You / Gong (Gongスペシャル!!) | 音楽見聞録

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Gong
You (Radio Gnome Invisible, Pt. 3)

 フレンチ・プログレの有名所、ゴングのRadio Gnome Invisible3部作の3枚目。この物語はアルバム[Flying Teapot」(1973)から始まり「Angels Egg」(1973)、「You」(1974)と続く3部作。


 ゴングのメンバーは2枚目、3枚目を録音したラインナップが史上最強ゴングと言われる。
 ドラムスにピエール・モーラン(M・オールドフィールド等との活動でも有名)が入った時期のバンドはリズムの力強さや多彩さでは明らかに演奏能力が向上している。演奏も凄まじくテンションが高い。しかし、それ故テクニック至上主義(それはD・アレン脱退以降のゴングを見れば明らか)に走るきらいが多少あり、当初ゴングにあったはずの「いい加減さ」が薄れている事はいなめない。


 音楽の印象は実にカラフル&スペイシー&ファンタジックである。(なんか良くわかりませんな・・・つまりそういう事)音の万華鏡を覗くような気分が味わえる。
 それにしても彼らの音も他に類を見ない。サイケではないしなあ。敢えて言えば「ヒッピー」サウンドだろうか。ゴングの首謀者D・アレンその人の人格がそのまま音になったような「いい加減さ」が味わえる。
 見えない電波の精が惑星ゴングから空飛ぶティーポットで飛んできて最終的に人類を解脱へと導くという脈絡も何もないいい加減なストーリー。でも魅力的。
 ピエール・モーランとベースのマイク・ハウレットのリズム体の充実ぶりがすごい。ジリのウィスパー・ヴォイスも相変わらずとんでるし、スティーヴ・ヒレッジのギターもまさに「アウト」だし、ティム・ブレイクのスペイシーとしか形容しようのないシンセも個性的で素晴らしい。おっと、ディディエ・マレーブもね・・・


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と言うわけで今回はGongスペシャルという事で長編をお届けします・・・・

 今回は特に私の好きなGONGのドラマー Pierre Moerlen について語ります・・・

 ピエール・モーラン(ピエール・モエルランと表記される場合もあり)を語る場合「Gong」抜きでは話がはじまらない。従って一部Gongの話になってしまいます。ご容赦を・・・

 ピエール・モーランがGongへ参加したのはいわゆる「ラジオ・ノーム」3部作の2枚目のアルバムとなる「Angels Egg」(1973)からです。Gong参加以前のキャリアはあまり詳しく知りませんが、少なくとも名前の通ったバンドへの参加経験は無いと思われます。

 この時期のGongは放浪のサイケ詩人ディヴィッド・アレン、孤高の「ウィスパー・ヴォイス」を完成させたジリ・スマイスの2人の中心人物を核にして、ギターにスティーヴ・ヒレッジ、キーボードにティム・ブレイク、ベースにマイク・ハウレット、サックスにディディエ・マレーブという正に黄金期の布陣。特にリズム隊の充実ぶりは前作の比ではない。
 この充実ぶりに大きく貢献しているのがモーランのドラミングです。当時の世界の水準から考えてもかなり高度なテクニックを駆使して演奏していると思う。アレンがバンド・サウンド全体に対する主導権を握っている以上、このアルバムで展開されるのはやはりアレン独特の世界であり、曲もAメロ、サビ等の「普通の」構成を無視した展開に変拍子を多用したのものや、同じフレーズを延々と繰り返す手法等独特なものがほとんど。(但し、モーランはこの時代にアレンから作曲方法の一部を学んだのかもしれません。)

 そしてこの豪華布陣のまま発表される3部作3枚目の「You」(1974)でこのメンバーのヴォルテージは最高潮に達する。
 モーランの叩き出す的確な変拍子ビート(確固たる「ビート」と呼べる程の力強さを感じる)の上でラリりまくるブレイクやヒレッジのインタープレイは凄まじいし唯一無二の演奏形態と言える。特に集中を見せる時のどこかへ飛んでいくようなヒレッジのギター・プレイは素晴らしい。決して勢いだけでは演奏する事が不可能な超難曲が並ぶが、リスナーの耳には過剰な集団ヒステリーを起こしたかのような彼らの演奏が実に自然と注ぎ込まれてきて快感。
 
