セミノール( by Joker ) | JOKER.松永暢史のブログ

JOKER.松永暢史のブログ

教育相談、執筆・講演依頼は松永暢史公式サイトよりお願いします。

グラスに氷。セミノール二個を上下二つに切って種を取り、スクイーザーでギュッと絞ってスプーンでよく混ぜてから一気に飲む。
この瞬間、天然クエン酸が脳髄まで染み渡って、同時に全身に極めて強い快感が広がる。
これはほとんど「合法ドラッグ」である。
「オレンジアスペルガー」—この一年も、街に出ているあらゆるオレンジを試してきた。しかしついにこれに勝るものはまたしても現れなかった。
待ちに待った三重県御浜(ミハマー「オバマ」じゃなくて良かったね)町産完全有機無農薬セミノール。農薬の代りににんにく唐辛子入り竹酢液、肥料は米ぬかを主原料とした有機肥料、除草剤も使わない。これで美味しくないわけがない。外で売っている全てのオレンジがスカに思える。これを一度飲んだらこれ以外のオレンジジュースを飲む気にはならない。すでに100キロ買ってみんなで楽しんでいるが、早めにもう一度注文したいと思っている。
こんなにも私を幸福にしてくれるセミノールを調べて見ると面白いことが分る。
マンダリンオレンジはインドアッサム原産だと言われているが、東は中国日本、西はヨーロッパにまで伝わった。このうちやや色が赤いものがモロッコのタンジールからアメリカ大陸に渡った。これをタンゼリンというが、もとはマンダリンである。
さて、1910年代、合衆国フロリダはオーランドの農業試験場でダンカングレープフルーツとタンゼリンが交配されてセミノールが生まれた。グレープフルーツの果汁の多さとマンダリンの甘みがブレンドされた、私に言わせればジュースに最適のオレンジが生まれた。これが1955年に三重県に輸入されたのが日本のセミノール栽培の初めだという。
可笑しいのは、Wikipediaでは、セミノールという名の由来は「セミノール湖」によるとあるが(実際Googleで調べると、オーランド北部にその名の小さな湖を見つけることができる)、しかし、Wikipediaに「セミノール」という別項目があって、これによるとセミノールは18世紀頃からジョージア、フロリダで勢力を誇ったインディアンの種族で、フロリダ半島先端部で最後までアメリカ軍に抵抗して、ついにアメリカ人に征服されることのなかった極めて珍しいアメリカ原住民たちなのである。彼らは現在、フロリダ最南端のエヴァーグレーズ国立公園に隣接して33エーカーの自治地区を確保し、何とこの地にカジノなどの観光産業を立ち上げて、ハードロックカフェチェーンも買収して生き残っているという驚くべき先住民たちなのである。実は、最後まで抵抗したもの以外は、1842年に強制的にミシシッピー川以西のオクラホマに移住させられている。
それにしても、そんなことを思うのはこうして毎朝セミノールを楽しんでいる筆者だけなのかもしれないが、このことはなかなか面白いことではないか。大西洋を渡ったインド発マンダリンが、西インド諸島原産のグレープフルーツと結ばれて素晴らしい品種が生まれ、それに2万年前にベーリング海を渡ってアメリカ大陸に移住してフロリダ南端で戦い続けて生き残ったインディアンの部族の名前が付けられるというのは。そしてそれが日本で作られて今自分が飲んでいるというのが。地球一週—一体何に感謝して良いのか分からなくなってしまう。