- ミシェル・ペトルチアーニ, アンソニー・ジャクソン, スティーヴ・ガッド
- ライヴ・アット・ブルーノート東京
このピアニスト、ミッシェル・ペトルチアーニに残念ながら神は二物を与えてくれなかった。
ベースのアンソニー・ジャクソン、ドラムスのスティーヴ・ガッドの3人によるピアノ・トリオのブルーノート東京でのライブを収めたアルバム。
ペトルチアーニは生まれつき大理石病という骨疾患を患っており、残念ながら99年1月に36才で逝去した。この時が最後の来日公演になった。
音だけ聴いていると軽やかでリリカルでありながら同時に力強いそのピアノ・ワークからは先天的にハンディを負っているという「暗さ」は微塵も感じられない。「悲劇的な目で人生を眺めていた若い頃」からこの時の境地に至る彼の精神的な葛藤とは一体どんなものだったのだろう?あまりの壮絶さに想像も出来ない。
「今この瞬間を幸せを持って生き尽くす」という彼の肉体面のハンディをも凌駕する精神的な強さの根元はどこにあったのだろうか?音楽する事の意味が存在する事そのものであるかのような一体感。世に生きる様々な人にとっての悩める永遠の課題であるメンタルな部分での「克服」について、本人の思いをどこかで聞いてみたかったな。
ガッドのいつにない繊細なドラム、ジャクソンの非常に丁寧で上品なベース。バックも盛り上げる。
ペトルチアーニがスイング・ジャズが下手だと言われるガッドを評した「彼はヘヴィーにスイングするドラマーなんだ」という言葉にはなるほどと思わされる。
音を紡ぎ出すその瞬間、瞬間を確実に自身の生の確認へと変換していく「アドリブ演奏」の意味を彼ほど深く意識していたプレイヤーはいないのではないか。但し、その音からは戦う姿勢などではなくとてつもなく肯定的な優しさを感じる。