ひと月ほど前に、「新大久保の推し」と題するものをここに書いたが、このところ連日のように、警察の歌舞伎町のホストクラブへの立ち入り調査や、「街娼」の摘発=逮捕などの報道がなされている。また、「ホスト」の若者も喰い物にされている実態も明らかにされている。
どういうことか。スカウトが街で声をかけた女の子をホストクラブで遊ばせ、売掛金が嵩むと風俗の仕事を紹介する。そこでも当然搾取されるから、女の子たちは効率の良い街に立って「仕事」をすることになる。これはパパ活というものの延長線でもあるのか。
都心のある場所に集まる女の子たちは、家や学校で「居場所」を見つけられない女の子たち。ただ言うことを聞けと言ってくる世の中の中で本来の自分というものを失ってしまった人たち。自分たちと同類の人間の存在を知って自分を慰めようと願う人たち。
しかし世の中は「弱肉強食」、甘くないどころか情け容赦ない。
自己の利益を生み出すためには、それを他者から巻き上げなければならない。
他者が望んでそれを買うとき、それは成立する。
これは、商品販売から、レジャー施設、振り込め詐欺に至るまで、すべての商行為の背後に共通する事実でもある。
性行為はお金になる。しかも良い値段で。でも、それをするのもさせるのも違法である。
だいいちそこで売れて働く若い女性をどうやったら集められるのか。
性風俗で働く人は、お金に窮乏した人たちである。借金を重ねている人も多いことだろう。
すると、お金に窮乏した女性を作る必要がある。
自分の居場所を見出せない女の子たちは、自己の存在を承認されるために、好きな人を作りたい。
その人に会うためならお金なんて関係ない。
お金よりも大きい「幸せ」があると思ってしまう。
そして単純に高額が得られる売春に手を出してしまう。
その最初の瞬間に「涙」は出ないのであろうか。
その売春は、一見見かけ上、背後で誰かが組織的に行うものではないから、SNSで個人的に知り合った男の人と密室で過ごし、そこで秘密で「お小遣い」をもらったとしても罪になりにくい。ホストに会うための洋服代や生活費も稼げる。SNSで売春のマニュアルを販売していた「頂き女子りりこちゃん」は数千万円の詐欺容疑で逮捕されている。
しかし、「背後」はいた。
やはりこれはヤクザ屋さんの上等手口であったらしい。
しかも巧妙に考えられた組織売春システムである。
スカウトがホストを紹介する。ホストが貢がせて借金を作らせる。すると風俗を紹介される。さらには街娼にされる。
ひどい。あまりに酷い!
昔のヤクザは、「金遣いの荒い女を、おフロにハメて、金のなる木に育てる」と言っていた。
潜在的自傷願望のある本当の弱者を、平然と喰いものにする。
なぜか。それは自らも同様であったから。
大人社会なんて頼りにならない。
するべきことは自分たちのできる金稼ぎだ。
それには自分たちよりさらに「下」の者たちからお金を巻き上げるしかない。
ジジババは金を持っているが、少女たちには金になるカラダがある。
それは本来子を産む母になるためのものであったのかもしれないが、オレたちにはそんなことはカンケーない。
行き場のなくなった少女たちを狙って利益追求する。これは振り込め詐欺と同様の弱者狙いの凶悪犯罪である。
警視庁暴力団対策課は、10月末、歌舞伎町の国内最大規模のスカウトグループ「ナチュラル」のメンバー14人を逮捕したが、組織のメンバーは1500人規模であるという。このグループは元住吉系の「四次団体」とのことであるが、2020年に「歌舞伎町リンチ事件」を起こすと暴力団員とも対立抗争するようになった。しかし、今回グループリーダーたちが逮捕された。
そもそもスカウトたちは、男性客を風俗店に呼び込むことを仕事にしていたことだろう。世に言う「ぼったくり」の手伝いもしてきたことだろう。同時にそれは、お金の欲しい女性に風俗の仕事を斡旋したり、AVへの出演を紹介したりもしていたことだろう。
それを本来はお金を持っている女性客を対象にしているホストクラブが狙い撃ちした。
でも彼らがその「スカウト」になったのはなぜだろうか。それは遊びたいのに金が足りないから。もしくは生活に困窮したから。
そしてここに、この伝統的で新しい「仕組み」を考えた者たちがいる。
逮捕された「ナチュラル」のリーダーは元消防士。関係ないが山口組弘道会会長の「司忍」氏は大分水産高校の出身である。
弱者が強者になった時、その対象が弱者になるのはなんとも言えず悲しいことである。