作家、半村良。SF好き、ジュブナイルもの好きでは知らない者はいないであろう作家。平成14年に鬼籍に入られてしまったが、この人の作品には青春時代に本当に楽しませていただいた。
有名どころでは角川、或いはリメイクでも映画化された「戦国自衛隊」だろうが、それはほんの片鱗でしかない。
受賞記録を見ても「雨やどり」で第72回直木賞を受賞、これで押しも押されぬ大衆作家の仲間入りを果たした。また、栄えある第1回泉鏡花文学賞を「産霊山秘録」で受賞。これまたいわゆる伝奇ものと呼ばれるシリーズであるが非常に面白い。○○伝説シリーズを筆頭に中高生のファンも多いのでは?
今回紹介する「晴れた空」は恥ずかしながら氏が亡くなってからその存在を知り、一気に読んだ作品。
これまでの作品とは少々趣を異にする自伝的要素も含んだ作品と思われる。話の舞台は第二次大戦末期から高度経済成長をとげるまでの日本。
終戦後、上野に集まった戦災孤児たち八人を話の中心に据え、それこそ奇跡のような物語が続く。
彼らをとりまく大人として、小さな女の子連れの美しい未亡人、特攻隊として散る事のできなっかった悔恨の中だけに生きる影のある、それでいてまっすぐな男、戦中、戦後を通じ裏の世界を渡り歩き、権力をふりかざす闇の男などひとくせもふたくせもある連中が入り乱れ、話が進んでいく。
戦後の人心の荒廃、占領軍、麻薬中毒、ちゃりんこ(スリ)、やくざなど汚いものも綺麗なものも含めてこの時代の全てを紙面に描き出そうとする作者の執念のようなものを感じた。
筋立ては当初少々うまく行きすぎのきらいもあるが、そこはさすがに半村良、一筋縄では話を終わらせない。八人の子供たちが成長して行く過程で、戦争を起こした存在である大人たちはそれぞれ自分自身の決着をつけていく。決着をつけて行く大人たち、これがまた切ない。私はこの切なさこそが半村良の真骨頂だと思っている。古い者から新しい者への橋渡し、受け継がれる信念や情熱と言った普遍的なテーマが非常に巧妙に語られて行く。
話全体を通じて戦中、戦後の日本人や社会の変わりよう、復興して行く国の様子などが見事に伝わってくる。下手な歴史書を読むよりよほど勉強になるのでは?と思う。読んで損なし!