On An Island / David Gilmour | 音楽見聞録

音楽見聞録

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David Gilmour
On an Island

 ピンクフロイドのギタリスト、デイヴィッド・ギルモアの22年振り(!)となるソロ・アルバム。

 

 ギルモアズ・フロイド時代の今のところの最新スタジオ・アルバムの「対」からも一体何年経ってしまったんだろう。いや~長かった。ギルモアの音を待っていた人は私を含めかなり多かったはず。2005年の「LIVE 8」にロジャーを含んだピンク・フロイドとして出演し、「フロイド再結成か?」と世の中を騒がせた事は記憶に新しい。だが、このアルバムを聴くとギルモアはフロイドとしてのフォーマットでの活動に少なくとも今のところは興味が無くなっている事を感じる。

 

 アルバムの内容は非常に高いトータル性を感じさせるものになっている。これまでの人生を総括するかのようなかなりパーソナルで自省的な内容になっており「老成」という言葉が似合いそうな雰囲気。音の方もゆったり目の3拍子の曲が印象に残る。多くの曲にストリングスがフィーチャーされ、とても優しげな音楽に仕上がっている。

 ただ、ここでも相変わらずギルモアのギターは健在である。アルバム「ファイナル・カット」の頃に聞かせていた密度の濃い、感情を集約した魂を切り裂くような音色をこの作品でもたっぷりと堪能する事ができ、リスナーを惹きつけてやまない。ギターの音色や一音一音にこめられた思いは本当に素晴らしい。これを体験できるだけでも聴く価値がある。ここには速弾きもトリッキーなプレイも一切ないけれど、ギルモアでなければ表現できない唯一無二の音色がある。感情を揺さぶるよね。


 アルバム製作のスタンスは「ファイナル・カット」を作成した時のロジャー・ウォーターズを髣髴させる。ファイナル・カットがそうであったように、ギルモアというミュージシャン個人の思いが色濃く反映されている。

 そもそもフロイドのインテレクチャルな部分というのはロジャーに集約されがちで、ギルモアはミュージシャンとしては有能だけれどコンセプト構築の面では弱いという印象を与えられてきた。ギルモアズ・フロイドがまるで金儲けのように言われてしまったのもそのせい。けれど、このアルバムは見事な主題を持ち、またトータル性をも感じさせてくれる。ロジャーのどこか自分から距離を置くような大袈裟なコンセプトとは異なり、自分自身が「生きている」事への素直で自然な感覚に溢れている。ギルモアはオリジナルのフロイドとギルモアズ・フロイドを担い体験して来た事でミュージシャンとして更に一皮むけた印象がある。

 詩的世界でも決してロジャーに劣らない事を証明した。


 参加ミュージシャンは、フロイド関係ではリック・ライトのみ。プログレ畑からはロバート・ワイアットとフィル・マンザネラが参加しているが二人とも自分のメイン楽器を演奏している訳ではないのでそれほど強烈な印象は残らない。意外な所では一曲のみだけどコーラスでディヴィッド・クロスビーとグラハム・ナッシュが参加していること。(決してCS&Nにはなっていませんが・・・)


 ボーナス・トラックも無し。必要最低限の必然性のある10曲で構成された50分程度の作品。

 長く聴いて行く事ができそうなとても良い作品である。