さんだる / たま | 音楽見聞録

音楽見聞録

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たま
さんだる

 まず、事前にはっきり言っておきたい。彼らは天才である。

 このメジャー1stに始まり、「ひるね」、「きゃべつ」、「犬の約束」、「ろけっと」まで続く諸作はどれも完成度においてはひけを取らない出来である。


 なにしろメジャー・デビュー以前に出していたレコードの完成度が異常に高く、既に「たま」という個性の水準に達してしまっていた。もちろん録音技術の差による音質の問題は別だが。
 メジャー・デビュー以前にここまであるべき姿を見据えて活動していたバンドは滅多にないだろう。曲にしても「ろけっと」へ収録された曲の中にさえデビュー以前のものが含まれている。しかも遜色なく同等の完成度を誇っている。中にはデビュー以前の録音の方が良いと思えるものさえある始末。
 アルバム「さんだる」発表以前にレコード会社側の要求で出さざるを得なかったと思われるシングルCD盤の「さよなら人類」はバンドにとってはとても屈辱だったはず。全くマッチしない妙なバックオーケストラと子供のコーラスが加えられ、唱歌と化したそれはホント醜かった。分かってない人間がいじるとダメになる見本だ。


 色物として紅白歌合戦にまで引っ張り出されて。翌年の暮れ、彼らはライブでその事を皮肉を込めてアドリブ・パートで歌っていた。それも歌合戦で披露した曲と同じ「さよなら人類」の中で、「二度と渋谷のあたりにゃ行きたくないよ!」という言葉で。


 彼らの作る曲は実に単純なコードから成り立っている。その上で歌の旋律に対して各楽器がどういうアプローチを行うかがメンバーの腕の見せ所である。それを彼ら自身も楽しんでいたようで、「うわ~ここにこういうオブリガードで来たか!ならこっちはこうだ!」的なアイディアのせめぎ合いがあったらしい。
 彼らのライブは3回ほど見る機会があったが、その音は実に「バンド」であった。見事なまでに音が一つの固まりとなって出てくる。3万円のアコギを使っていたり、桶やビスケットの缶を叩いているとはとても思えない。方向性やスタイルに対する自信に裏打ちされた演奏。「ろけっと」以後、柳原幼一郎が抜けてしまった事が非常に悔やまれる。彼の楽曲のセンスは抜群だったから。

 3人で活動を続けていたが、このユニットでの音楽はやりつくした、という事で解散した。


たま
ひるね
たま
きゃべつ
たま, 滝本晃司
ろけっと