 アレンの要求を十二分に満たしていたと思われるメンバーだが、中心人物のアレンとスマイスはこの「You」を最後になんと!Gongを脱退してしまう。テクニカルな方向に流れすぎたバンドを嫌ったというのが一般的な解釈であるが、私個人の耳からすればこの演奏陣あってこそアレン独特のサイケ・ヒッピーな世界を表現できたのではないのか?という気持ちが強い。「You」の「The Isle of Everywhere」という曲などはこのリズム隊抜きには成立し難い熱い演奏である。アレンよ!本当は早まったんじゃないのか?・・・

 このようなモーランのテクニカルで細やかな演奏を聞いていく内に彼は非常にインテレクチャルなドラマーなのではないか?という認識が自然と自分の中に出来てしまった。(後年、実はそれだけではない事を知ることになる)又、この時期からプログレというより幾分ジャズ・ロック的な方向にバンドが流れていったという事もあながちウソではない。この時代の「演奏」部分の聞き応えの充実さがそれを物語る。

 アレンとスマイスそれにヒレッジ、ブレイクまで抜けてしまったGongはここでマリンバ奏者のミレーユ・ボアを加え「Shamal」(1975)を作る。中心人物を失った割にはかなり早い時期にバンドの建て直しに成功している。この事は何を意味するのだろうか?コンセプト以外の部分ではバンドに対するアレンの影響力・発言力が既に弱まっていたということの証だろうか?確かに「You」の頃の各人のプレイはアレンにコントロールされたというような印象をあまり感じない。各人のパートは各人に任されていた部分が多いような気がする。


 なお、このアルバム「Shamal」はなぜかピンク・フロイドのニック・メイスンがプロデュースを行っている。

 音楽的には「アレンGong」臭さをどこかに残しつつ新たな方向性を模索している印象がある。「リズム」が確かにこれまでのGongのどのアルバムよりも前面に出てきている。
 但し、サックスのマレーブも数曲を提供する等存在感をアピールしており、この後訪れる「モーランを中心としたGong」には至っていない。わずかながらまだ「歌もの」も存在する余地があった。


 サイケな「アレンGong」とジャズ・ロック的要素の強くなるこの後の「モーランGong」との中間的位置にあるこのアルバムを好む人は結構多いらしい。私は嫌いではないが、ちょっとマレーブが吹きすぎじゃないのかな~?という印象を持っている。ん~どうもマレーブに対する私の評価は低い。(マレーブの吹きすぎにより打楽器が今ひとつひきたたず活きてこない。)

 このアルバムで何よりも印象的なのは、ベースのハウレットの上達ぶりである。時にVOを披露しつつ実にタイトな低音でリズム隊を支えている。

 このアルバムを製作する途中でモーランに次なるGongのバンドとしての構造がぼんやりと見えてきたのかもしれない。
 それはマリンバ担当のミレーユ・ボアのバンドへの正式参加に大きなヒントを得ているような気がする。キーボード等のコード担当楽器を入れなくても音階の部分をリズムと同時にカバーできるマリンバやヴィブラフォンという打楽器奏者がバンドに加わった事の意味は大きい。事実かなりのキーポイントとなる部分でボアの見事なプレイがフィーチャーされている。(前述のとおりマレーブの音に隠されがちではあるが・・・)
 結局、マレーブを加えたこの布陣は長続きせず、このアルバム1枚で解消してしまう。

 そして翌年に発表されたのが「GAZEUSE!」(1976)である。ここに至りコア・メンバーはモーランと前作から加入したミレーユ・ボア、そしてヴィブラフォン担当のベノワ・モーランの3人となる。ベーシスト探しには苦労したようでベースの入らない曲もある。このアルバムでの主役は打楽器系の楽器である。モーランの更にテクニカルさを増したドラムをどっしりと中心に据え、ゲストで参加したマレーブが数曲で管楽器を披露する以外は素晴らしいマリンバやヴィブラフォンが強力にドラムと楽曲をサポートしている。
 
 そしてもう一人このアルバムで強烈な印象を残すのがギターで参加したアラン・ホールズワースである。今やフランス人中心となったこのバンドになぜこの時期ホールズワースが参加したのか経緯は不明である。USAほどジャズ・プレイヤーとロック・プレイヤーの境界がはっきりしていなかったUKのプレイヤー故か、ホールズワースはこの後も「ソフト・マシーン」や「UK」(個人的にはあまり「UK」はプログレバンドだとは思っていないが・・)と言ったプログレバンドでも活躍する。
 確かホールズワースはこの直前まで、トニー・ウィリアムスのライフ・タイムで活動していたはず。


