来年の課題
個人の「知」うまく評価を・・・今年のもっとも明るいニュースは、何と言っても小柴昌俊さんと田中耕一さんのノーベル賞ダブル受賞であった。小柴さんは横須賀高校卒で、神奈川にとっても将来の科学者が育つ土壌形成のために大いなる朗報である。これまで世界的に絶大なる評価を受けておられ当然の受賞だ。一方、田中さんは学者ではなくエンジニアとして初めての受賞とあって、企業における若いビジネスパースンや黙々と働く研究者を勇気づけ、大きな夢と希望を与えた。日本の会社では、いわば個人の知的能力、あるいは個人の業績に対する価値をきちんと評価する風土に乏しく、その仕組みも充実していない。これまでは若くてどんなに優秀な人物でも「飛び級」はなく、いわゆる年功序列で横並びでの評価基準でしか給与も役職も与えられなかった。逆に“出る杭は打たれ”チャレンジ精神が損なわれる傾向があった。これでは青天井で才能を伸ばす世界を相手の競争には勝てっこあるまい。大リーガーでも大魔神といわれる佐々木主浩投手、サッカーの中田英寿選手、音楽界では小沢征爾氏などスポーツや芸術界には“個の価値”そのものが評価され世界で第一級の活躍している日本人も多くなった。田中さんの快挙を機に研究者の処遇が国内産業界の課題となり、個人の人事報償制度を見直す企業も増えてきた。各産業界には埋もれた“田中さん”がもっといるはずで、かれらの知が最高に活かされる土壌つくりが必要だ。これからは、企業規模の大小、老若、立場の上下にかかわらず、個人の「知」への絶対評価が重視されなければならない。私は若きベンチャー企業家を支援している。その成否は、彼らがコア・テクノロジー(中核技術)として、いかに優れた「独創的な知」あるいは「革新的な知」をもっているかである。まさに個人の知の価値が企業の業績を大きく左右する。2003年を“個知の年”としよう。「個」(一人一人)が、「知」(ナレッジ)の高揚に努め、第二、第三の小柴さん・田中さんが輩出することを期待したい。