の社長さん達の集
まりに参加した時に、製造業の年配経営者がFacebookの話題をしていて
正直驚いた。

当方が数年前にシリコンバレーに住んでいた時には、現地や米国では
既に有名ベンチャー企業だったが、日本ではMixiやグリーの方が圧倒的
に有名だった。
2009年に日本でFacebookのアプリで有名なRockyouの話をしても知らない
業界人も多かった。

Facebookの知名度が向上したのは、2009年5月にシリーズDラウンドで
200MドルをVCから調達してからではないか。

それ以前の調達額はエンジェルラウンドからシリーズCまでは下記。

2004年9月  500K(エンジェルラウンド)
2005年5月  12.7M(シリーズA)
2006年4月  27.5M(シリーズB))
2007年10月  375M (シリーズC、~2008年3月まで)
2008年5月  100M(Dept)

確かにシリーズCまでの累計調達額が500M強と莫大だが、シリーズDで
200Mを調達し、今回の映画などマスマーケティングに費用も投じたのと
思う。

ユーザー数の増加と年初の1.5Bの大型資金調達、アカデミー賞の獲得?
そして来年のIPO予定!!

米国流のマーケティング戦略は凄いと思うし、日本のベンチャーが同じ
ことをするのは難しい。

ちなみに、当方、まだ映画は見ていないが、内容は概ね聞いた。
賛否両論なのは当然だが、アカデミー賞まで本当に取るのか、、、
いや取らせるのだろう。

以前、AppleのスティーブジョブスとMSのビルゲイツのストーリーを題材
にした「『バトル・オブ・シリコンバレー』(Pirates of Silicon Valley、
1999年)は世間でも話題にもならなかった。。。

来年のFacebookのIPO時の時価総額が楽しみである。