 収録曲中「PERCOLATIONS:PART 1」の後半で聞かせるモーランのドラム・ソロは圧巻である。ドラム・ソロはあまたあれど、数少ない、聞くものを飽きさせない展開を持っている「必然性」のあるソロだと思う。小気味良いスネアの音にシンバルやフロア・タムまでを駆使して熱い演奏が展開される。

 そしてこのアルバムに至り、いよいよ曲提供もモーランのものが多くなりバンドの主導権を完全に掌握したと言える。又、このアルバムから全ての曲がインストとなる。恐らくホールズワースを加えたのもモーランの実験的精神の現れではないだろうか?このアルバムには後年ホールズワースが自身のアルバムでも録音した「Shadows of」も収録されている。ここでゲスト参加しているマレーブのサックスはなかなか効果的である。これはモーランがマレーブをうまく使いこなしているためだと思う。

 やがてしばらくの冷却期間。その後我々の前に登場したGongは正にモーランそのもののGongであった。メンバーはドラムのモーラン、マリンバのミレーユ・ボア、ヴィブラフォンのベノワ・モーラン、ベースのハンスフォード・ロウの4人。なんとリズムセクション+打系楽器の2名のみという最早「リズムの固まり」以外の何物でもないバンドとしてアルバム「EXPRESSO Ⅱ」(1978)を発表する。このアルバムからメンバーとなったハンスフォード・ロウという若手ベーシストの加入により演奏は更に充実する。この人かなりうまい。別のプロジェクトでも音源があるようなのでいつかは聞いてみたいと思うベーシストである。
 ゲストのミック・テイラー、A・ホールズワース、ダリル・ウェイ(exウルフ)も調味料的に使用され完全にバンドはモーランの掌中にあるという印象がある。スティックさばきはあいかわらず素晴らしい。ジャズ・ロック的でありながらもどこかに必ずロック・フィールを感じさせる。

 このアルバム以降はピエール・モーランズ・ゴングとして正に自身の名を冠したバンドとして活動して行く事になる。以降もコンスタントにアルバムを発表している。これから先も何か面白い事をやってくれないかな~と密かに期待しているドラマーである。

 さて、前言の「ただのインテレクチャル」なドラマーではないと思い知ったのは、実はマイク・オールドフィールドのライブを収録したビデオ「The Essential」でのプレイを見たことにある。このビデオは1980年にネブワースで行われたオールドフィールドの野外コンサートを記録したもので、実は当時のGongのメンバーもバック・ミュージシャンとして多く参加している。ドラマーとしてピエール・モーラン、ベースにハンスフォード・ロウ、そして紫のコスチュームで超絶なまでのヴィブラフォンを披露しているベノワ・モーランの3人。
思わぬ所でGongメンバーの演奏シーンが楽しめてしまった。
 圧巻は終曲「オマドーン」での後半のドラム・ソロ部分である。意外と簡単なドラム・セットでそれまで割と大人しめに叩いていたモーランが豹変する。
 エスニックなパーカッションに導かれるようにドラム・ソロが始まる。それは小技を駆使したテクニカルなものではなく(そうは言っても相当難しいと思うが・・・) アフリカン・リズムを基調にした非常~に熱い演奏であった。フロア・タムを多用した独特の「ノリ」。オールドフィールドの原曲でも本物のアフリカン・パーカッションが大きくフィーチャーされている部分だが、それとは異なるアプローチで演奏されている。陶然とドラムを叩くモーラン。顔の表情はもう完全に「いって」しまっている。「テクニック」を越えた上にある何かを感じさせる、これ程までに熱くなるドラマーだったのか~!と驚かされた瞬間であった。

 モーランの母国「フランス」と「アフリカ」の関係にも注目が行く。何故フランス人のモーランのドラミングにアフリカン・テイストが垣間見られるのか?これを考えた時、フランスとアフリカの関係を考えざるをえない。まず、地図を見ればわかるように地中海を挟んでいるとはいえ、アフリカは「お隣」の大陸なのである。それに植民地時代の関係(確かフランスの植民地が多かったと記憶している)を考えても切り離せない関連がある。他のフランス人ミュージシャンにもこのような影響があるのかは良く分からないが、モーランからはそれを強烈に感じた。体を「流れる血」の中にインプットされたそれ。

 蛇足:同じくマイク・オールドフィールドの大ヒット曲「ムーンライト・シャドウ」のプロモーション・フィルムでピエール・モーランがドラマー役で登場しているが、原曲で叩いているのは実はサイモン・フィリップスである。何故に彼がプロモだけに登場したかは定かではない。


Gong
Shamal
Gong
Gazeuse