ファミリー・シークレット / 柳 美里 | 音楽見聞録

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ファミリー・シークレット/柳 美里
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 まがりなりにも音楽ブログなのに書籍が続いてしまいます。申し訳なし。たまたま目に止まる本が多いもんで・・・普段はそれほど読まないはずのノンフィクションものが2冊続きます。


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柳美里が小説に閉じ込めてきた「過去」と向き合った感動ノンフィクション
「柳美里に虐待疑惑」――臨床心理士・長谷川博一氏とのカウンセリングを受けながら、みずからの過去の闇を照らす作業に入る。2008年、柳美里宅に児童相談所の福祉司たちが訪れた。ベストセラー『命』でもその誕生を描かれた柳美里の長男は、いま10歳になる。児童虐待を疑われた柳美里。そして、彼女も実の親から虐待を受けていた。
果たして、これは「再演」なのか。虐待の連鎖を止めることはできないのか。

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 柳 美里の「ファミリー・シークレット」です。


 児童虐待の事件が報道される度それに対してきれい事を語る人たちはいまだに多い。「なぜ子供にそんな酷い事ができるのか?」「人間じゃない」「そんなヤツには子育てする資格が無い」・・・両親を中心とするであろういわゆる「加害者」はいつもそんな言葉でホント簡単に括られてしまう。この認識って素朴な思いこみ以外の何ものでもないのに。


 実際のところを知っているか?と自問すべき。そこに至るまでにどういう積み重ねがあったのか想像を巡らす事は無駄な事なのか?

 極端に言うならば全ての人は紙一重の位置にいると思う。どこかで一つ積み違えてしまえば誰もが加害者になるかもしれない鋭利な現実。そうでありながら誰もが明確な認識を持つことなく、何となくアンタッチャブルな位置に追いやられている感のあるこの問題。


 この問題については事件が起こる度に表面的な報道だけではなく、もっと実情や裏側について語られるべきである。その話は重く、普通だったら耳を貸したくない類のものになる。が、そうして何かを共有していかない限り連鎖は終わらないような気がする。ふたをするのではなくオープンにして。


 救いがあるとすれば、第三者が積極的にかかわる事で異なる視点を獲得する事ができ、対象と距離を置くことでより客観的な判断ができるようになる可能性が大きいと言うこと。そうなれば自身の行動にも異なった方向性が生まれるのではないか?


 自分自身を考えても「躾け」と「虐待」との線引きが曖昧になる時がある。そこに愛情があれば良い、なんてどこかで聞いたような理由付けでは何も解決しない。


 う~ん。とにかく非常に重たい内容の本なので万人には決してお薦めできません。 

 また、心に余裕のある時に読まないとこちらまで引き摺られそうになる。それだけ熱い物が内包された本であることは間違いない。


 これを書いている時の作者は正に身を削っていたのだと思う。そしてそれは何と勇気ある行動だろうか。これを世に出す行為は必ずや誰かの役に立っている。ノンフィクションとはそういうものだろう。